第3話 ソファに寝かせるにはちょっと…
割れそうな頭に呻きながら、少しずつ目を開くと、知らない部屋の床に寝かされていた。
目を瞬かせながら、全身を眺め、現状把握に努めてみる。
細い手足に、薄汚れた襤褸きれのような衣服、ベージュのような髪色。
うん、孤児の僕は死んでいませんでした。今生はまだまだ続くようです。喜んでいいのか悲しんでいいのか……。
あれ!?これって異世界転生ってやつでは!?
前世で流行りモノの漫画はよく読んでいたから、異世界転生系も結構読んだのだ。
髪がベージュとか異世界っぽい。てか、確かこの世界には魔法があるから異世界確定だよ!
あ、でもこの世界には"獣性"とやらもあるな。前世で俺が読んだ漫画の中にはそんな設定のものは無かったな。まるっきり知らない世界なんだろう。
異世界転生と言ったら、転生チートとかがありきたりなんだけど、孤児からのスタートはなかなか厳しいだろうなぁ。
というか、そもそも。さっき前世を思い出したことで、今世に何の期待も無くなった。
痛いのや苦しいのは嫌だけど、お金持ちになりたいとか、権力欲しいとか、長生きしたいとか、ハーレム作りたいとか、そういう欲は全然ないんだよなぁ。
なんてことを、つらつら考えていると、さっきまであんなに激しかったはずの頭痛はどんどん引いていったから、この頭痛は前世を思い出したことの影響だったのだろうか?
思考がクリアになるにつれ、前世の記憶もすんなり自分に馴染んでいくのを感じる。
記憶は増えたけど、僕が孤児のファーライト10歳(推定)であるという自覚は何も変わらない。なんか、中身は大人、頭脳は…ってなりそうだったけど、全然そんなことないな。思いっきり10歳児のテンションな感じする。
僕は、あの路地裏で倒れて、誰かに助けられたのだろう。あの時、近寄ってきていた、水色の瞳の子どもかな?
部屋を見回すと、古ぼけた家具が雑多に置かれていた。掃除もあまり行き届いていないようだ。
てか、すぐ横に大きなソファがあるのに、僕、床に置かれたんだな。
まあ、この見るからに孤児ですっていう汚い格好じゃあ、いくら古ぼけたソファでも触らせたくないか。そりゃそうか。
少しやさぐれた気持ちになっていたら、音楽が小さく聞こえてきた。
倒れる前に聞こえてきたのと同じメロディ。
音のする方に目をやると、ドアの影から恐々と覗く一対の水色の瞳。ローブを被っているようだ。
路地裏で見たあの子どもだろう。
助けてくれたお礼を言わなければと思い、その子が部屋の中に入ってくるのを床に座って待っているのに、なかなか入って来ない。
え、僕、怖がられてる?
「よっ!」
フレンドリーさを出してみようと、気軽に手を上げて声を掛けたんだけど。
「ひぃっ!!エ、エルフさま!ごめんなさい!!」
扉の奥に隠れちゃった。
え、僕、そんなに怖い?なんか微妙に傷つくんだけど。
てか、エルフって?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます