第39話 報告会

 【銀狼の牙】のパーティーが俺の指導の下、5日間の実践を終えてエミール村に戻ってきた。


「エリスさん、5日間の仕事が無事おわりましたよ!」

 ギルドに戻って一番にエリスに報告した。

「コウさんお疲れ様です。皆さんも無事戻ってこられて良かったです。」

 全員順番にギルドカードを通して、空いてるテーブルに座り込んだ。

「私は何もしていませんよ!ただ傍で見ていただけですよ。」

「そうですか!でも傍にいる安心感だけで出来なかったことが出来るようになり、自信となっていくんですよ!コウさんはそのようなオーラがあるんです。」

「俺が居るだけで周りの人達が、強くなれるわけないじゃないですか?」

 エリスの無茶ぶりにあきれていたが、【銀狼の牙】は確実に強くなった。

 グレンはリーダーとしての自覚は出てきたし、連携も良くなってきた。

 これならこの先、合同パーティーを視野に入れての冒険が可能だ!

「今回の報酬金と、コウさんにお知らせがあります。」

 エリスがカウンターに報奨金を置いてから、笑みを浮かべながら話す。

「ダンセット遺跡にギルドの出張所が完成したわ。」

「完成したんですか?すごいです!」

「これからは遺跡探索が解禁になるけど、約束通りコウさん達のパーティに一番乗りをお願いするわ!」

「約束を覚えていてくれたんですね!」

「副ギルド長からも言われていたけど、最初はとても危険よ!」

「まず、魔物の種類がわからないし、地図もないので苦労しますよ!」

「わかっています。少しでも他の冒険者のお役に立てればと思います。」

「そう言うと思ったわ~副ギルド長からも言われていますので、地下での情報は全てギルドで買い取ります。」

「本当ですか?俄然燃えてきました!」

「そういえば、コウさんは他のメンバーの方と会いましたか?」

「いえまだ会っていません!5日間の休暇で今日ここに戻ってくる予定です。」

「あら、まだ会ってないの?レイナさんにココさんは戻って来てて、テレサさんと一緒に買い物に出かけていますよ。」

「戻って来ているんですか!」

「早速準備して、冒険に出かけます!」

 エリスにお礼を言って、グレン達がいるテーブルに向かった。


「コウ殿、今日までの特別指導有難う!なんとお礼を云えればいいかわからないが、これからもよろしく頼む。」

「グレンさん、合同パーティーを組む時は是非お願いします。」

「手が足らない時はいつでもお手伝させて下さい。」

 ガルテノが嬉しい言葉を掛けてくれる。

「今まで以上にレベルを上げて、魔法で助けてあげるからね!」

 双子のリナが得意げな顔で話す。

「それは嬉しいな~リナとユナの魔法レベルが上がれば、最強のパーティーになれるし、そうなれば俺らのパーティーを助けてくれるのを期待しているよ!」

「私達に任せておいて!」

「まだまだ先の話になるが、これからも努力してゆく。」

 良い顔になったグレンの言葉を聞いて、引き受けて良かったと思った。

「今回の報酬金を渡しておきます。」

 クエスト達成の報酬金に、魔物の解体料を差し引いた分の買取金をテーブルの上に置いた。

「この金額は皆さん5人で分けて下さい。」

「いやそれはダメだ!コウ殿の分も貰ってくれ!」

「私は殆ど戦闘には参加せず、傍らで見ていただけです。それに指導料はギルドから貰いましたので気にしないで下さい。」

「そういう訳にはいかない。コウ殿が傍らにいてくれたから、安心して戦闘に集中でき回りの状況も見る事を出来るようになった。コウ殿のお陰なのでぜひ受け取って頂きたい。」

「そうですよ、私達もコウさんからパーティーでの役割や武器の使い方を教えて貰いました。」

 ガルテノとエミールがグレンに続けて報酬の受け取りを勧める。

「わかりました!お金は受け取れませんが、ホワイトボアのお肉を皆さんで分けましょう!」

「ホワイトボアのお肉!!」

 リナとユナが大きな声を出した。

「ホワイトボアの素材は全てお金になるんですが、お肉だけ売らず貰ってきました。」

 アイテムバックから8袋に分けたお肉の塊を取り出し、テーブルの上に並べた。

 全員の目がテーブルの上に並べられた大きなお肉の塊に釘付けになった。

「本来はお肉も高く売れるのですが、今回は記念として皆で分けて食べましょう!」

「お肉・お肉・お肉が食べれるよ~」

 レナとユナが大喜びしている。

「ホワイトボアの討伐を記念にその場に居合わせた人数分に分けたので、1人1袋でどうかな?」

「コウ殿とシノ殿を合わせても7人だが、あと1人は誰なのか?」

 グレンが人数を数えながら首を傾げている。

「ホワイトボアを倒した仲間がもう1匹いるんですよ!」

 ガルテノが笑いながらお知える。

「もう1匹?あの場にコウ殿のお仲間がいたのですか?・・・気付かなかった!」

「私達も気付かなかったわね~ガルテノとエミールは気付いていたの?」

 レナとユナが不思議な顔をして尋ねる。

「私達は最初から気付いていましたが、コウさんから口止めをされていたので内緒にしていました。」

「私達に何かあった時の保険として連れ来てたと思いますが、取り逃がしたホワイトボアを捕まえたのは彼だと思います。」

 ガルテノとエミールが説明するのを、他の3人は驚いた表情で聞いていた。

「その話し方だと・・・姿は見ていないのか?」

 グレンが2人に訊ねる。

「そうですね~気配だけ感じていて姿は見ていません。」

「でも、今度紹介してくれる約束はしてくれました。」

「そうか!では我々にも紹介してくれ~コウ殿!」

 返事に困って笑いながら、この話から逃げる方法を模索した。

「大ぴらにしないで欲しいんです。俺は薬師で生計を立てるつもりで冒険者になったんですが、あまり目立つことをすると支障が出るので内密にお願いします。」

「コウ殿にも複雑な事情があるようだ!ここは俺達だけの秘密にして誰にも言わないと約束しよう!」

 皆が頷いてくれた。

「有難うございます。まだパーティーの皆にも話していないので、次回機会があれば紹介します。」

「出来るだけ早い内に合同パーティを組んで、一緒に冒険が出来るようになるとしよう!」

「そうですね、早くコウさん達のパーティーに追いつきましょう!」

 皆が盛り上がって、この先の冒険について話が弾んだ。


 ただ、レナとユナはお肉の塊を大事そうに持ち、一刻も早く持って帰りたそうにソワソワしていた。


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