私の猫の好きなとこ

弥生 菜未

愛猫

 いつも隠しきれない八重歯。

 時々見える可愛い前歯。

 瞳孔の開いた真ん丸の目。

 静かに開く大きな口、たまに聞こえる『ふにゃ~』という欠伸の声。

 おねだりするような鳴き声。それはまさに、天使の囁き声。


 優しく伸びるしなやかな前足。今度はおねだりのトントン。

 獲物を目で追う低い姿勢。勢い余って激突、床を掻く爪の音。

 ぶんぶんと振るしっぽ。怒りか、興奮か。


 お兄ちゃんはよく狸のようなふさふさになる。

 お姉ちゃんは短いかぎしっぽを一生懸命ぶんぶん。

 末っ子ちゃんは女の子。お兄ちゃんとお姉ちゃんと血は繋がっていないけど、お兄ちゃんのような長いしっぽ、先端だけはお姉ちゃんのようなかぎしっぽ。本当の兄妹みたい。

 喧嘩ばっかりしてるけど、私は知ってる。本当は仲良しなの。時々鼻をつんして「こんにちは」。


 お腹撫でて私の手をかぷり。その甘咬みが癖になる。本当に怒ったときの“がぶり”は痛いけど、そんなときほどもっとからかいたくなっちゃう。

 怒ったときの『んにゃにゃにゃにゃ』、『シャー』、ペシベシバンバン素早い手。

 耳の中までふさふさ。耳下のおにくはぷにぷに。

 いざっ、しゃくれ顎!

 顎下撫でたその表情が、とても気持ち良さそう。

 ご飯を求めて『にゃ~にゃ~』、遊んでくれよ『にゃ~にゃ~』、お二階行きたいよ『にゃ~にゃ~』、ブラッシングも『にゃ~にゃ~』。

 たまには私も構って「にゃ~にゃ~」。


 お魚大好き。いたずらしちゃったその表情。

『あっ、やっちゃった』私の目は誤魔化せないぞ?

 しゃもじを浸けたお水をぺろぺろ。あなたのお水はそっちじゃないよ。

 日向で丸まる海老のような猫。

 私のベッドを占領する、伸びをする猫。

 片付けの邪魔する猫。

 宿題の邪魔する猫。

 あぁ、もう分かったよ。構ってほしいんでしょ?

 ツンデレちゃんに苦労する幸せ。

 寒い日には暖をとり、私の膝で香箱座り。

 キッチンで鍋にイン。安心して。火はかけないから、と思ったら、後ろの作業スペースから熱い視線。ここは猫の溜まり場。おやつを期待しているのね。


 昨日もお昼寝、今日もお昼寝。クッションからはみ出る後ろ足と、ハンモックから飛び出る前足。

 ギュッと握れば反射でひゅんと引っ込める。『やったな』と冷たい視線。

 視線は口よりものを言う。あ、違う違う。

「目は口ほどに物を言う」

 猫はお喋り。気がつけば視線は私に向いている。

 おいでと声をかけるけど時々視線が語ってる、『あなたがこっちに来なさいよ』。「はいはい、仕方ないんだから」と私は従うしかない。お姉ちゃん猫は女王気質。

 末っ子ちゃんは運動好き。壁を伝う猫じゃらしを自慢の脚力で捕まえる。でも年功序列はしっかり守る、体育会系。お姉ちゃんの視線が向いたとき、末っ子ちゃんはちゃっかり退散。お兄ちゃんは一番上のはずなのに、お姉ちゃんのお尻に敷かれちゃう。妹からの毛繕いは気まぐれの御褒美。

 『お兄ちゃん、いつもありがと』って言ってるのかな?違うかな?それとも『あんたしっかりしなさいよ』っていう励まし?

 お姉ちゃんは素直じゃないから。


 お兄ちゃんのいびきはすごい。犬ほどじゃないけど、シーンと静まり返っているなか『すぴー』と音が聞こえる。くわっ、って感じの険しい寝顔。怖い夢見てる?

 しまい忘れたピンクの舌がとっても可愛い。ちょんちょん触ると、思い出したように慌てて仕舞う。


 爪切りの時すっごく暴れるけど、マタタビには弱い。その欲望への従順さ、どこで覚えたの?飼い主に似た訳じゃないよね?

 待望のマタタビを得て、こてんこてんに酔うお兄ちゃん。あちこちの柱にすりすり。末っ子ちゃんもマタタビが大好き。お姉ちゃんは女王気質だからなぁ。どう思ってるのかな?迷いつつも、手にマタタビ出せば、一番きれいに舐めてくれる。

 十人十色。そんなありきたりな四字熟語には表せない、三猫万色。


 そんなこんなで、私は幸せ。

 生まれてきてくれてありがとう。

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