2
朝、望や俊作、明日香のいる通学団は小学校にやって来た。今日もまた小学校での1日が始まる。望はすでに小学校での生活に慣れているようだ。すでにいくつかの通学団は小学校に来ている。いつもの光景だ。勉強を頑張らないと。
望は下駄箱にやってきて、靴から上履きに履き替えた。望は小学校に行けるのがとても嬉しそうだ。クラスの友達に会えるからだ。栄作や荒谷夫妻は仕事で忙しくて、あまりかまってくれない。そのさみしさを紛らわすには、学校に行くのがいいと思っているようだ。
望は教室にやって来た。教室には何人かの子供がいる。子供たちは、楽しそうに話をしている。朝の会の前の楽しい風景だ。
「おはよー」
すると、何人かの子供が振り向いた。楽しそうに話していた子供たちは、望が来たのに反応しているようだ。
「おはよう、望くん」
「昨日のアニメ、見た?」
1人の女性が話しかけた。霞(かすみ)だ。霞は、望とはまた別の集落に住んでいる女だ。別の通学団で来ていて、帰り道も全く違う。
「うん。あの子、可愛かったよね」
望は席に座り、ランドセルを机の横にかけた。望もそのアニメを見ていた。2人とも、昨日のアニメの感想を言い合っている。2人とも楽しそうだ。
「そうそう! 望くんもわかる?」
「うん!」
と、そこに1人の男がやって来た。弘樹(ひろき)だ。弘樹も望とは別の集落に住んでいて、通学団も違う。
「望くん、宿題やってきた?」
「うん」
望は宿題を出した。望はクラス内では成績が良くて、みんなから慕われているようだ。
「ここがわからないんだけどさ、教えて!」
「いいよ」
すると望は、わからない所を教え始めた。弘樹は望を頼りにしているようだ。それを見て霞は、宿題をやったか確認した。ノートを開いて、霞はほっとした。昨夜、霞は宿題をしていたようだ。霞はほっとした。
「望くんは賢くて頼りになるから、いいよね」
「うん」
ふと、霞は思った。望の父は、どんな人だろう。全く会った事がない。何をしているのかわからない。
「望くんのお父さんって、どんな人なんだろう」
「わからないけど、朝早くから働いてるんだって」
望は首をかしげた。栄作にはあまり会った事がない。深夜から作業をしていて、夕方に帰ってきて、すぐに寝るからだ。自分とは生活のリズムが異なり、あまり会う事がない。頑固な表情で、怒られそうで、自分でも近寄りがたい。
「ふーん」
霞は思った。結構忙しいんだ。だから、あまり会わないんだな。
「でも、けっこう年だって聞いた」
だが、望は知っていた。同級生の父と比べて、かなり歳をとっているようだ。白髪まじりで、少ししわがある。そう思うと、本当に父なんだろうかと思ってしまう。
「会ってみたいね」
「うん。何も聞いた事もないんだ」
望は、父が何をしているのか、聞いた事がなかった。怖そうな顔だから、聞こうとすると、怒られるかもしれないと思ったからだ。
「だけど、夕方ぐらいに帰ってくるんだ」
「そうなんだ」
普通の人と生活リズムが違うんだな。だけど、勤務時間の関係でこうなっているんだろう。もし、そんな時間に仕事をする事になったら、こんな生活リズムになるのかな?
「会った事があるんだけど、怖そう」
望は振り向いた。そこには俊作がいる。俊作は望が気になって、やって来たようだ。
「うんうん。近寄りがたい」
望はおびえている。栄作の事を想像すると、びくびくしてしまう。
「そうかな?」
と、チャイムが鳴った。もうすぐ朝の会だ。そのチャイムを聞いて、俊作は自分の教室に戻っていった。クラスの子供たちは、自分の席に座った。
「あっ、始まる始まる」
すぐに、担任の先生、安井(やすい)がやって来た。安井はおかっぱ頭に眼鏡の風貌だ。
「起立、礼!」
「おはようございます」
そして、いつものように朝の会が始まった。
帰りの会が終わり、望は友達と共に帰っている。まだ栄作や荒谷夫妻は帰ってきていない。鍵は一番早く帰る望が持っている。3月までは俊作が持っていたが、今は望が持っている。今日も疲れたけど、家に帰ってゆっくりしよう。
「今日は宿題がたくさんあるから、頑張らないとね」
「うん」
彼らは田園地帯を歩いている。とてものどかな場所だが、ここ最近、大型連休になると、多くの人が並ぶという。だが、その理由を望は知らない。
「僕は大変だよ。犬の散歩をしなければならないし。たまにはお母さんがやってほしいよ。でも、お母さんは買い物や夕食の支度があるし」
一緒に帰っている宙(そら)は飼っている犬の散歩がある。母は買い物に行ったり、夕食を作ったりで、暇がない。なので普通、宙が散歩をさせている。
「そっか」
望が荒谷家の前にやって来た。ここで友達と別れる。
「ここが家」
それを見て、友達は驚いた。ここは俊作の家だ。どうしてここが家なんだろうか?
「ここって、荒谷さん家だよね!?」
「お父さん、朝早くから働いていて、忙しいから、ここに住んでいるんだ」
望は普通にここが実家だと言っている。だが、みんなからしたら、意外だと思っているようだ。
「そうなんだ」
と、弘樹は思った。俊作や明日香もいるが、勉強はみんなで協力するんだろうか?
「ふーん。3人で勉強を協力したりするの?」
「うん。明日香姉ちゃんも協力するよ」
勉強の時は、2人も協力している。だから、望は成績がいいんだろうか?
「そっか」
「じゃあね、バイバーイ!」
「バイバーイ!」
そして、望は鍵を開け、家の中に入った。家はシーンとしている。誰も帰ってきていない。これから俊作が帰るまで孤独に待たなければならない。だが、望は全くそれを気にしていないようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます