第5話 「日本アルプス」という呼称
新聞を読んでいたら、「日本アルプス」という言葉が出ていました。
日本アルプスとはいうまでもなく、日本の中部地方にある山岳地帯の名称で、北・中央・南の各アルプスの総称です。
私は昔から、これらアルプスを冠した名称に違和感を覚えてきました。自分は、出来るだけ使いたくありません。
ちなみに、それぞれの正式名称(カッコ内)や最高峰は次のとおりです。
■ 北アルプス(飛騨山脈):富山県・岐阜県・長野県・新潟県にまたがる山脈。最高峰は奥穂高岳。
■ 中央アルプス(木曽山脈):長野県にある山脈。最高峰は木曽駒ヶ岳。
■ 南アルプス(赤石山脈):長野県・山梨県・静岡県にまたがる山脈。最高峰は北岳。
※ 出典:ウィキペディア
「The Japan Alps」というウェブサイトによると、日本アルプスという名称の由来は、次のとおりだそうです。
「日本アルプス」の名付け親はイギリス人の鉱山技師ウイリアム・ガーランドと言われていますが、日本アルプスを最初に世界へ紹介したのはイギリス人宣教師、ウオルター・ウエストンです。彼は1896年日本での登山紀行を「日本アルプス 登山と探検」という著書にしてその名を広めました。ウエストンはその後日本山岳会の設立にも参画、日本人に「山を登る楽しさ」を教えてくれた人物と言えます。
(引用終わり)
さて、なぜ私が日本アルプスという呼称に違和感を覚えるのか申し上げます。
それは、この呼び方に、ヨーロッパにあるアルプスこそが本家であって、日本アルプスはその亜流、つまり、本家に似てはいるが本家を越えることはありえない、というイメージを感じ取ってしまうからです。
日本アルプスと命名し広めたイギリス人たちは、ヨーロッパのアルプスを知っていたからこそ、それと似ていると感じて、そのように命名したのでしょう。
しかし、本来、その二つはまったくの別物です。
亜流のような名称で呼ぶ必要はないと思うのです。
とっぴな例えですが、仮に、明治期に日本に来たヨーロッパ人が富士山を見て、「日本キリマンジャロ」と呼んだとします。物凄い違和感を感じますね。
もっとも、日本アルプスという呼称は、すっかり定着してしまっています。
例えば、「トランスジャパンアルプスレース(Trans Japan Alps Race、略称:TJAR)」という山岳レースがあります。私も、このレースの記録をテレビで観るのが好きです。
また、日本アルプスに代わる名称があるかと問われると、すぐには答えられません。
これと似ているものに、映画の賞である「日本アカデミー賞」があります。
同賞の公式ウェブサイトには、1978年に同賞を創設した際、本家・米国アカデミーから正式許諾を得たとあります。
よくこんな名前を付けたものだと思います。これでは、どこまでいっても米国のアカデミー賞(オスカー賞)の亜流、二番煎じのイメージが拭いきれません。
本家のアカデミー賞を越えるような賞にするぞ、といった気概はなかったのでしょうか?
もともと日本人は、こうした名称にはあまり抵抗感を感じないようです。
「東洋のスイス・岡谷」、「日本のマチュピチュ」(竹田城址など)、「日本のナイアガラ」(吹割の滝など)……。
目くじらを立てるほどのことはないのかもしれませんが、私は気になります。
ものや場所の名称も、文化の一つです。自分たち固有の文化を大切にすべきだと思います。
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