幕間

 グジオン討伐から一か月後、僕は空母で新兵器のテストを行っていた。

『では今から特殊戦闘機用電磁砲の実射テストを始めます。パイロット、準備はいいですか?』

「準備完了です。みなさん。下がっててください。撃ちます!」

 七瀬さんや開発部の皆さんが自機から安全な距離まで離れたことを確認し、操縦桿の引き金を引く。すると機体の右肩に乗っていた巨大な砲身から轟音とともにマッハ20という速さで鉄の塊が発射された。と同時に砲身そのものが大きく後退した。

「おおっと!」

 思わず片足を半歩後ろに引いて倒れないように調整した。

『うーん、やっぱり反動の制御は難しいかぁ。じゃあ次は手に持って撃ってみて』

「了解」

 操縦席のボタンを押す。すると肩に付いていた砲身が背中に移り、垂直に立った。そしてくるりと180度回転し、脇の下から出てきた。ガシャという音を立てて砲身からグリップが飛び出してくる。そのグリップを持ち、背中の固定装置と切り離した。外から見ると巨大なトンファーを持っているように見えるだろう。

「撃ちます!」

 周りに人がいないことを確認して、再び引き金を引いた。また鉄塊が海に向かって発射される。しかし今回は前よりも反動がきつい。少しだけ前傾姿勢にしたにもかかわらず大きく後ろに引っ張られる。僕は急いで片足を二歩分後ろに下げた。

『ありがとうございます。では砲身のチェックに入ります。パイロットの方は電磁砲を置いてください』

「了解」

 そっと試作機を床に下ろした。

 整備班や開発部の面々が集まり、砲身の中やバッテリー、弾薬などを確認している。

『確認作業終わりました。実射テスト、続けてください』

 再び試作機を持つ。

『今度は飛びながら、撃ってください』

「了解」

 了解とは言ったものの、結構しんどいな。あの反動を空中で制御するのか。やるしかないか。

 スラスターをふかし空中に浮かぶ。

 空母から離れて構えた。

「行きまーす」

 引き金を引いた。直後、大きく後ろに引っ張られて体勢を崩し、落下しかける。

「ああぁッ! クソッ!」

 海面すれすれで何とかスラスターを海面に対して垂直に向けて落下を防ぎつつ、細かく調整して体制を立て直す。

『大丈夫ですか!?』

「なんとか大丈夫です」

 危なかった……。手と背中から変な汗が出てくる。

『次は固定砲台モードでお願いします』

「わかりました」

 また操縦席のボタンをいくつか押し、背中の固定装置に砲台を乗せる。すると持ち手が収納され、砲身が肩に乗る形に戻った。

「撃ちます!」

 引き金を引く。前よりかは反動自体はきつくない。ぐっと後ろに倒れそうになるが持ちこたえた。

『お疲れ様です。戻ってください』

「はい……」

 どっと疲れた。空母に戻って、ヘルメットを外し、機体の電源を切り、個人認証カードを引き抜いた。

 機体から降りると七瀬さんが駆け寄ってきた。

「お疲れ様! 工藤くん! 君のおかげでいいデータがとれたよ。このデータを使って射撃時の反動制御プログラムを組むから、期待しててね!」

「期待してます」

 七瀬さんの晴れやかな笑顔をみて、少しだけ疲れが取れた。

「あと、あなたが希望していた近接武器の設計のほうも進んでいるから期待しててね」

「あ、ありがとうゴザイます!」

 自分でもわかるたどたどしい感謝の言葉。でもついにあれを手にするのかと思うと胸が高鳴った。

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