第13話 【Side ルーク】セラフィ。
ピーピーピーと耳障りな音が響く。
いつもだったら目覚ましの魔道具が鳴る前に起きていたのに、今朝は寝過ごしたようだ。
慌てて飛び起き身支度を済ませて、用意されていた朝食をかきこむとそのまま馬車に乗り込んだ。
局長になってからは公爵邸の一部も仕事で使うことはあったが、今日は朝から王宮での会議に出なくてはいけなかったから少し急いで。
セラフィのことはセバスとマリアに任せてきた。
彼女がどんな人間なのかは後から彼らに聞くとしよう。ひとまずは仕事だと頭を切り替えて。
そんな仕事が終わり、帰るなりマリアが前に来て言った。
「奥様はお優しくて明るくて、屈託のないいいお嬢さんでしたよ? ほんと旦那様には勿体無いくらい。もう少し優しく接してあげてくださってもバチはあたりませんわ?」
私の乳母をしてくれていたマリア。その遠慮のない口調にすこし苦笑いが浮かぶ。
「マリアがそういうのなら……」
「そうですよーぼっちゃま。夕飯をご一緒すればわかりますよ。奥様がどんな人柄か」
「ぼっちゃまはやめてくれよ……。
「ああ申し訳ありません旦那様。それでも嬉しいんですよ。旦那様があんないい奥様をおもらいになって。このマリア、安心いたしましたわ」
余計なことは言うけれど憎めないマリア。
世の中の女性がみんなマリアのようだったらと思わないこともない。
そんなことはありえないのだろうけれど。
食事の席のセラフィはいつも笑顔であふれていた。
何を食べても美味しそうにして、満足そうな笑顔を振りまいている。
こんな女性もいるんだな。
そう目から鱗が落ちるようで。
あまり着飾ったり厚化粧をしたり香水の匂いを振りまいたりしないところも、他の貴族の女性とは違ってみえる。
セバスからの報告でも、とくに何が欲しいとは言われていないようだ。
母は「公爵夫人は欲しいものを買って着飾って、そうしてお金をまわすのも役割のうちなのだわ。だのになぜ? わたくしが欲しいと言ったらすぐに商会をここに来させれば良いのよ! どうしてそれくらいのことができないの!!」と、当時の執事によく怒鳴っていた。
だから多かれ少なかれ女というものはそういうものだと思って諦めていた。
セラフィにも、必要なものはセバスに言えば良いとそうい言ったはず。
それは見栄でもなんでもない本心だった。
必要経費であると割り切っていたのに。
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