第35話 新たな地下迷宮

 地下からの魔物の大群を阻止して、シノと2人でダンセット遺跡の入口に戻って来た。


「コウ様!ご無事で良かったです。」

 俺達が戻って来るのに時間が掛かった為、レイナが心配していた様子だ。

「コウなら大丈夫だよとレイナさんに言うけど、実際に戻って来るまでソワソワしてたよ!」

 ココが従魔の2匹と戯れながら、レイナの様子を教えてくれる。

「私もコウさんとシノさん2人なら大丈夫だと思っていました。」

 テレサも笑顔で答えてくれた。

「みんなも怪我は大丈夫ですか?」

「私も、テレサさんの傷も回復して問題ありませんわ~」

「はいコウさんのお陰で、いつもより調子が良いと思います。」

「今回の探索で新たな発見ができましたので、今日はギルドに戻って報告します。」

「ダンセット遺跡に地下への入口を発見したとなれば、報酬が沢山もらえるね!」

 ココが嬉しそうに飛び跳ねる。

「迷宮化したおかげで、魔物の出現率が固定化されるので冒険者のレベル上げには役に立ちそうですね。」

 レイナが落ち着いて今日の結果を分析してくれた。

「コウ!早く戻ってご飯を食べようよ!レベルが上がったせいかもしれないけどお腹が空いたよ!」

「ココさん、レベルが上がったのとお腹が空くのは関係ないと思いますが?」

 ココとテレサの会話で、今回の探索でパーティー全体のレベルが上がったと推測した。

 

 セシール村に架かる橋の手前で、ギルドの受付で見た犬人族の2人と偶然出会った。

「こんにちわ!」

 一番にココが声を掛けた。

 犬人族の2人は、我々に向かってあいさつ代わりにお辞儀をした。

「ココ、犬人族の彼らと知り合いなのか?」

「知り合いでは無いよ~ただ~猫人族と犬人族は仲が悪いと思われているけど、祖先は元々同じなんだよ。」

「エッ~ 同じ祖先!」

 テレサもレイナも驚いたが、俺も同じく驚いていた。

「でも同じ冒険者だから、よろしくね!」

 ココと従魔の2匹は犬人族の彼らに近づくと、彼らも笑顔で対応した。

「申し遅れました、犬人族のガルテノとミエールです。」

「パーティーリーダーのコウです。」

「エリスさんからお話は聞いています。冒険者登録したばかりの新人ですので色々教えて下さい。」

 ガルテノが丁寧にあいさつをしてくれる。

 エリスから何を聞いているのか気になったが、シロとクロがなついているようなので悪い感じはしない。

「このウルフは変異種ですね・・・まだ角が生えていない子供ですか?」

 ガルテノがシロとクロの頭を撫でながら感じたことを口にした。

「角が生える?ガルテノさんは変異種のウルフをご存知なのですか?」

「はい、自分達がまだ子供の時に村で飼っていました。」

「白いウルフはコキュートスウルフで黒いウルフはインフェルノウルフと思います。」

 思っても居ないところでシロとクロの種族が分かった。

「頭に角が生えて来ると成人になり、強力な雷撃を放つようになります。」

 ココは目を輝かせながら真剣に話を聞いている。

「コキュウトは治癒能力を持ち水魔法系、インフェルノは高い防御能力を持ち炎魔法系を備えていると聞いています。」

「そうですか~今まで知らなかった事を教えて頂きまして感謝します。」

 2人にお礼を伝えて、改めて観察してみた。

 風貌からみて、男性のガルテノは盗賊系で武器はナイフ、女性のミエールは背中に弓矢を担いでいるから弓使いだな。

  ただ2人とも布袋にスコップをもっている所を見ると、新人冒険者の誰もが通る道をこなしているようだ。 

 その後2人の村の事や、採取した薬草について話をしながらセシール村に戻った。

 村のいつもの門番にあいさつをして、村の設備が増築されてきている雰囲気を感じながらギルドまで戻った。


 ギルドに戻ると、全員疲れた様子で空いてるテーブルを見つけて座り込む。

「コウ!報告よろしく~私達休んでいるから~」

「コウ様、すみませんがよろしくお願いします。」

「報告に時間がかかると思いますので、果実水でも飲んで休んでいて下さい。」

「一息ついたらギルドカードの更新を済ませておいて下さい。」

 俺はガルテノと一緒にエリスがいる受付カウンターに並んだ。


 順番が回ってきて先にガルテノがクエストの報告と、採取した薬草を布袋から取り出しカウンターに並べた。

「ガルテノさんお疲れ様です。順調にクエストをこなしていますね。」

「エリスさんの言う通りが一番の近道だと思っていますので!」

 エリスの言葉を信じての行動だろう、すなおで真面目な性格だな。

「これが報酬の金額です。」

 ガルテノはお金をポケットに入れると、一旦俺の方を向きエリスに訊ねた。

「コウさん達にようになるにはどうすればよいですか?」

 驚いている俺の顔を見てエリスが涼しい表情で答える。

「コウさんに教わりなさい。」

「エリスさん!なんて無責任なことを言うんですか!!」

 エレスの無茶振りの発言に、つい大きな声を出した。

「あら、間違っては無いと思うけど?」

「まだFランクの新人冒険者ですよ!俺よりレベルの高い冒険者がたくさんいるでしょう!」

「あらまあ~謙遜しちゃって!」

「ガルテノさん~確かにレベルの高い冒険者はたくさんいるけど、その人達のやり方が貴方達の考え方に合っているかが問題よ!」

「僕達の考え方?」

「高レベルの冒険者の中には、自分の事しか考えない無茶なやり方でランクを上げている人達もいるわ!そのやり方が悪いとは私達ギルド職員からは言えないけど、私は仲間の安全を第一に考えて行動できる冒険者がガルテノさんには合っていると思うの。その見本がコウさんが率いる【黄金の大地】パーティーよ。」

 エリスの言葉を聞いていて恥ずかしくなった。

「わかりました。コウさん是非今度一緒にお願いします。」

 エリスが力説した手前、断れなくなってしまった。

「はっはっはっ~一緒に頑張りましょう!」

 成り行き上仕方がない、エリスにはめられた感じだ。

 ガルデノはそのままミエールの元に戻り、今の会話を伝えているだろう。

 俺は、エリスを睨み付けた。

「あら、私は本当の事を伝えただけですよ。」

「後の行動は本人達しだいです。それよりコウさん達の報告をまっていたんですよ!」

 なんか誤魔化されたようだが、こちらも大事な報告があるんで気持ちを切り替えた。

「ダンセット遺跡の地下階段を発見しました。」

「エッ~!!」

 エリスがビックリして大声を出したが、すぐに自分の手で口を塞いだ。

「コウさん、2階の副ギルド室まで来てください!」

 エリスの案内された通りに、2階の副ギルド室部屋に入った。

「失礼します。【黄金の大地】のパーティーがダンセット遺跡で地下への入口を発見しました。」

 エリスの報告に副ギルド長のトーマスは驚いた様子で椅子から立ち上がった。

「それは本当か?」

「こちらにいるコウさんから報告をしてもらいます。」

 トーマスと向かい合わせにソファーに座り、ダンセット遺跡の地下階段を発見した経緯を話した。

「推測はしていたが、本当にあるとなると凄いことだ!」

 トーマスは少し興奮している様子で、エリスにギルド本部への連絡を指示していた。

「ギルド本部から指示が来るまで、ダンセット遺跡は立入禁止とする。」

「エッ!地下への探索はできないんですか?」

「近い内に遺跡の入口に門を築き、魔物が出て来るのを監視するギルド職員を配置する。」

「地下の魔物の報告を受けて規制内容は変えるつもりだが、今のところは単独は禁止、レベルはEランク以上のパーティーかそれに準じるレベルと判断した場合のみとする。」

「規制をかけるのはレベルの低い冒険者の安全を考えての事だ。無論コウ殿には地下への探索はお願いするつもりだから、Fランクであっても問題はない。」

 副ギルド長からのお墨付をもらったので、安心して地下への探索ができる。

「今まで誰も見つけられなかった地下への階段を発見したんだから、コウ殿には優先して探索を行う権利がある。」

「発見の報告が広まれば、冒険者達がお宝目当てに大勢集まるだろう!」

 トーマスが何を言いたいのかは、何となくわかっていた。

「コウ殿!今回の報告に対して報酬を出します。」

「ありがとうございます。みんなも喜びます。」

 トーマスにお辞儀をして、エリスと共に部屋を退出した。


 2階の廊下から下の広場を見下ろし、冒険者達の姿を目で追う。

 エリスからもお礼の言葉をもらい、みんなの役に立てたのが嬉しく感じられていた。


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