第11話
彼に対する気持ちに気づいてからずっと思い悩んでいました。自身のエゴと醜さと目が合わないようにするには、彼を見ているほかはないが彼から目をそらすとそれらが近づいてきているのでまた彼を見る、彼を思う。こんな気持ちになるのなら最初から信用なぞしなければよかった。不愛想に突き放して一人で暮らせばよかったとこそ思うが、今の私にはもうひとりで学校にいる私も、またどのようにそうしていたかさえも忘れてしまったのです。どうにもならない。もういっそ暴れ去って、彼さえ消してしまおうかとも思っていました。
ずっと考えて思い悩んでいたのですが、そんな中で夏休みに入ったのです。最初は彼に会えないことを悲しんだのですが、この中毒から抜け出す良い機会だと思いましたし、いろいろ考える時間がなかったのだからその点でもありがたいものだと自分に言い聞かせることで何とか納得させました。とはいっても、夏休みの最初の一週間は希死念慮がのしかかり何もできませんでした。いや、何もする気がなかったのでしょう、それを希死念慮がどうとか理由をつけてはたからの格好を少しでも良くしようとしてしまったのでしょう。無意識に自分に言い聞かせてしまったのでしょうか、ともすれば、本当の私は希死念慮があるのかどうなのかそれすらも自信をもって言うことができないのです。きっとそれほどまでに思い込んでいたのだと思わせたいのでしょうか。私にはもうわかりません。ともかく、その一週間が過ぎてからようやく私は様々な思案を行うようななるのですが、結論から述べると、私は友人の幸せを尊重したいと思いました。その結論に至るまでに、様々なことを考えました。これまでのように我慢する、どうにかして彼を忘れ去る、果ては彼を殺してしまおうとも思いましたが、これはその後に後悔すること特に妄想の中の彼に永遠に呪われることに私が耐えられないのでないことにしました。そのようにいろいろ考えた末に私は彼の、友人の幸せを願うことにしました。
具体的にどうするのかというのは私が彼から離れ私の中の彼にすがって一生過ごしていくということ以外なにも決まっていません。もちろんここから離れますし、携帯や身分証明書なんかも全部捨てます。そうして誰でもない私は彼と一緒に過ごして、死んでいきます。もし耐えられなくなったら死にます。海で彼と一緒に死にたいと思います。白浜とかがいい、何かこうきれいな海なら私の心も受け止めてくれるだろうから、そうしてくれるような海に身を投げましょう。そうするのがきっと一番幸せでしょう。では皆さんさようなら。
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