第40話 再始動
グレンが率いる【銀狼の牙】のパーティーの指導を引き受けてから、約束の5日間が終了した。
実りある実地訓練で、皆満足そうに笑顔で5日間を振り返り、反省会の雰囲気で話が盛り上がっていた。
ただ、リナとユナは手に握りしめているお肉の塊の袋が気になっている様子だ。
「コウ!特別依頼お疲れさま!」
ココの元気な声が懐かしく聞こえた。
「コウ様、ご無事でなりよりです。」
レイナがテレサとココの後ろからやってきて声をかける。
「5日間の訓練が無事終了しました。これも皆さんのお陰です。」
俺は3人にお礼の言葉を伝えた。
「コウ様がお礼を言われるのはおかしいです。私こそ町の教会で近況報告ができ内心安堵しました。」
「コウ~私もだよ!ティマーになれたお陰で村では鼻が高かったよ!シロとクロは村では大人気で子供達とすごく走り回って大変だったんだ!」
「私もコウさんのパーティーに参加させてもらえて、妹の薬の購入と看病が出来て大変助かりました。」
3人共この5日間を有効に過ごしたみたいで、とても安心した。
3人が俺の側に集まってきたので、皆とあいさつをする事になった。
「今後合同パーティーを組むことがあるかもしれないので、メンバーの紹介をしておこう。」
【黄金の大地】のメンバーと、【銀狼の牙】のメンバーの紹介をした。
パーティー名:【黄金の大地】Fランク
リーダー :コウ 【薬師】 (人間族・16歳・男性) レベル10
:レイナ【クルセイダー】(人間族・16歳・女性) レベル10
:ココ 【ティマー】(猫人族・14歳・女性) レベル10
:テレサ【くノ一】 (人間族・18歳・女性) レベル8
:シノ 【魔法剣士】(人間族・16歳・女性)虚偽 レベル10
パーティー名:【銀狼の牙】Fランク
リーダー :グレン 【戦士】 (人間族・18歳・男性) レベル8
:リナ(姉)【魔法使い】(人間族・12歳・女性) レベル5
:ユナ(妹)【僧侶】 (人間族・12歳・女性) レベル5
:ガルテノ 【盗賊】 (犬人族・15歳・男性) レベル5
:ミエール 【弓使い】 (犬人族・14歳・女性) レベル5
お互いに1人1人紹介したが、シノに関しては全て虚偽申告で申し訳なく思った。
実際の年齢やレベル等については、俺もまったくもって知らないのである。
「レベルが上がってくると、職業に合わせたスキルを取得していくので、この調子で冒険を続けて行けばEランクも近いです。」
「これもコウ殿のお陰だ!レベルが上がると嘘みたいに戦闘がスムーズに行くようになった。」
「それに合わせて報酬金が入るようになって、孤児院の生活も安定して助かっている。」
グレンが自信を持ってくれてひと安心だ!
「コウさん達はダンセット遺跡の探索に行かれるのですか?」
ガルテノが興味津々に尋ねる。
「ダンセット遺跡の地下迷宮探索の許可がギルドから出たので、挑戦するつもりです。」
「僕らのパーティーでは許可は出ないので、コウさんの判断で合同パーティーで問題なさそうなら連れていって下さい。」
「それは構いませんが、まずは武器や防具の見直しから行い、ダンセット遺跡地上部分のゴブリン討伐が出来るようになっていて下さい。」
「ガルテノ!はやる気持ちは解るがコウ殿の足を引っ張らない様に、まずは無難なところからこなしレベルを上がてから声を掛けるべきだ!」
「その時を楽しみにしていますよ!」
その後しばらくは全員で他愛もない会話をしてから、グレン達のパーティーはギルドを後にして帰って行った。
全員の手には、ホワイトボアの特上お肉の包みがしっかりと握りしめられていた。
グレン達が去った後の空いた席に、我々のパーティーメンバーが座った。
ただし、シノとココの従魔達はこの場にはいない。
従魔のクロとシロは、先ほど買い物に行ったお店の繋ぎ場で寝ているようで、シノは同じく俺のアイテムバックの中で睡眠中だ。
シノは数日は寝なくても問題は無いと聞いているが、毎晩俺の護衛を兼ねた夜伽でお疲れの様子だ。
(疲れの原因は俺にあるのか?)
「全員がそろった所で、今後の活動方針を説明しておきます。」
俺はこの5日間の指導の内容と、エリスからのダンセット遺跡の地下探索の許可が出たことを話した。
「ダンセット遺跡の地下探索の許可は、Eランク以上のパーティーと聞いていますが探索は可能なのですか?」
レイナが事前に遺跡の事を調べていたようで、ギルドの出張所が出来たことも知っていた。
「今回受けた指導の依頼を無事達成できたら、【黄金の大地】をEランクに昇級できる約束をしていまして、先程正式にEランクに昇級出来ました。」
Eランクに昇級出来た事がそんなに嬉しいのか、皆が椅子から立ち上がって声を出した。
「コウやったね!遂にEランクになったんだね!」
ココの喜び方がハンパではない。
「Eランクへの昇級条件に護衛の依頼がありましたが、問題はありませんか?」
レイナは、嬉しさ半分とギルドと約束している護衛の件を気にしている。
「ギルドとの約束は、護衛の依頼を無事終えたらEランク昇級だったが、依頼主からFランクのパーティーに難色を示されたので、今回の地下迷宮発見の手柄でEランク昇級にして護衛の依頼を受けさせればと副ギルド長のお達しです。」
エリスから聞いていた、ギルドからの説明を皆に伝えた。
「経緯はどうであれ、Eランクへの昇級は有難いのでここは素直に喜びましょう。」
テレサはEランクへの昇級は、別の意味で喜んでいた。
「Eランクであれば、堂々と迷宮の探索も出来るし、鉱山の探索も出来るよ。」
ココはドヤ顔で話す、
「これをきっかけにDランクも目指しましょう!」
全員の目標が一致したようだ。
「では、迷宮探索に必要な物を準備しましょう!」
武器や防具の見直しと、持ち物の確認を皆で話し合い、情報を共有した。
ある程度話がまとまってきた所で、皆に大事な話をする事にした。
「皆に話しておきたいことがあります。」
神妙な顔つきで言葉にした俺の事を、皆が黙って見つめる。
「自分のレベルが上がったことで、召喚魔が出来ました。」
「召喚魔?」
皆が疑問に思ったようで、シャドウウルフのロキの事を説明した。
「召喚魔は聞いた事が無いですね!」
テレサは首を傾げている。
「テイマーの従魔と同違うのかな?」
ココも召喚魔の事は知らないようだ。
暫く考え込んでいたレイナが説明を始めた。
「教会の図書室にある古い書物に、召喚術の記述があると聞いた事があります。詳しくは知りませんが失われた古代魔法で、現在では使用できる人物はいなく、どんな魔法かもわからないそうです。」
「古代魔法!コウ、古代魔法を覚えたの?」
ココの目がキラキラしているには気のせいか!
「古代魔法かどうかは知らないが、レベルが上がったら勝手に覚えたようなんだ。」
「薬師なのに魔法を覚えるなんて、コウさんは変わっていますね。」
テレサの言葉にドキッとした。
「皆にお願いがあるんだ。」
テーブルの真中に顔を突き出し小声で話し始めると、皆も顔を突き出してきた。
「薬師である俺が、攻撃魔法や召喚術と言われる魔法を使うと、他の冒険者や権力者から目を付けられるかもしれない。そうなると皆と冒険が出来なくなってしまう可能性がある。」
「俺はこのパーティーで上を目指したい。俺には錬金術師という目標があって、目立つような事はしたくないんだ。」
俺の噂が広がって、俺を召喚した奴らに知れ渡ると捕まえに来るかもしれない。
それに、俺以外の召喚者の救出と、元の世界に戻る方法を考えなければならないので時間が必要だ。
「心配しないで下さい。コウ様の魔法や召喚術の事は、誰にも言いません。」
「そうだよ!ココはコウの味方だからね、コウが困る事はしないよ!」
「私もコウさんが困るのは良しとしません。」
「3人共、俺の事を思ってくれてありがとう!」
皆にお礼を述べて、安堵した。
「でもコウ!パーティーで冒険するときは、コウの力を貸してね!」
「もちろん!」
皆で一斉に笑い出し、パーティーの絆が深まった気がした。
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