第44話 地下迷宮1階編②
初めての地下迷宮探索の実践を経験した、Eランクパーティー【黄金の大地】は順調に探索を進めた。
とりわけ従魔達の嗅覚のお陰で隠し扉の発見と、テレサの罠の回避能力のお陰で地下1階の地図は確実に出来上がっていた。
「テレサさんのお陰で、隠し扉の宝箱が結構見つかったね!」
「ココさんの従魔達が、異変を嗅ぎ分けるのでこちらこそ助かります。」
「先程の小部屋にいましたマタンゴですが、最初のマタンゴと外見は似ていましたが、攻撃武器が違っていたので別種類の魔物ですか?」
レイナが先程の戦闘を振り返って尋ねてきた。
最初のマタンゴは、胞子による攻撃だったが、先程のマタンゴは槍の様な武器で攻撃してきた。
「姿は同じでも攻撃力・防御力も最初のマタンゴとは比べ物にならない程、高かった様に感じました。」
「でも接近戦だと、レイナ様に頼ってしまって申し訳ないです。」
「とんでもないですわ。クルセイダーとして当然の事ですし、コウ様は薬師で私達のリーダーです。お守りするのは当たり前です。」
レイナは嬉しそうに話す。
「シノさんが小部屋の入り口で退路を確保してくれるので、後ろを気にしないで戦えるのは安心ですね。」
テレサの言葉にココが気になる事を話す。
「シノさんが後ろにいてくれるのは安心できるけど、部屋を出るとシノさんの回りに毎回巨大コウモリの死骸が落ちているのが気になるのよね。」
「シノさんのレベルは私達より遥かに高いので、実際に戦闘しないと正確な検証は出来ませんわ。」
レイナの言葉に、シノは困った表情を浮かべていた。
「そうですね、この先の事を考えて空中戦の戦い方も経験しておいて損はないですね。」
空中戦だと、魔法攻撃か遠距離攻撃ができるメンバーが必要になる。
「魔法攻撃以外では、テレサさんのスリングショットしか攻撃武器がありませんが、当てるのが難しいと思います。」
「コウさんが言われるように、飛び回る物体は無理です。」
テレサが申し訳なさそうにしている。
「攻撃はコウ様とシノさんの魔法に頼るしかないですけど、防御方法を習得しておけば役に立つかと思いますわ。」
「レイナ様の言う通りです。防御が出来れば怪我もせずに逃げられます。」
「コウ!逃げるより倒す方法を考えてね。」
ココが怒った表情からすぐに笑い出した。
先頭を行くシロが魔物の気配を感じたのか唸り声を出す。
「前方の広場にエントが3体いるよ!」
ココが従魔達と一緒に攻撃態勢に入る。
エントが居る位置は回廊の交わる箇所で、広場の中心に3体いる。
円形状の広場は天井が高く、エントがいる後側の壁には幾つかの扉が目に映った。
後方にいる俺は近場にランタンを設置し、状況を確認してから皆に指示を出す。
「エントの動きは遅いので、伸びて来る枝に気お付けて1体づづ倒していきましょう、」
従魔達とココに続いてテレサも、静かに広場の中に足を踏み入れた。
レイナが盾で俺を守るようにゆっくりと進む。
エントがいる上空から羽ばたく音が聞こえて来た。
「コウ様!巨大コウモリです!」
勢いよく突っ込んでくる巨大コウモリを盾で防ぎながら剣で攻撃するが、当たることは無かった。
エントを攻撃していたココとテレサも、巨大コウモリの襲撃で退却してきた。
一旦広場から通路に戻り、体勢を立て直す。
「皆、怪我はありませんか?」
「テレサさん!足を怪我していますわ!」
テレサの怪我に気付いたレイナは、魔法で傷を治す。
「レイナ様、ありがとうございます。」
テレサは嬉しそうにお礼を述べる。
巨大コウモリを鑑定で調べる。
「【ドラゴンバット】!」
つい声が出てしまった。
「ドラゴンバット!あの巨大コウモリの正体はドラゴンバットですか?」
レイナが驚きの声を出した。
「コウ様!巨大コウモリがドラゴンバットであれば、この状況はとても危険です。」
「レイナ様はドラゴンバットをご存知ですか?」
「遭遇するのは初めてですが、グラッサ迷宮都市にあるダルリア第2迷宮では、ドラゴンバットによる襲撃で幾つものパーティーが全滅したと教会で聞きました。」
レイナの報告で皆の表情が強張っている。
「ダルリア第2迷宮と言えば初級用迷宮ですが、確かDランク以上のパーティーしか入れない場所ですよね。」
テレサの声が震えているようだ。
「体当たりの攻撃だけでDランクのパーティーが全滅するのは考えにくいですね。」
俺は他に攻撃武器があると考えている。
「コウ様が言われるように他に攻撃武器があるのかもしれませんわ。」
「他にどんな武器を持っているのか、確認しないとこのまま戦うのは危険ですね。」
広場の様子を見に行ってたココが、慌てて戻って来た。
「大変だよ!広場の天井に何十匹もコウモリがぶら下がっているよ。」
テレサがドンドン不安になってきている。
「シノさんに聞いてみようよ。」
突然ココがシノを見て声を出した。
「シノさんは何回もドラゴンバットを退治していましたよネ!」
ココの発言に、皆我に戻ったように相槌を打った。
「そうですわ!先ほどからドラゴンバットを退治しているシノさんならご存知では?」
レイナの言葉に、シノはまた俺の後ろに隠れる。
「シノさん、私達の命が掛かっています。どんな攻撃を持っていたか教えて下さい。」
レイナの強い口調に、恐る恐る小さな声で話し出した。
「赤い角が有るのは火を噴きます。青い角が有るのは雷撃を放ちます。」
シノは話すとまた俺の後ろに隠れた。
「凄いわシノさん!炎と雷撃の攻撃を受けながら、ドラゴンバットを退治するなんて!」
実際は攻撃される前に叩き落していた様子だが、バレるとマズいので魔法剣で切り落とした事にしておこう。
「魔法剣士の威力は強力ですからね、遠方攻撃も問題ないようです。」
皆がシノを見つめて頷いている。
「上空から炎や雷撃が一斉に降って来ると、高ランクの冒険者もひとたまりもないなですわ!」
レイナの言う通りだ。
このまま知らずにエントと戦っていたら、いきなり上空から攻撃されるところだった。
「シノさん・・・お願いがあります。」
テレサがシノの手を握りながら見つめる。
「私達にはまだ魔法耐性のレベルが低く、防御魔法もありません。現状ではドラゴンバットの討伐は荷が重すぎます。いつかは自分たちで討伐しないといけませんが、今回はシノさんの力を貸して下さい。」
テレサの目が潤んでいる。
「テレサさん、シノもパーティーの一員です。テレサさんが言わなくてもパーティーの為に戦っていますよ。」
シノの実力がバレない様に、皆の目があるときはセーブするように言っていたのでテレサには手を抜いているように見えていたんだろう。
シノさんのレベルは誰が見ても高レベルのはずなのに、あえて自分たちと同じレベルでいるのは好きな人と同じでいたいという気持ちの表れだとレイナは勝手に思い込んでいた。
「すみませんシノさん!気お悪くしたら謝ります。気持ちを切り替えて私も頑張ります。」
テレサの言葉で沈んでいた皆の気持ちが蘇ってきた。
一歩間違えば、皆が危険な目に合う可能性が高い。
ここは出し惜しみしている場合ではないな!
現在のパーティーの戦力を分析して、安全にかつ効率よく戦える方法を考えなければいけない。
目をつぶり、頭の中で暫く考える。
「この作戦で行きましょう!」
このパーティーの有効な戦い方で、地下迷宮の探索を遂行して見せよう。
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