第45話 地下迷宮1階編③
ここはダンセット遺跡の地下迷宮1階にある大広場につながる通路の手間で、我々は予想もしていなかった状況を認識するために話し合いをしている。
「作戦を考えました。」
皆に作戦内容を説明する為、アイテムバックから粉袋を取り出した。
「その粉はなに?」
ココが不思議そうに尋ねる。
「マタンゴの胞子です。」
「胞子を出すマタンゴを解体する時に取り出していた物です。」
「コウ様はその粉を集めて何をしようとしていたのですか?」
レイナが胞子の粉が入っている袋を手にしながら尋ねる。
「何か薬の材料になるのではと考えていたんです。」
「コウさんは研究熱心ですね。」
テレサが優しい言葉を掛けてくれる。
「それでその粉を使ってどうするつもり。」
ココの疑問に答える。
「この粉は幻覚を見せます。もしかしたら同士討ちや状態異常を起こして落ちてくるかもしれませんので、広場の天井に向かって粉をまきます。この粉を吸い込んだドラゴンバットが天井から落ちてくれば、皆で退治できます。」
「数が多いんで、全部のドラゴンバットが落ちて来るとは限らないんでは?」
レイナが心配そうに尋ねるので、そのあとの対策を話す。
「レイナ様が言う通り、全部が落ちて来る事は無いでしょう!その場合は、残りのドラコンバットを魔法攻撃で撃ち落とします。」
「ある程度数が少なくなれば魔法で対処できるので、やってみる価値はあるはずです。」
テレサが不安な表情をしている。
「数が多くて魔法で対処できないと判断したら、攻撃は中止してこの通路に退却します。」
「この通路にドラゴンバットが一斉に飛んできたら危ないのではありませんか?」
テレサが周りを確認しながら話す。
「この通路は天井が低く狭いので、一度に沢山のドラゴンバットが飛んでこれませんし、剣で叩き落とせますわ!」
レイナも回りを確認しながら、問題はありませんと示す。
「コウの作戦を早くやってみようよ!」
ココが従魔達を撫でながら、ワクワクしている。
レイナの回復魔法で、皆の状態を完全回復してから作戦を実行する。
広場の中にマタンゴの胞子をばらまいて、ドラゴンバットの行動を確認する。
胞子はまんべんなく天井を覆いつくしていた。
時間が立つと何匹かドラゴンハットが天井から落ちてきた。
「コウ様、胞子による攻撃が効いていますわ。」
「レイナ様まだ危険です、胞子の霧が消えてから攻撃します。」
皆が焦るのを留める。
胞子の効果が効いているみたいで、地面に落ちたドラゴンバットとムチャクチヤに飛び回るドラゴンバットで広場は大混乱していて収集がつかない動きだ。
「コウさん、今が攻撃のチャンスでは?」
テレサも早く攻撃したい様子だ。
「モチベーションも大事ですね。」
胞子の霧はまだ消えては無いが、広場の様子を見ながら仕掛けるタイミングを計る。
「そろそろ行きましょう!上空のドラゴンバットは俺の魔法で落としますので、落ちているドラゴンバットを皆で仕留めて下さい。」
ココと従魔が左周り、テレサが右周りでレイナと俺が正面から広場に入った。
面白いようにドラゴンバットが地面で羽をバタバタしながらもがいている。
落ちているドラゴンバットを仕留めていると、天井から落ちなかったドラゴンバットがレイナめがけて飛んでくるのが目に入った。
「レイナ様!上から来ます!」
俺の声に反応して盾で攻撃を防いだが、天井に残ったいたドラゴンバットが一斉にレイナめがけて飛んで来るのと同時に、炎と電撃が放たれる感じが頭をよぎった。
俺はとっさにファイヤーボールを天井に集まっているドラゴンバットめがけて放った。
一瞬の出来事で、何が起こったのかわからなかった。
ドッカーンと大きな爆発音と共に、爆風の衝撃波が全方位に放たれた。
声も出せず、そのまま壁に叩きつけれらた・・・はずだが?
俺の体は爆風で飛ばされ壁に張り付いているが・・・痛くない。
そして目の前にはシノの顔が見える。
「ご主人様!お怪我はありませんか?」
爆風で飛んでいく俺の体を掴み、自分の体を盾にして衝撃波から守っていた。
「シノ!身を挺して助けてくれたのか?」
シノは頷きニコリとほほ笑む。
「有難う!俺は大丈夫だ。それよりシノは大丈夫なのか?」
「問題ありません!直撃を受けても大丈夫です。」
シノの体は規格外みたいだ。
あの一瞬で、飛ばされる俺を蜘蛛の糸で包み、体を大きく伸ばした背中で衝撃波を防いでいる。
そんな状況なのにシノの笑顔につい見とれてしまったが、皆は大丈夫だろうか?
「シノ!皆はどうなっている?」
シノはすぐに元の姿に戻り、巻き付いていた糸は消えて自由に動けるようになった。
「皆さん壁側の下で倒れています。」
すぐ近くに倒れているレイナを見つけ、声を掛けるが返事がない。
辺りを見渡すと、テレサとココそして従魔達も壁側の下に倒れている。
天井にいたドラゴンバットは全て吹き飛んだ様で、一匹も見当たらない。
当然中心部にいたエントも燃え尽きて灰になっている。
俺とシノは、全員を一ヶ所に運んで意識が戻るのを待った。
従魔の2匹は直ぐに意識を取り戻し、主人であるココの側に寄り添う。
「良かった!気絶しているだけで怪我は無いみたいだ!」
内臓の損傷は分らないが、ポーションを飲めば治癒するので意識さえ戻れば安心だ!
皆の意識が戻るまで何が起こったのか考えていると、奥にある左右の通路からガサガサと音がコダマして聞こえてきた。
「この音は、聞き覚えがあるぞ!」
「ご主人様!ジャイアントアントが広場に向かってきます。」
まだ皆の意識が戻らない。
「シノは左の通路からくるジャイアントアントを、始末してきてくれ。」
シノに指示を出し、ロキを呼び出す。
影から出て来たロキに、右の通路から来るジャイアントアントを始末するように指示する。
シノは直ぐに奥の通路に消えて、ロキはココの従魔であるクロとシロの側に行くと、2匹の従魔は直ぐに立ち上がりロキの後についていった。
従魔同士、主人を助ける行動である事を理解しているようだ。
万が一に魔物が現れたら、皆を守れるのは俺しかいない。
緊張した面立ちでいると、シノが戻ってきた。
「シノ!魔物の様子は?」
「ご主人様!魔物は全て倒しました。通路の奥は行き止まりで、他に魔物はいません。」
「そうか!シノ助かったよ!」
シノの報告を受け終わると、今度はロキが一緒に行動したクロとシロと共に戻ってきた。
ロキは俺の側にきて座り、俺の顔を見つめる。
「魔物を全て始末したようだな!ご苦労さん、クロもシロも有難う。」
シノにロキが退治した通路の奥を確認するよう指示を出し、ロキと従魔2匹の頭を優しく撫でて労った。
従魔2匹が主人の側に座ると、シロがココの顔を舐め始めた。
ロキはテレサの側に座り同じく顔を舐める。
最初に目を覚ましたのはココで、次にテレサが目を覚ました。
「2人共大丈夫ですか?」
「コウ・・・何が起こったの!」
「爆発したと思ったら吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてから記憶がありません。」
2人共、意識が戻って来たみたいだ。
「レイナさんは!」
テレサが辺りを見ながら、レイナが寝ている姿を見つける。
「レイナさんは無事ですか?」
「爆風の際に、兜による衝撃で脳震とうを起こしているかもしれません。」
「兜を外してもかまいませんか?」
「そうですね、楽になるかもしれませんね。」
テレサが心配そうな表情で、ゆっくりと兜をはずす。
兜を外したレイナは、ドキッとするほど綺麗な顔立ちで目をつぶっている。
「まだ気絶しているようですね。」
テレサはホットした様子で、レイナの髪を撫でている。
「さっきの爆発で、魔物は全滅したのかな?」
ココが従魔達から舐められながらきいてくる。
「すべて燃えた様で、一匹もいなくなった。」
「ふぅん~ところでコウ!・・・さっきの爆発の事を説明してくれるよね!」
ココの目が怖い!
俺は天井を見上げて、どうしてこのような状態になったか必死で考えていた。
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