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 朝、望や俊作、明日香のいる通学団は小学校にやって来た。今日もまた小学校での1日が始まる。望はすでに小学校での生活に慣れているようだ。すでにいくつかの通学団は小学校に来ている。いつもの光景だ。勉強を頑張らないと。


 望は下駄箱にやってきて、靴から上履きに履き替えた。望は小学校に行けるのがとても嬉しそうだ。クラスの友達に会えるからだ。栄作や荒谷夫妻は仕事で忙しくて、あまりかまってくれない。そのさみしさを紛らわすには、学校に行くのがいいと思っているようだ。


 望は教室にやって来た。教室には何人かの子供がいる。子供たちは、楽しそうに話をしている。朝の会の前の楽しい風景だ。


「おはよー」


 すると、何人かの子供が振り向いた。楽しそうに話していた子供たちは、望が来たのに反応しているようだ。


「おはよう、望くん」

「昨日のアニメ、見た?」


 1人の女性が話しかけた。霞(かすみ)だ。霞は、望とはまた別の集落に住んでいる女だ。別の通学団で来ていて、帰り道も全く違う。


「うん。あの子、可愛かったよね」


 望は席に座り、ランドセルを机の横にかけた。望もそのアニメを見ていた。2人とも、昨日のアニメの感想を言い合っている。2人とも楽しそうだ。


「そうそう! 望くんもわかる?」

「うん!」


 と、そこに1人の男がやって来た。弘樹(ひろき)だ。弘樹も望とは別の集落に住んでいて、通学団も違う。


「望くん、宿題やってきた?」

「うん」


 望は宿題を出した。望はクラス内では成績が良くて、みんなから慕われているようだ。


「ここがわからないんだけどさ、教えて!」

「いいよ」


 すると望は、わからない所を教え始めた。弘樹は望を頼りにしているようだ。それを見て霞は、宿題をやったか確認した。ノートを開いて、霞はほっとした。昨夜、霞は宿題をしていたようだ。霞はほっとした。


「望くんは賢くて頼りになるから、いいよね」

「うん」


 ふと、霞は思った。望の父は、どんな人だろう。全く会った事がない。何をしているのかわからない。


「望くんのお父さんって、どんな人なんだろう」

「わからないけど、朝早くから働いてるんだって」


 望は首をかしげた。栄作にはあまり会った事がない。深夜から作業をしていて、夕方に帰ってきて、すぐに寝るからだ。自分とは生活のリズムが異なり、あまり会う事がない。頑固な表情で、怒られそうで、自分でも近寄りがたい。


「ふーん」


 霞は思った。結構忙しいんだ。だから、あまり会わないんだな。


「でも、けっこう年だって聞いた」


 だが、望は知っていた。同級生の父と比べて、かなり歳をとっているようだ。白髪まじりで、少ししわがある。そう思うと、本当に父なんだろうかと思ってしまう。


「会ってみたいね」

「うん。何も聞いた事もないんだ」


 望は、父が何をしているのか、聞いた事がなかった。怖そうな顔だから、聞こうとすると、怒られるかもしれないと思ったからだ。


「だけど、夕方ぐらいに帰ってくるんだ」

「そうなんだ」


 普通の人と生活リズムが違うんだな。だけど、勤務時間の関係でこうなっているんだろう。もし、そんな時間に仕事をする事になったら、こんな生活リズムになるのかな?


「会った事があるんだけど、怖そう」


 望は振り向いた。そこには俊作がいる。俊作は望が気になって、やって来たようだ。


「うんうん。近寄りがたい」


 望はおびえている。栄作の事を想像すると、びくびくしてしまう。


「そうかな?」


 と、チャイムが鳴った。もうすぐ朝の会だ。そのチャイムを聞いて、俊作は自分の教室に戻っていった。クラスの子供たちは、自分の席に座った。


「あっ、始まる始まる」


 すぐに、担任の先生、安井(やすい)がやって来た。安井はおかっぱ頭に眼鏡の風貌だ。


「起立、礼!」

「おはようございます」


 そして、いつものように朝の会が始まった。




 帰りの会が終わり、望は友達と共に帰っている。まだ栄作や荒谷夫妻は帰ってきていない。鍵は一番早く帰る望が持っている。3月までは俊作が持っていたが、今は望が持っている。今日も疲れたけど、家に帰ってゆっくりしよう。


「今日は宿題がたくさんあるから、頑張らないとね」

「うん」


 彼らは田園地帯を歩いている。とてものどかな場所だが、ここ最近、大型連休になると、多くの人が並ぶという。だが、その理由を望は知らない。


「僕は大変だよ。犬の散歩をしなければならないし。たまにはお母さんがやってほしいよ。でも、お母さんは買い物や夕食の支度があるし」


 一緒に帰っている宙(そら)は飼っている犬の散歩がある。母は買い物に行ったり、夕食を作ったりで、暇がない。なので普通、宙が散歩をさせている。


「そっか」


 望が荒谷家の前にやって来た。ここで友達と別れる。


「ここが家」


 それを見て、友達は驚いた。ここは俊作の家だ。どうしてここが家なんだろうか?


「ここって、荒谷さん家だよね!?」

「お父さん、朝早くから働いていて、忙しいから、ここに住んでいるんだ」


 望は普通にここが実家だと言っている。だが、みんなからしたら、意外だと思っているようだ。


「そうなんだ」


 と、弘樹は思った。俊作や明日香もいるが、勉強はみんなで協力するんだろうか?


「ふーん。3人で勉強を協力したりするの?」

「うん。明日香姉ちゃんも協力するよ」


 勉強の時は、2人も協力している。だから、望は成績がいいんだろうか?


「そっか」

「じゃあね、バイバーイ!」

「バイバーイ!」


 そして、望は鍵を開け、家の中に入った。家はシーンとしている。誰も帰ってきていない。これから俊作が帰るまで孤独に待たなければならない。だが、望は全くそれを気にしていないようだ。

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