第8話 サプリの広告が多すぎる

 最近、膝関節に効くというサプリメントの新聞折り込み広告が、2日続けて入りました。

 同一商品なのですが、片面は少し趣向を変えた作りで、もう一方の面はまったく同じです。

 そのチラシの紙質は厚手で、何やら上等そうです。さすがは資金力のあるメーカーだと思いました。

 その大手メーカーは、もともと酒類のメーカーです。しかし、国内の酒類市場は先細りだと予想しているのか、最近は高齢者をターゲットにしたサプリの開発・製造・販売に注力しているようです。

 折り込み広告だけではなく、新聞広告、テレビCMなど、その商品の広告宣伝を見ない日はありません。


 主に高齢者を対象としたサプリメントの広告やCMは、その会社のものだけはありません。「常連」が何社もあります。


 ここで、ヘソ曲がりガエル参上。

 胡散臭いですねー。私の疑問を列挙してみましょう。


①効果があるのか?

 ヒアルロン酸、コンドロイチン、グルコサミン……。サプリでお馴染みの名前です。

 こういうものを飲んで、果たして効果があるのでしょうか?

 私は医学の素人なので、確たることは言えません。しかし、ごく常識的に考えても、疑問が湧いてきます。

 人間がものを食べたり飲んだりすると、胃や腸で消化吸収されます。タンパク質ならアミノ酸とか、要するに、最小単位の物質に分解されて、体内に吸収されるのではないかと思います。

 例えばコンドロイチンが、いったん分解されて別の物質になったとします。それが体内に吸収された後、膝関節に集まってきて、再びコンドロイチンになるのでしょうか?

 はなはだ疑問です。

 現に、整形外科クリニックの医師が作っているサイトなどには、「効果なし」と断言しているものもあります。


②科学的根拠があると謳っているが……

 このようなサプリの折り込み広告には、科学的根拠として、実験結果と称するグラフが掲載されている場合が少なくありません。

 こういうものを見つけると、私はじっくりと読み解こうとします。

 これまで見てきたものは、「科学的根拠」というにはあまりにお粗末なものばかりでした。

 まず、実験対象となった人(被検者)の人数が極めて少ないです。

 当該成分(商品としての当該サプリではない!)を飲んだ人と、飲まなかった人を対照しているのですが、例えば「n=19、n=20」などと、それぞれの被検者数が20人程度なのです。

 これでは、被検者個人の体調とか生活習慣といった、サプリとは別の要素による影響を排除するのが難しいでしょう。

 確たる根拠はありませんが、被検者は少なくとも数千人は要るのではないでしょうか?

 また、折れ線グラフの横軸が飲み始めてからの時間であるのに対し、縦軸は「機敏に動けるようになった」といった、被検者の主観でした。

 グラフや英語表記があると、なにやら権威や根拠がありそうに感じてしまいます。そう思わせるのが、狙いなのでしょうが、鵜呑みにするわけにはいきません。

 著名人や一般人の「喜びの声」を列挙するのも、よく見かけます。隅の方に小さく、「あくまで個人の感想です」などとあるのは、もはや「お馴染み」ですね。


 中でも驚いたのは、そのメーカーの研究員のご高説を掲載し、小さく「あくまで研究員の個人的見解です」などと記載していたメーカーです。こうなると、呆れるばかりです。


③飲んでいるのは宣伝広告費?

 新聞紙面や雑書等での広告、折り込み広告、テレビCMなど、宣伝広告には費用が掛かります。言うまでもなく、それらの費用は、商品の原価の一部となります。

 私は、それぞれの広告媒体の費用がどれほどかかるのかは知りません。しかし、毎日のように宣伝を見かけるということは、莫大な費用がかかっているのではないかと推測します。

 いったい、原価の何パーセントが宣伝広告費なのでしょうか?

 もしかして、毎日有難く飲んでいるのは、宣伝広告費だったりして。


④「初回限定値引き」商法

 ほとんどのサプリの広告・CMは、初回のみ「○○%引き、送料無料」というのを強調しています。

 しかし、そんな値引きは、せいぜい数千円に過ぎません。

 大切なのは、その後。本来の価格でのランニングコストでしょう。

 初回の安さを売り物にして、とにかく顧客を摑んで、その個人情報などを取得しよという商法は、どうも感心できません。


⑤かえって健康的な生活を阻害する?

 色々疑問を述べてきましたが、私はこの⑤が一番問題だと思っています。

 例えば膝に「効く」サプリの宣伝では、さっそうと速足で歩いたり、階段をどんどん上っている有名・無名の高齢者が出てきます。

 そうして、「○○○○」のお陰でこんなに元気です、などと言わせています。


 これを見た人の中には、当該サプリを飲めば、その人のように元気でいられると勘違いする人がいるのではないでしょうか。

 高齢者がフレイル(虚弱)にならずに元気でいるには、運動・栄養・休養が大切だといわれています。具体的には、次のとおりです。

■ 運動:有酸素運動(ウォーキング等)、ストレッチ、筋トレ(スロー筋トレや自重筋トレで十分)。

■ 栄養:三食バランスよく。特にタンパク質を欠かさない。節酒。

■ 休養:質の高い睡眠(高齢になるほど必要な睡眠時間は短くなる)。


 上記は、私が地元自治体で行っている健康教室や、NHK「きょうの健康」などで学んだものです。


 サプリを飲むより、上記を実践する方が、はるかに有効だと思います。

 ところが、サプリの宣伝をこれでもかこれでもかと見せられた人は、サプリを飲めば安心だと誤解してしまう可能性があります。

 あるいは、運動嫌いの人にとって、運動しないことに対する都合の良い言い訳になってしまうかもしれません。

 そうだとすると、サプリの宣伝は、かえって健康の維持・増進を阻害するものになりかねません。


 以前、目に関わるサプリを飲んでいて、眼科医に相談したら、「効果がからサプリなんです」と言われて、止めたことがありました。

 それ以来、サプリは飲んでいません。

 もっとも、サプリの広告には、おかしな点を探し出して突っ込みを入れるという楽しみ方があります。



 

 

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