第5話

  二年に上がってからも同じクラスで、僕たちの関係は変わりなく続いていた。一つ変わったことといえば、僕が委員会などで何かと忙しくなっていき休み時間中に雑談をする余裕がなくなり、帰る時間もみんなとは異なる時間になることが多くなっていたので、クラスのみんなとかかわる機会も徐々に減っていった。直治も例外ではなかった。それでももちろんクラスでの居場所がなくなったわけではないし、皆仲良くしてくれていた、前までとは変わりなく、ヒデ明日の放課後映画見に行こうぜといったように輪に入ることができていた。

 そんな状況のまま夏休みに入った。夏休みに入ると皆部活に忙しくなり出してしたが、僕は所属していなかったので時間を持て余していた。皆疲れているだろうから遊びに誘うのは控えていた、もしかしたら部活に入っていないことに後ろめたさをどこか感じていたのかもしれない。一人で遊びに行き一人で帰るのを繰り返し、むしろ心が疲れる自由で閉塞的な感覚。心がじめついて、汗をかくそんな感覚。

 夏が終わり、二学期が始まったが、最後の十日間何をしていたのか全く思い出せない。友人たちと久々の再会を果たし、夏休みの間何をしていたかなど分かり切った会話を行った後に担任が教室へ入りホームルームを行うはずだったが、その前に担任は、夏休みの間にこのクラスにいた大西直治くんが行方不明になりました、今、警察が捜索しているのでみんなも彼の無事を祈っていてください、という旨のことを言ったのを覚えている。確かに今朝から一度も直治の姿を見ていない、と思うと同時に陽が雲に隠れ教室が暗くなった。

 帰りに家のポストを確認すると、一枚の写真と手記が入っていた。その写真には直治が写っており、その目は生気がなく撮影者の奥を見ているような、初対面の時の彼を思い出す表情である。だれがこの写真と手記をポストに入れたのか未だ正確にはわかっていないが僕はこの二つを大事に保管することに決めた。

それから卒業後、彼の言っていたことを信じ、大学在学中に会社を立て今の僕ができた。

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