24.外堀作戦
「え?
誰かからそんな声が聞こえてきた。
ひよりに気を取られて忘れそうになっていたのだが、そう言えば
第一印象はおかしな女だったしなぁ……。
なにもここでぶっこまなくてもいいのに!
「あんた馬ッ鹿じゃないの!? なんで人の作戦を逆に利用しようとしてるの!?」
「作戦?」
「外堀作戦! これじゃ私がかませ犬じゃん!」
ひよりは今度は犬になったようだ。
本人を目の前にしてその作戦名を言うんじゃねーよ。
「わ、私はただ事実を……」
「……」
「それに私の場合は、そんなことをしなくてもいいというか……」
「……」
「既に城を落としているわけなので……」
「ぅ……」
「そんな回りくどいやり方はしなくていいんじゃないかなぁ、なんて……」
「うわぁあああああああああん!」
ひよりがダッシュで自分の席に戻っていく!
席について不貞腐れたように机に突っ伏してしまった!
「無自覚オーバーキル良くないよ」
※※※
「ひよりー、お昼ご飯食べようぜ」
「今日のお兄ちゃんはお昼ご飯は抜きです」
ひよりが子供みたいなことを言っている。
朝の件で完全にへそを曲げてしまった。
「そう言わずにさ」
今日はひよりにお弁当を二つ用意してもらっていた。
自分の分と俺の分、そのどちらも今はひよりが持っている。
「あっ、トオル君。私のお弁当一緒に食べる? ちょっと作り過ぎちゃって」
「あ゛ぁああああ゛!」
「あんた、本当になんなの! なんで隙あれば私のことを破壊してこようとするの!?」
「だから勝手に壊れていくだけなんだってばぁ……」
多分、
でも、
「お兄ちゃん、私とご飯食べよ!」
「お、おう……」
でもなぁ……。
いちいち、この騒ぎをされると毎度クラス中の視線を感じるというか。
「
よくは聞こえなかったが、クラスメイトは俺の噂話をしているようだった。
※※※
分かってるさ。
誰かに言われなくてもそんなこと分かってるさ。
意外とダメだって言いたかったんだろう。
意外とだらしないって言いたかったんだろう。
優しい
「お兄ちゃん帰ろう!」
放課後になると、今日を無事に乗り切ったひよりが俺に声をかけてきた。
「あっ、私も一緒に帰っていい?」
「うっうっー!」
同時にひよりが声にならない声をあげている。
いつか、どっちかを選ばないといけないのも分かっている。
大切な彼女か、それとも大切な家族か。
……必ずどちらかを優先させてないといけないときがやってくる。
「じゃあ三人で帰ろうか」
本当に情けないな俺……。
「私はお兄ちゃんと帰りたいの!」
「別に私も一緒でもいいじゃんか」
なんだかんだでひよりに全然負けていない。
「ひよりちゃーん! また明日ねー!」
「
人気者の二人は、帰り際に沢山の人に帰りの挨拶をされている。
愛想よく返す
とても対照的な二人だ。
(はぁ……)
俺は二人と一緒に教室から校門に向かうことにした。
俺は、ひよりが今日を無事に過ごせてほっとひと安心している一方で、自分への嫌悪感でいっぱいになっていた。
俺にはそんな風に声をかけてくれる友達もいない。
二人はちゃんと前に進んでいるのに、俺は取り残されているような感覚がする。
「そこの
そんなことを考えながら校門から外に出ると、スーツ姿の怪しげな男性に声をかけられた。
このオールバックの中年は……。
「ひよりちゃーん! おめでとぉおおお!」
中年の男性がひよりに駆け寄っていく!
「あれ? どうしてここにいるんですか?」
「今日がひよりちゃんの初登校だと聞いて東京から帰ってきたんだよ!」
こ、こいつは……。
この無駄にチャラけた声を出すこの男は――。
「と、父さん!?」
正真正銘、うちの親父じゃんか!
どうしてここにいるんだよ!?
「
「どうしたんだよいきなり! いつも帰ってくるときは連絡くれたじゃんか!」
「父がうちに帰ってくるのは不思議じゃないだろう。それにこれを見たら気になってな」
「これ?」
そう言って父さんは鞄の中から、例の週刊誌を取り出した。
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