第4話 児童相談所の訪問

 その後、なんの変りもない日が続いたが、2週間後に、またもや、あの児童相談所から電話があった。今度は、あの子のことについて、わざわざ、家まで来るという。

これは、単なる報告ではなさそうだが、どうしようもない。里親と言われても、無理ですで、通そうねと二人で確認した。


 来られたのは、先日、お迎えに来た女性とその関係者、つまり児童相談所の人だ。

「実は、誘拐などの事件関係、児童養護施設つまり、昔でいう孤児院、いろいろ警察にも調べていただいたのですが、全く親御さんの手がかりも何もつかめないのです。ご近所の方の聞き取りも、石川さんと同じで、子供以外、車の音、大人の人がいたなどの証言もないのです。」

「じゃ、全くわからない子で、戸籍などもあるかどうかもわからないということですか。」

「今のところ、そういうことになりますね。」

「年齢も不明ですが、体格的には、3歳程度ですね。言葉は、不思議なんですが、最初、ほとんどしゃべれない感じでしたが、あっという間に、同じぐらいの子供程度はしゃべれるようになったんです。少し舌足らずですけど。しかし、あの子、本人もおとうさん、おかあさんのこと自体がわからないようでして。唯一例外なのが、なぜか、お二人については、とても気にいられているようで、あのおうちがいいと毎日、言い続けられており、このままほかの施設、あるいはほかの里親というのもどうかと思いまして、里親を検討していただければと思いまして。」


二人、顔を見合わせて、その内容にただただ驚くばかりであったが、そこに追い打ちとなる言葉がでた。


「たぶん、他に所に言っても、あの子は同じことを言い続けるでしょうし、また、脱走するかもしれません。実は、この14日ぐらいに、3回ぐらい勝手にでていこうとしていましたから。当然、どこに行こうとしているかは、おそらくは予想がつきますが。もちろん、たどり着くかはわからないですけど。」


 何とも言えない話をして、なぜか、児童相談所の人の顔が、こちらに前のめりで、ウルウルした顔で近づいてきたと思いや、急に、二人そろって、頭を下げて、

「あの子を救えるのは、石川さんしかいないと思うので、里親になってあげてください。里親制度では、もちろん、養育に必要なお金はたくさんではありませんが、支給されます。石川さんのご家庭の経済的な負担はないとは言えませんが。

石川さんの年齢を考えると、少し、条件が合わないのですが、それはそれとして。」といい、苦笑いをされた。なにかおかしい。


 でも、内容が内容だけに、こちらも頭も回らないし、言っていることが理解できず、亜希と顔を見合わせて、うなっていた。


結局、すぐには返事ができないといい、断ったものの、なぜか、里親制度についての書類を一式渡され、そそくさと帰っていった。


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次回、更新は、12月23日の予定です。よろしくお願いいたします。

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