第41話 ギルド出張所

 ギルドの片隅で、笑いながら話をしている男1人に3人の女達。

 他の冒険者からも挨拶を受ける彼らが、Eランクパーティー【黄金の大地】である。


「さすがにEランクになれば、周りの冒険者からは一目置かれるようになったわね!」

 冒険者のパーティーに組んでほしいと頼んでも、断られたのが嘘のようだ!

 ココが嬉しそうに話す。

「Fランクは初心者、Eランクからが本当の冒険者ですわ!」

 兜で表情は解らないが、ドヤ顔のレイナ嬢が目に浮かぶ。

「Fランクでは制限が多かったですけど、Eランクになれば色んな場所を探索できますね。」

 テレサはご機嫌が良いようだ。

「では、遺跡の地下探索に出発しましょう!」

 エリスに報告してから、ダンセット遺跡のギルド出張所に向かった。


 セシール村からダンセット遺跡の手前に出来たギルド出張所まで徒歩で歩く。

 今までは結構時間が掛かっていたが、馬車での移動も問題ないぐらい街道が整備されている。

 思ったよりも早く到着した。

 以前休憩場所にしていた広場の中心に、ギルドの出張所が建っている。

 その近くには、まだ建設中の建物が2ヶ所あり職人達が作業をしている。

 広場全体は木材の外壁で囲まれており、セシール村方面とダンセット遺跡方面に門が造られている。

 セシール村方面の門は、簡易な門で通行が自由に出来るような造りだが、ダンセット遺跡方面の門は木材だが扉も取り付けられ頑丈な造りで出来ており、門の上部には見張り台もある。

「冒険者にはもってこいの拠点だな!」

 俺は新しく出来た場所の確認をした。

「広場には野営が出来るテントがあるよ!」

 ココがクロとシロを遊ばせながらはしゃいでる。

「思った以上に広いですね、こんなにテントを張る意味があるのですか?」

 テレサも辺りを見渡しながら尋ねる。

「迷宮化した事で、魔物が出てきて被害が出るのを防ぐのが目的でしょう!その為に討伐出来る冒険者を常駐させる必要があるための拠点作りでしょう。」

 さすがはレイナだ!ギルドの考えを理解している。

「レイナ様の言う通りかな!取り敢えずギルドの受付に挨拶に行こう!」


 ギルド出張所に入ると、何組かの冒険者達がいる。

 先ずは受け付けを済ませよう!カウンターで片付けをしている女性に声を掛ける。

「ようこそダンセット出張所に!御用はなんですか?」

 いかにも新人らしい受付嬢が対応してくれる。

「【黄金の大地】のパーティーで、リーダーのコウといいます。」

「アッ!エリスさんからお噂は聞いています。今日から出張所の受付担当になりましたギルド職員のサランといいます。」

「サランさんよろしくお願いします。ところでエリスさんからはどんな噂を聞いていますか?とても気になりますが!」

「はい、とても有望な冒険者だと聞いています。あと年齢の割には大人びていて、何か影があり女たらしだから気お付けるようにと言われました。」

「まだあります!」

「まだあるんかい!」

「はい、コウさんはとても優しく、困った人を見過ごせない責任感のある冒険者だとも言っていましたよ。」

 エリスには何かプレゼントをしよう!


「これはコウ殿!お待ちしていましたぞ。」

 受付でサランの話を聞いていると、後ろから声を掛けられた。

 聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはギルドで世話役係で雇われていたロイドさんが立っていた。

「ロイドさん!お久しぶりです、ここで何をされているんですか?」

「うむ!トーマス殿から頼まれて、出張所の責任者をしている。」

「そうですか!ロイドさんが、責任者であれば冒険者達も心強いですよ。」

「冒険者を引退したとはいえ、こうして皆の役に立てる仕事はやりがいがあるものじゃの~」

 ロイドは顎に手をやりながら、嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「ロイドさん、ギルドの出張所としては拠点の規模が大きくありませんか?」

「そうじゃの~初心者の育成が中心のセシール支店には、冒険者の危険度が高い地下迷宮は無かったんじゃが、コウ殿が遺跡の地下迷宮を発見したお陰で危険度が高くなった。」

「それは申し訳ありません。」

「いやいや、コウ殿には感謝しているんじゃ!」

「地下迷宮の難易度はこれから調査することになるが、地下迷宮の存在が冒険者を集める事に繋がり冒険者相手の商売をする商人がやってくる事で、セシール村全体が豊かになる。」

「その一方で、地下迷宮から溢れ出す魔物に注意が必要になる。」

「溢れ出た魔物に村人達が襲われるという事ですね。」

「その通りじゃ!故に定期的に迷宮の魔物を討伐しないと、いつスタンピートが発生するかもしれないからじゃ!」

「スタンピートとは何ですか?」

「簡単に説明すると、地下迷宮で発生した魔物が増えすぎると何らかの刺激を受ける事で一斉に地上に出て来て、同じ方向に手当たり次第に走り出す現象をスタンピートと言うんじゃ!」

「スタンピートが起こらない様に定期的に迷宮の魔物を討伐するする必要があるんじゃが、セシール村には今まで迷宮が無かったから新人の冒険者でも問題は無かったが、これからはチト面倒になるかの~」

 ロイドは顎に手をやり、話の内容は大変そうだが表情はイキイキしているように見える。

「この拠点はとても重要になりますね!その割にはロイドさんは何だか嬉しそうですね!」

「老いぼれても元冒険者じゃ!迷宮と言えば血が騒ぐからの~」

「それに今まで以上に冒険者がやって来るからの~皆の冒険談が楽しみじゃ!」

「先ずは、コウ殿の冒険談を待っておるぞ!」

 ロイドは嬉しそうに俺を見つめる。

「俺は大したことは無いですが、【黄金の大地】のパーティーの活躍を期待して下さい。」

 他のメンバーを指差し、少し自慢をしてしまった。

「皆の活躍も噂になっておるぞ!そうじゃそうじゃ!忘れる所だったわ、トーマス殿からの伝言を伝えておく。」

 ロイドの言葉に、皆が真剣に聞き入る。

「地上部分は今まで通り探索できるが、地下はコウ殿の探索が済み地図が出来るまで立入禁止だ。」

「エッ!地図を作るんですか?」

「心配はいらない!コウ殿のギルドカードに自動マッピングのスキルを付与しておく。」

「コウ殿が探索した場所は自動的に記録されるから、それを元に迷宮の地図が出来るスキルじゃ!」

「それは便利ですね!他の冒険者が迷子にならない様に、隈なく探索して来ます。」

「頼りにしておるぞ。何階層まであるかわからないが、階層毎に報酬は出るから期待していいぞ!」

「いっぱい宝箱があるといいね!」

 ココが嬉しそうにしている。

「迷宮には、モンスターハウスがあると聞いています。危険ですがレベル上げには最適かと!」

 レイナの気合がいつもと違うのは気のせいかな。

「宝箱の解除はお任せ下さい。」

 テレサもいつもより気合が入っている。

「一気に攻略は考えない様に!ここを拠点に少しづつするように。そのうちに拠点内も設備が充実してきてやり易くなるじゃろう~」

「わかってますよロイドさん。無茶をしないのが俺の取り柄ですから。」

 皆が頷く。

 ロイドとサランをはさんでの話が済むと、全員の気持ちは地下迷宮に向いていた。

「皆さん!いざ地下迷宮の探索に出発しましょう!」

「待ってよコウ!シノさんは?」

 ココが2匹の従魔を従えた時に気がついたようだ。

「シノは、遺跡の入口で待ってるはずだよ!」

「コウさん!もう少しシノさんの事を気に掛けてもバチは当たらないかと思います。」

 テレサの言葉にうろたえる。

「シノさんにも都合があるのではありませんか!」

 レイナの言葉が冷たい。

 毎晩シノと夜を過ごしているので気にしていなかったが、関係がバレるとマズいので気お付けよう!

「シノが待っていると思いますので、早く行きましょう!」

 この場を誤魔化す為、先頭を切って拠点を後にした。

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