13

 それから数日後、栄作は今日も深夜3時にやって来た。今日も讃岐うどんの仕込みにやって来た。深夜からの作業は大変だが、店のためならこうでなければいけない。


「さて、今日も始めるか」


 栄作は作業を始めようとした。栄作は防犯カメラを見た。栄作は泥棒を気にしていた。絶対に防犯カメラで見つけてやる! そして、警察送りにしてやる! 栄作は作業を始める前に拳を握り締めた。


 栄作は生地をこねている。だが、時々入り口を見て、誰かが来ないか気にしていた。まだ誰も来ていないようだ。だが、いつ来るかわからない。警戒しておかなければ。


 次に、栄作は生地を踏み始めた。いつもは窓に向かって踏むのだが、今日は客席に向かって踏んでいる。ここから泥棒が入るだろう。栄作は泥棒が入ってくるのを待っていた。


 しばらく踏んでいると、1人の男がやって来た。知っている人ではない。この男が泥棒だろうか? 栄作は気にしつつ、作業を進めていく。


「ん?」


 男は辺りを見渡している。どうやら讃岐うどんを盗もうというようだ。この男だろうか?


 男はしばらくすると、店頭にあるお持ち帰りのうどんを手に取った。それを感じた栄作は、直ちに踏みの作業を中断した。その男を捕まえるためだ。だが、男は栄作の動きを全く知らなかった。


 男が盗んで、店を出ようとした時、栄作が目の前に現れた。男は焦った。見つかってしまったようだ。どうしよう。警察送りになる。


「お前、誰だ!」

「ご、ごめんなさい・・・」


 泥棒は焦っている。真夏ではないのに、汗をかいている。


「お前か、盗んでたのは!」


 泥棒はうなずいた。やはりこの男のようだ。やっと捕まえる事ができた。警察に言わないと。


「いいから警察に呼ぶぞ!」

「そ、それはやめて!」


 泥棒は抵抗した。だが、明らかに泥棒はやってはいけない事だ。警察に捕まるべきだろう。


「何度もやってたんだから、仕方がないだろ?」


 栄作は厳しい表情だ。何度も讃岐うどんを盗んだ。逮捕されなければならない。


「は、はい・・・」


 と、騒ぎを聞きつけて、俊介がやって来た。普通は物静かなのに、何事だろう。気になって起きて、ここに来たようだ。


「こんな夜遅くに何ですか?」

「こいつが俺のうどんを盗んでたんだ」


 栄作は泥棒を指さした。俊介はじっと見ている。こいつが盗んだ犯人なのか。栄作の作ったおいしい讃岐うどんを盗むなんて、とても許せない。


「ご、ごめんなさい」


 だが、謝っても泥棒はごまかせない。栄作は受話器の前に立った。これから警察に電話をするようだ。


「わかった。警察に連絡するぞ!」

「はい・・・」


 栄作は警察に電話をした。栄作は怒っている。俺の作った讃岐うどんを盗みやがって。


 栄作は電話を終えた。泥棒はがっかりしている。見つかってしまった。これから警察に連れて行かれるだろう。どんな懲役になるんだろう。泥棒は不安でいっぱいだ。


「やっと解決したね」

「これで安心して作れるわい」


 2人は嬉しそうだ。犯人が捕まったからだ。泥棒は2人の嬉しそうな様子をじっと見ている。


「でも大将、泥棒には気を付けてくださいね」

「わかったよ。今回の件がまた起きないように気をつけないと」


 栄作は思った。深夜だからと言って、安心はできない。しっかりと鍵をかけて作業をしなければ。もう泥棒が入ってこないように。


「そうだね」

「うん」


 俊介は安心した表情で、店を出ていった。泥棒は俊介の様子を、じっと見ている。




 翌朝、俊介は少し眠そうな表情だ。泥棒のせいで、深夜に起きてしまった。だが、今日も行かないと。客が待っている。


「へぇ、捕まったんだ」


 俊作はほっとしている。やっと犯人が見つかり、捕まったようだ。


「父さんが捕まえたんだよ」


 栄作が捕まえたのを知って、望は笑みを浮かべた。やっぱり栄作は強いし、あの顔を見たら、盗む気が失せるだろうな。


「これで父さんも安心だね」

「うんこれで一件落着」


 だが、彼らは気になっている事がある。どうしてあの男は讃岐うどんを盗んだんだろうか?


「でも、どうして盗んだのかな?」

「それは、直にニュースでわかるさ」


 俊介は思っている。直にニュースで明らかになるだろう。そのニュースはいつやるかわからない。作業中でもしっかりと見ておかないと。


「ふーん」


 ふと、俊作は思った。今日は半ドンだ。泥棒が捕まった事だし、今日は池辺うどんに行ってみようかな?


「そうだ、今日はお昼にうどん食べに行こうぜ」

「そうだね」


 急だが、今日のお昼は讃岐うどんを食べる事にした。なぜか土曜の昼は食べたくなってしまう。どうしてだろう。




 昼下がり、3人は池辺うどんにやって来た。今日も多くの人が並んでいる。ゴールデンウィークほどではないが、この並びようだ。やはりこれが人気店なのだな。


「けっこう並んでるな」

「うん」


 3人は少しずつ進んでいく。だが、なかなか入れない。いつになったら入れるんだろう。だが、いつもの事だから、慣れっこだ。


 店内に入ると、入り口にカメラがある。あれが防犯カメラのようだ。これが泥棒を捕まえる決め手になったと思われる。


「あれが防犯カメラ?」

「うん」


 と、俊介が3人に気づいた。また土曜日に来たようだ。本当にここに来るのが好きなようだ。とても嬉しいな。


「いらっしゃい、あれ、明日香に俊作に、望じゃん!」

「うん。ひやひやのぶっかけ並で」

「僕も!」

「私も!」


 寒い日以外はたいてい、冷やしぶっかけだ。3人とも、それに天ぷらを1個付けて食べるが、泥棒が捕まった事だし、今日は2つにしようかな?


「ひやひやぶっかけ並三丁!」

「はーい!」


 俊介は素早く湯がいて、冷水でしめる。その間、安奈がぶっかけつゆを丼に入れていく。入れるとすぐに、俊介はうどんを盛り付ける。


「どうぞ!」


 3人は先に進み、天ぷらを取る。望はかき揚げとナス、俊作はえびとイカ、明日香はちくわとサツマイモの天ぷらを取った。


 その間、店の人が話をしていた。話題になっているのは、深夜に捕まった泥棒の話だ。泥棒はそれから程なくしてやって来た警察に逮捕されて、今は交番にいるようだ。


「やっと安心して作れるようになったね」

「うん。よかったよかった」

「で、原因はわかった?」


 常連客も盗もうとしたきっかけが気になっているようだ。ニュースから目が離せない。


「まだわからない。でも、もうすぐ原因がわかるだろう」


 だが、ここのおいしい讃岐うどんを盗むなんて、とても許せない。香川一と言われるうどんなのに。栄作が心を込めて作ったのに。

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