第36話 人助け
ダンセット遺跡の地下への入り口を発見し、副ギルド長に報告を済ませた。
「コウさんには驚かせられました。本当に地下への入り口を見つけるなんて、凄い事ですよ。」
「副ギルド長が言われました報奨金です。」
エリスが、今回の討伐の金額と報奨金を合わせた金額をカウンタに置いた。
「エリスさん!計算間違いをしていませんか?」
カウンタには金貨が100枚置かれた状態に、驚きを隠せなかった。
「コウさん達はダンセット遺跡の地下への一番乗りの権利があります。」
「ただ、ダンセット遺跡には監視小屋が出来るまで、冒険者の立ち入りを禁止します。」
「解除の報告は一番にコウさんにお知らせします。」
「わかりました。地下探索への準備をしておきます。」
エリスからの説明後、それまで何をすればいいかを考えなければいけない。
「コウさん~私からのお願いがあるんですが~」
エリスからの甘い言葉に、いやな予感がしていた。
金貨を受け取り直ぐにカウンターから逃げようとしたが、腕を掴まれエリスの顔がすぐ近くまでの距離に引き寄せられた。
女性の好い匂いにする中で、エリスが小声で話す。
「冒険者の指導をお願いしたいの~」
「ちょっと待って下さい!俺はFランクの新人冒険者ですよ。人に指導出来る程の実績や経験がありません!」
「謙遜しなくてもいいじゃない|これまでの実績で問題はないと思うけど!」
「これは副キルド長からの指示でもあり、Eランクに確実に上がれるチャンスじゃないかしら~」
甘い言葉に、心が動いてしまった。
あまり目立つことはしたくないけど、パーティーとしてはランク上げは喉から手がでるほど欲しい。
「内容によりますけど?」
「あら、コウさんに取っては簡単なことよ。」
「【銀狼の牙】のパーティーと犬人族の2人をまとめて指導して欲しいの!」
聞き覚えのある2組の名前に、興味が湧いてしまった。
「2組共真面目にクエストをこなしているけど、討伐依頼は失敗が多くて怪我ばかりしているの!」
「ギルドとしては、有望な冒険者は何組でも育てていきたいけど、最悪な結果は避けたいのよね~」
「討伐に失敗して、命を落とすかもしれないのを未然に防ぎたいと言いたいんですね!」
「そういう事!的確な指示が出せる程のリーダーが育つまで面倒を見てほしいの。」
「俺は【黄金の大地】のリーダを引き受けていて適任ではありませんが?」
「別に2つのパーティーを掛け持ちしても他のメンバーがOKなら構わないわよ!」
「エッ~掛け持ち有りですか?」
「まず普通はあり得ないでしょうね!」
「そうでしょう!あり得ませんよ!」
「冒険者はお金を稼ぐ為に命がけで仕事を受けているから、最低限のメンバーでレベルを上げてお金を稼ぐのが普通。人数が減るとその分危険が増え、人数が増えるとお金の分け前が少なくなる。」
俺は冒険者の一般論を話した。
「ほとんどの冒険者はそうだけど、コウさんお金が目的の為に冒険者をやっているようには見えないわ!」
「エリスさん誤解です!生活のためですよ!」
「本当かしら?でもコウさんなら生活する分はすぐ稼げる力は持っているので、少しぐらい後輩の為に人肌脱ぐのもいいんじゃない~それにコウさんは16歳には見えないぐらい大人びて見えるんですよ。」
「無茶言わないで下さい!俺は新人で職業が【薬師】!戦闘には不向きなんですよ!それに16歳です。」
(知識は元居た世界の28歳だけど、今の身体は16歳で健全な男子です!)
「その割には、結果が凄いんですけど!」
「お願い~私からの特別サービスをするから~」
エリスの誘惑に心が動いているが、ここではあまり目立つわけにはいかない。
エリスと話をしていると、後ろから服を引っ張られて振り向く。
そこには双子の姉妹のリナとユナが立っていた。
「君達はたしか、グレンの妹達かな。」
「お兄ちゃんを助けてほしいの!」
悲しい表情で俺に訴える。
「グレンさんがどうかしたのかな?」
「お兄ちゃんが怪我をして、今診療所で見てもらっているの。」
エリスの話しを中断して、リナとユナの話を聞くことにした。
グレンの怪我は大した事はないけど、リナとユナをかばいながらの戦闘は無理があり、自分たちのせいで依頼も失敗・グレンが怪我をすると思い悩んでいるので、エリスに相談したという事らしい。
やっとエリスの依頼の意味がわかった。
「エリスさん!断れなくなりました。まず全員で話し合いをしましょう!」
「お兄ちゃんを助けてくれるの?」
「大丈夫だよ!悪いようにはしないから、今日は孤児院に帰って明日またここにおいで!」
リナとユナは安心した表情で、俺とエリスに手を振って帰っていった。
「さすがわコウさんだわ!引き受けると思ったわ!」
「あの状況では断れないでしょう!」
「エリスさん、明日ここで話し合いをしますので、犬人族の2人も呼んで下さい。」
「わかりました。2人に伝えておきます。」
エリスに特別サービスを期待していますよと伝えて、みんなが待っているテーブルに向かった。
「コウ!済んだ!」
「コウ様、お疲れ様です。」
「コウさんにお任せで、申し訳ありません。」
3人が俺に気遣いの言葉を掛けてくれるので、大変だとは思ったことがない。
「報酬金が合計で100金貨になりました。今回は4等分して1人25金貨を受け取って下さい。」
「今日は皆さんに大事な相談があります。」
エリスとの依頼の内容を3人に伝え、彼らへの指導を引き受けてもいいかの回答を待った。
「何の問題もないよ!」
ココがあっけらかんに言うと、レイナもテレサもうなずいてくれた。
「人助けは騎士の務めですわ!」
「コウさんなら皆さんをまとめられると思います。」
実は思ったより人望があるのかな?でもレベルの差が大きいクエストの選択が難しくなる。
俺がいろんな組み合わせを考えて悩んでいると、3人が同時に声を掛けてきた。
「コウ!一度村に帰ってこようと思っているの、ティマーとしてクロとシロを紹介したいんだ!」
「コウ様、私もクルセイダーとして町にある教会に報告に行きたいと思っているんです。」
「コウさんのお陰で十分なお金が手に入りましたので、妹のお薬を購入して看病をしたいと思います。」
3人共、暫く冒険が出来ないと言い出した。
たぶん、俺の負担を減らすために考えた行動だと理解している。
この先の事を考えたら、ここは3人の言葉に甘えたい。
「皆さん、俺の為に申し訳ありません。」
「コウの為じゃないよ!」
「全体のレベルが上がることは、自分の為になります。私は5日程で戻って決ますので、それまでよろしくお願します。」
「コウ!私も5日程で戻ってくるから、浮気はダメだからね!」
ココは冗談で言っているようだけど、レイナの体から殺気を感じる気がしてた。
「私はこの村にいますので、必要な時は声を掛けて下さいね。」
「ありがとうございます。皆さんのご好意に甘えたいと思います。」
皆にお礼を伝え、5日後にギルドに集合する約束をした。
しばらく別々の行動になるので。女性3人は会話に花を咲かせていた。
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