第2話 お一人様もいいけれど

 最近は、「お一人様」に関連した本やテレビ番組が大流行りしています。

 中でも、年配の人が、一人暮らしの気楽さ・優雅さ・楽しさなどを書いた本を、よく見かけます。


 人は年を取ってくると、配偶者を失ったり、知人友人が亡くなったりして、だんだん孤独になっていくのは、ある程度必然的でしょう。

 それでも、塞ぎこんだりせず、一人暮らしを大いに楽しむ。とてもいいことだと思います。


 その一方で、「いや待てよ」という声が、ヘソ曲がりガエルの心に湧いてきます。

 孤独だからこそ、新たな知人友人を作るのも楽しいのではないでしょうか。


 だいぶ前、某全国紙の人生相談の欄に、評論家の樋口恵子氏がお書きになっていたことが、心に残っています。主旨は次のとおりです。


《年配になればなるほど、ただ待っているだけでは、人間関係は作れない。自分から積極的に人と関わっていく姿勢が大事だ。》


 まったく同感です。

 それに、現役時代と退職後の自由の身では、人間関係の在り方が大きく違ってきます。

■ 現役時代:

 ウマが合わない人とも付き合う必要がある。その最たるものが、私が別のエッセイで書いた「イヤな上司」でしょう。

■ 退職後:

 嫌いな人とは付き合わない。義理に基づく付き合いもしない。気の合う人とだけ付き合う。これは、精神衛生上、とても良いです。

 しかし、ただ待っているだけでは、新たな知人友人はできません。能動的になる必要があるし、それが楽しくもあります。


 私(今年70歳)は、カルチャー教室でプロ作家が教える小説教室に通い出して1年半になります。10人弱の受講生の中で、男性は私のほか、私より7歳ほど年上の人の二人だけです。

 教室が終わった後、その人と一杯やるのが恒例になっています。

 こういう仲間は現役時代と違い、何の利害関係もないのがいいです。もし付き合うのが億劫になったら、付き合いを止めれば済むことです。


 それに類する知人が、他にも何人かいますが、知人友人を大勢作る必要もありません。


 何が言いたいかといえば、「お一人様」の楽しみは、それはそれでいいことですが、ことさらお一人様になる必要もない、ということです。

 新たな知人友人を作るのも、これまた楽しいことだと思います。


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る