第47話 決着
我々【黄金の大地】パーティーは今、ダンセット遺跡の地下1階の大部屋で階層主と思われるジャイアントマンティスと対峙している。
前足による連続攻撃は、当たらなくても風圧で切り裂かれる。
幸いにも誰1人直撃は受けていないが、消耗が激しい。
「皆退却!」
全員に部屋の入り口まで戻るように指示を出した。
「コウ!どうしたの?」
「このままではラチがあきませんし、分が悪いです。」
「先ずは体制を立て直します。皆の小さな怪我が致命傷になるかもしれませんので、回復をして下さい。」
「ココはクロとシロの手当を、シノにはロキの手当を頼む!」
アイテムバックから手持ちのポーションを渡す。
「私は回復魔法でテレサさんとコウ様の手当を致しますわ。」
「大丈夫でしょうか?ここまで魔物が襲ってきたりしませんか?」
テレサが心配している。
「あの魔物は、近づいてきたら敵と思い攻撃しますが、自らは攻撃しないようです。」
「アッ!姿が消えたよ!」
ココが今まで見えていた魔物の姿が消えて驚いている。
「消えたわけではなく、周りの色に同化して消えたように見えるだけの様ですわ!」
「気付かず油断したまま近づいたら不意打ちで仕留めるんだろうな。」
レイナと俺が状況を分析しながら対策を考える。
「やはりここはコウ様の魔法攻撃しかありませんわ。」
「でも魔法攻撃の範囲まで近づく前に、手足の攻撃がきます。あの速さは私でも避けれませんでした。」
テレサが言う通りで、辛うじてロキが反応できたお陰でテレサは助かっている。
「全方向に首が回って死角が見当たらないよ!」
ココと従魔達の攻撃にも素早く対応するジャイアントマンティス!
「敵は魔法攻撃を警戒するはずで、先ほどの戦闘で魔法を使う物を狙ってくると思いますので、俺がおとりになり注意を引き付けますのでその隙に倒しましょう。」
全員に作戦を伝え、再度戦いに挑む。
レイナの盾に守られながら魔物の攻撃範囲手前まで近づき、ファイヤーボールを放つ。
距離があるため威力は無いが、透明色がピンク色に変わりジャイアントマンティスの姿が目視できる。
このまま距離を縮めれば俺を集中して攻撃してくるはずだ。
「レイナ様~行きますよ!」
「はい~お任せを!」
レイナが盾を構えて前に出る。
その後ろからいつでも魔法が放てる状態で続く。
敵も俺達の動きを把握しているようで、直ぐには攻撃せず魔法の放つ瞬間を狙っている様子だ。
沈黙の時間が長く感じられる。
魔物から視線をそらさず、レイナの横から魔法を放つ素振りをした瞬間に、前足の攻撃がこちらをめがけてくると同時に左からロキとテレサ、右からクロ・シロとココがジャイアントマンティスの足を攻撃する。
魔法を放つ前に前足の攻撃が来たので、レイナが盾で防いだが盾ごと俺と一緒に吹き飛んだ。
左右同時攻撃の2本脚を攻撃したが、防御力が高く切り裂く所まではいかず、すぐさま左右に前足によるカマの攻撃が全員を襲う。
パーティー全員の怯んだ姿を真上から勝ち誇った様子で見ているジャイアントマンティスが、急に悲鳴を上げた。
ジャイアントマンティスは後ろを振り向いて前足の攻撃をするも、後ろ姿は縦てに大きく裂けており
攻撃力が前足に伝わらない。
「今がチャンス!止めを刺してくれ!」
レイナと一緒に吹き飛ばされた状態で、力を振り絞って叫んだ。
俺の言葉に反応して、ロキが首元に噛みついて、クロとシロも頭に飛びかかった。
たぶん力は残ってないようで、そのまま横に倒れた所をテレサとココが心臓目掛けて切りつけた。
断末魔の声が聞こえてジャイアントマンティスは息絶えた。
「コウ様お怪我はありませんか?」
レイナが体を摺り寄せ確認してくる。
「レイナ様こそ大丈夫ですか?俺の為に~有難うございます。」
「当然の事をしたまでですわ~コウ様をお守りするのが私の務めですの。」
「レイナ様、皆の所に行きましょう!」
レイナはまだこのまま居たそうだが、レイナの手を取り移動した。
「コウ!ジャイアントマンティスから魔石を回収したよ!」
ココから魔石を受け取りアイテムバックにしまう。
「皆さん凄いですよ!だぶん1階層のボスだと思いますので、地下2階へ行く階段があるはずです。」
「それが~階段が見当たらないです。」
テレサが一通り部屋をみて回ったらしい。
「宝箱が2個あったよ!」
ココが見つけた宝箱をテレサが開錠して回る。
ジャイアントマンティスを倒したこの広い部屋は、さっきまで死闘を繰り広げていたとは信じられない程静かになっている。
レイナがシノの姿を見つけて、手を握りお礼を述べる。
「シノさん~有難うございます。」
宝箱を開けて戻って来たテレサとココもシノに抱きつきお礼を述べる。
「ホント!シノさんのお陰だよ!」
「シノさんの攻撃が無かったら、私達は全滅してたと思います。」
皆にお礼を言われて思いっきり照れている。
「コウ様の作戦が良かったのだ思います。」
シノは照れながら小さな声で話す。
「そうですわ!コウ様の作戦が見事に成功しましたわ!さすがわ私のコウ様ですわ!!」
「うんうん、コウの作戦が上手く行ったね!」
「背後に回るシノさんが気付かれない様に、全員がおとりになる作戦を考えたコウさんは凄いです。」
「魔法剣の威力は凄いですわ!私達の力では歯が立たなかったと思いますわ!」
魔法剣に見せかけた攻撃は、皆が討伐出来るように上手く加減が出来たようだ。
実際のシノの実力から見れば、おとりが無くても気付かずに背後に回れるし、1人で簡単に倒せるのにわざわざ俺らに花を持たせるとは!
シノの態度は、俺が目立つ行動を控えている意味を十分に理解しているようで頼もしい存在だ。
俺はシノの照れて困っている姿を見つめていると、視線に気付いたのかこちらを見てほほ笑んだ。
女性陣が喜んでいる輪に、申し訳なさそうに男の俺が声を掛ける。
「今日の探索は終了して、一旦ギルド出張所に戻りましょう!」
「そうですね~地下への階段はありませんでしたし、地下1階層の迷宮という事ですね。」
テレサ自身が壁を調べて見つからないのら、現時点ではこの先には進めない。
「帰りも気を抜かずに戻ろう!私達が先頭をいくから付いて来てね!」
ココが従魔達を連れて出発する。
シノが念話で話しかけてくる。
「地下2階への階段はよろしいのでしょうか?」
「テレサが見つけられないのなら、まだ条件が揃っていないという事だ。」
シノは地下2階に続く隠し扉に気付いている様子だが、我々のパーティーの戦力では無理という事だろうと俺は理解している。
「申し訳ありません。ご主人様に意見を申し上げまして。」
「気にすることはない、シノの助言は俺を助けているからな、これからも頼むよ!」
シノとの念話が済むと同時に、レイナが俺の側にきて耳打ちする。
「シノさんとヤケに親密な表情をしていたけど、何かあったの?」
「そんな事は無いですよ!みんな無事でよかったなと考えていた所です。」
「ふぅん~」
「さあさあレイナ様行きましょう!」
ココを先頭に、テレサ・レイナと俺が続き、シノが最後尾で帰途についた。
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