第9話

 遠い高校に行ったからと言って、特に何かに期待していなかったので、これまで通り一人で過ごしていこうと思っていました。しかし、入学してすぐに私にとっての大きな転換点を訪れることになったのです。

 それこそが中野秀明との出会いでありました。

 彼は初めて自ら、私に声を掛けてきた人物でもあります。重ねますが、彼は私に声をかけてきたのです。予想外のことであったことは書くに足らないのですが、その時の私には驚きはなく、恐怖がそれを包み込んでしまったのでした。これはいわゆる自衛に移行するための恐怖――いじめと呼ばれるものの標的にされてしまうのではないか、それに限らず何か企んでいるのではないかとばかりでありました。それでも、拒まずに交友を持とうとしたのは、彼にかけてみたいとおもわせる何かがあったからです。事実、彼は良い人でした。よく私に話しかけてくれたり、まれに遊びに誘われることもありました。そのようなときはもれなく殊張ってしまうのですがそれでも嫌な顔を一切せずに変わらずせしっしてくれました。そんな中、私が唯一彼の誘いに乗ったことがありました。それは彼が主催した勉強会でありました。彼以外の人たちも来ると聞かされており不安でありましたが、それでも背に腹は代えられない理由がありました。それは単に次回のテスト私には難しいものばかりで、万が一赤点などを取ってしまえば親が私の生活に干渉してくるのがこの上なく嫌だったからです。なのでこの勉強会に参加することにしたのですが、これが良かった。勉強面だけでなく、彼と二人きりで話すことができたのが一番良かった。彼にとってはどうでもいい内容だったかもしれないが私にとっては忘れられないものとなりました。

 それから私にはじめての人の友達ができたのですが、なんといっても彼はいついかなる時に見ていても、笑顔が絶えない、困っている人がいれば一番にかけていく、何の差別もなく人に接するなど書ききれないほどに素晴らしい人であり、私を助けてくれた時に関しては特別扱いされたような心地でした。これまで特別に扱われて不愉快な限りでありましたが、今回に限ってはうれしかった。当人がそのように扱ったわけではないと信じたいのですが、もしそうだとしてもそこまで嫌な気もしないのはなぜでしょう。友達とはそうゆうものなのでしょう。私には経験なかったものなので、戸惑いなどが多くありましたし、今でも慣れてしまい気づかないだけでそういったものがあるのでしょう。

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