第46話 地下迷宮1階編④
レイナに危険を感じた俺は、ドラゴンバットの攻撃を防ぐためファイヤーボールを放っていた。
その瞬間に爆発が起こったようだが、理由がわからない。
ココの疑問に俺自身が説明できず、必死に考えていた。
「アッ!レイナさんが目を覚ましました。」
テレサの言葉に、俺とココはレイナに駆け寄り声を掛ける。
「レイナ様!大丈夫ですか?何処か痛い所はありませんか?」
「レイナさん、気が付いて良かったです。」
俺とココはレイナの表情を見ながら声を掛けた。
「大丈夫です・・・何が起こったのかがわかりませんが、気を失ったのは不覚です。」
レイナは申し訳なさそうに話す。
「皆、意識が無くなったけど、怪我は誰もしていなかったので助かったね!」
「そうですね・・・気絶している最中に襲われたら命は無かったかもしれません。」
「私達、運が良かったですね。」
女性3人は無事であることを喜んでいが、急にレイナが辺りを見渡した。
「シノさんは?」
「はい、ここにいます。」
レイナがシノを見つけて安心した表情を見せた。
「無事でしたか?」
「はい、コウ様に助けられました。」
シノは俺の後ろから小さな声で話す。
(まてまて!助けられたのは俺の方で、話が違うぞ!)
「シノさんもコウさんに助けられたのですね。」
(雲行きが非常におかしいぞ!)
「私達~皆コウに助けられたみたいだね!」
ココが俺の顔を見つめる。
「私達のリーダーは頼りになります。」
テレサも俺を見つめる。
女子3人に見つめられると、顔が赤くなってしまう。
シノには後でお仕置きだな!
全員が通常通り動ける状態までの回復と、手持ちの持ち物等の再確認を行い奥にある3つの扉に向かった。
「地図作成の為、3つの部屋に順番に入ります。」
テレサに部屋の開錠をお願いし、まずは左側の扉を開ける。
「魔物は居ないみたいだよ!」
ココが部屋の中を慎重に確かめる。
「奥に宝箱が1つ置かれているけど?」
ココは宝箱が置かれている手前に違和感を感じていた。
「何か変な感じがするよ!」
ココの言葉にテレサが反応する。
「真中の床に罠があります。」
テレサに言われて床を眺める。
確かに床にはうっすらと円形状の魔法陣が見える。
ただ、気にしないで正面の宝箱に意識があれば見落すだろう!
「何の魔法陣でしょう?」
テレサが尋ねる。
誰も答えられない。
あえて俺も知らないふりをしていると、シノが小さな声で皆に話し出した。
「転移魔法だと思います。」
ナイスだシノ!だぶんこの魔法陣は描いている上を歩くと、どこか違う階層にテレポーションする。
ゲームでは定番の罠だ。
「転移魔法!」
レイナが驚く。
「どこに転移されるの!」
ココが不思議そうに話す。
「転移される場所がわからなければ、とても危険な罠ですよ!」
テレサが後ずさりしている。
「そうですね、どこに転移するかわからない以上冒険は危険です。ここは魔法陣を避けて宝箱だけ持って帰りましょう!」
「エッ~」
俺の言葉に皆が反応する。
「何かおかしな事を言いましたか?」
「コウみたいな発想は出来ないよ。」
「そうですよ!普通は危険をおかしてまで宝箱はとりませんよ!」
「コウ様!魔法陣があるのにどうやって宝箱を開けるのですか?」
皆不思議そうに尋ねる。
「魔法陣は床に描かれていますので、踏まなければいいだけですよ~飛び越えれば大丈夫です。」
「せっかくここまで来たんですから、テレサさん~宝箱の解錠をお願いします。」
俺の説明に皆驚いた顔をしていたが、納得したようだ。
「コウさんは凄い人ですね。」
「エッ!」
今度は俺がビックリした。
「コウ様は転移魔法をご存じでしたのですか?」
そういう事か!
「いえ、見るのは初めてですが、転移魔法の事はギルドの図書館室で読みました。」
「さすがコウだね!ココが魔法陣を踏まずに奥に行ってみるよ。」
ココの行動を心配の目で追う。
ココは魔法陣を飛び越えて奥にある宝箱にたどり着くと、皆安心した表情に戻った。
「コウの言う通り、問題なかったよ。」
ココの無事な姿を見てテレサも安心したのか、ココの後を追って奥の宝箱にたどり着いた。
「私も大丈夫です。コウさんとレイナさんはそこで待っていて下さい。」
「私はそんなに飛べません!申し訳ありませんが、そうさせてもらいますわ。」
レイナの重装備では仕方ない。
暫くすると、テレサが宝箱を開錠してココと一緒に戻って来た。
「宝箱の中身は兜でした。」
手に持った兜はとても軽く、全面が開閉できるタイプでレイナの装備にもってこいの兜だ。
テレサから兜を預かりアイテムバックに収納する。
レイナの視線は感じたが、迷宮で拾ったアイテムは呪い等が付与されている可能性があるので、鑑定をして安全を確認してからではないと装備は出来ない。
鑑定レベルが上がれば俺でも出来るようになるはずだが、今はギルドに依頼するしかない。
部屋を出て次は右側の扉を開けて部屋に入ってみた。
さっきと同じで、奥に宝箱がおいてある。
「こちらの部屋には先程の魔法陣や罠は見当たりません。」
テレサが確認してから、ココが宝箱に近づいて問題ない事を証明した。
本当は天井に魔法陣が描かれているのだが、これはテレポーションで戻ってくる場所だ。
俺は気付かないふりをして、テレサから宝箱のポーションを受け取りアイテムバックに収納した。
最後は真中の扉を開けて部屋に入った。
たぶんこの場所は地下迷宮1階層のボスがいる部屋で、地下2階へ続く階段があるはずだ。
各部屋と同じく入口の近くにランタンを設置し、部屋の中が見渡せる明かりを確保する。
「広い部屋ですが、魔物はいませんね。」
テレサが罠がないか確認しているが、従魔の2匹は前方を睨みながら身構えている。
「クロとシロの様子が変だよ!」
ココが従魔の様子を見て警戒する。
「何も見えないが、何かいるのでは?」
レイナが盾を構えて俺の前に出る。
テレサが慎重に前に進むと、テレサの目の前にカマの様な武器が突然姿を現わし、テレサの首をめがけて襲い掛かって来た。
突然の出来事でテレサは一歩も動けず首への軌道から逃れられなかった。
テレサの首が跳ねられたと思った瞬間、テレサの影からロキが飛び出し、カマの様な武器に体当たりをして軌道を変えた。
俺はその場に倒れ込んだテレサを手前に引きずり、見えない魔物から距離を取った。
「よくやったロキ!」
「有難うございます。」
テレサはお礼を言うが、放心状態のままだ。
「ファイヤーボール!」
俺は見えない敵に魔法を放った。
火球は正面の見えない壁に当たって消えたが、その瞬間目の前には大きなカマキリの姿が目に映った。
「なんなのこの魔物は!突然姿を現わしたよ。」
ココがビックリした様子で後方に下がる。
「この魔物がここのボスですわ!姿が見えれば戦えます。」
「レイナ様気お付けて下さい。相手の手の内が分かるまで慎重に行きましょう!」
魔物を鑑定すると、【ジャイアントマンティス】の表示が出た。
体高は7メートル位あり、全体が薄いピンク色をしており腹部が膨らんでいてカマキリ其の物だ。
カマの様な前足の攻撃がとても脅威に感じる。
「ロキ!少し揺さぶりを掛けてみてくれ!」
ロキに指示を出すと、ロキは素早い動きで魔物の回りを移動するが、信じられない程魔物もロキの動きに反応してしている。
「予想以上に素早く動きます。前足によるカマに攻撃に注意しながら距離を保って下さい。」
安全策は距離を取る攻撃しかないと判断した。
ロキの動きが止まると、すぐさまこちらに攻撃を仕掛けてくる。
手足は思った以上に遠くまで伸びて来る。
俺が魔法を放つ為少しでも近づき攻撃の素振りを見せると、前足の連続攻撃が容赦なく繰り出される。
一回でも当たれば大怪我をするか、最悪は致命傷になりかねない。
「これはうかつには近づけませんわ!」
レイナが俺の前で防御をしてくれる。
ロキに加えてクロとシロも、注意を引き付ける為に左右から揺さぶりを掛けるが、全ての方向に首が自由に動いて対応している。
子供の時はよくカマキリを捕まえて遊んでいたな~そんな思い出があるカマキリの変わり果てた姿が今、目の前にあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます