第34話 ダンセット遺跡探索⑥
魔光石の光の効果が切れかかってきて、部屋全体の雰囲気に違和感を感じていた。
この場所が1階のボス戦であれば、何らかの仕掛けがあるはずだ!
だがいくら辺りを見渡しても何も無い・・・ただ静かな時間だけが過ぎる。
「コウ様!壁の凹みの中に宝箱がありました。」
「コウ!シロとクロが壁の前で吠えているけど壁の中に何かがあるみたいだよ!」
レイナが宝箱を取り出し、ココは壁を足蹴りで壊し始めた。
ココが足蹴りした壁はもろくてすぐに崩れ落ちたので、壁の中を探す。
「布袋を見つけたよ!」
「開きました!扉の鍵が開きました!!」
「宝箱には鍵が掛かっていないみたいですよ!」
ココ・テレサ・レイナの3人が同時に報告してきた。
「袋の中身はお金が入っているよ!」
「扉の奥に地下への階段があります!」
「宝箱の中身は?」
「テレサさん!レイナ様!開けてはダメです!!」
大声で2人に叫んだが、一足遅かった。
テレサは扉を開けた瞬間に正面から矢が飛んで来た。
レイナは宝箱を開けた瞬間に、箱の中から矢が飛び出して来た。
2人共驚きと矢が刺さった痛みの悲鳴を同時に叫んだ。
「テレサさん!レイナ様!!大丈夫ですか!!!」
「コウ様、私は大丈夫です。腕に刺さっただけです。それよりテレサさんは大丈夫ですか?」
よかった、レイナは大丈夫だ。しかしテレサからは返答がない。
「レイナ様!そのままここにいて下さい。テレサさんを見てきます。」
レイナの状態を確認してすぐにテレサの元に駆け寄った。
「テレサさん!しっかりして下さい!」
返事がない・・・胸に矢が刺さっているが急所はそれている・・が・・・気絶しているようだ。
テレサから刺さった矢を抜き、アイテムバックから回復ポーションを取り出す。
「コウ様、矢には毒が塗られています。まずは解毒処置を行ってから回復処置がよろしいかと。」
シノが念話ではなく、直接言葉を掛けて教えてくれた。
「矢に毒が!大変だ~レイナさんの矢にも毒が塗られているかも!」
ココがシノの言葉に反応してすぐにレイナの元に向かった。
シノは稔話でなく、わざと分かるように言葉で教えてくれた。
ココの後にシロとクロもついて行く。
シノが教えたくれた通りの処置を施したが、テレサの意識はまだ戻らない。
暫くこのままで体力の回復を待つとしょう。
レイナの方は、ココが処置してくれているので安心できる。
俺は扉の奥にある地下への階段を、ジッと見つめていた。
「ご主人様、私が見てきましょうか?」
シノが稔話で俺に伝える。
「パーティーでの探索はここまでだ。」
地下への調査はギルドに報告してから行うと事にして、今日は無理をせず一旦引き上げよう。
しばらくするとテレサの意識が戻った。
「私・・・気を失っていたんですね!」
「テレサさん気分はいかがですか?」
「もう大丈夫です。ご迷惑をお掛け致しました。」
テレサは申し訳なさそうに小さな声で話す。
「まだまだ未熟ですね!鍵開けの嬉しさについ先走ってしまいました。」
「私の方こそ的確な指示が出せず、痛い思いをさせて申し訳ないです。」
「コウさんが謝らないで下さい。それに矢の刺さった後の処置までしてもらって・・・コウさんと一緒に冒険ができて嬉しいです。」
テレサの顔が赤くなっている。こちらも嬉しくなるが薄明りの中では誤魔化せるだろう!
2人でいる時間が長く感じたのは気のせいで、すぐレイナとココが側にやって来た。
「コウ様、テレサさんは大丈夫ですか?」
レイナの行動が、テレサを案じている割には俺の様子を伺っている。
「テレサさんは大丈夫です。レイナ様こそ怪我は大丈夫でしたか?」
「宝箱を開ける瞬間にコウ様の声が聞こえましたので、辛うじて直撃を避けれました。」
「それに毒消しの薬まで準備しているなんて、さすがコウ様です恐れ入ります。」
「大事に至らなくてよかったです。状態異常回復の魔法を持ち合わせていない場合、毒消しは薬は必需品ですので、役に立てたのなら幸です。」
「コウ様、私の為にそこまで考えてくれて嬉しいです。」
レイナは1人で納得しているようだ。
「コウ!気付いた事があるんだけど、レイナさんのキズを最初に治したのはシロだよ!」
「エッ~シロが治した!ココどういう事だ。」
ココが矢を抜いて毒消しのポーションを準備している間に、シロがレイナの傷口を舐めたら毒が消えて
そのまま舐め続けていると傷口も塞がって元の状態に戻ったと説明してくれた。
「シロは回復だけでなく、解毒能力も持っているという事なのか?」
「きっとそうだよ、シロの能力は凄いよ!」
「コウからもらった毒消しは使わなかったけど、回復ポーションは飲んでもらったから大丈夫だよ。」
「シロのお陰です。ココさんありがとうございます。」
ココもレイナもシロを撫でて感謝を示している。
シロも撫でてもらって嬉しいのか、シッポを大きく振って喜んでるようだ。
それを見ていたクロも撫でて欲しいようで、2人の間に割り込んでくる。
2人はシロと同じようにクロも撫でて感謝を示した。
シロとクロを同じ様に相手をしている姿を見ながら、俺とテレサは和やかな気分になり自然と気持ちが回復していった。
和やかな雰囲気でしばらく休息を取っていたが、周りの警戒をしていたシノが全員に分かるように声を出した。
「地下への階段から、こちらに向かってくる魔物の気配がします。」
シノの言葉に、全員が立ち上がり俺の指示を待つ。
従魔の2匹がまだ魔物の気配に気づかないのに、さすがにシノの能力は凄いな!
「ここの回収はすべて終わっていますので、地下への扉を閉めて入口まで戻ります。」
この判断が正しいかどうかはわからないが、リーダーとしてパーティーの安全を優先したい。
「ココ!先導をまかせた!レイナ様とテレサさんも続いて下さい。」
「俺とシノが後ろを確認しながら、みなさんについていきます。」
俺の指示に一斉に行動に移る。
このパーティーならば、今後の地下への攻略は可能と考えていた。
全員が部屋を出て入口へと向かった。
残った俺とシノは地下への階段に近づき、戦闘準備をして魔物を待つ。
召喚魔法でシャドウウルフのロキを呼出し、シノと一緒に戦ってもらうつもりだ。
「シノ・ロキ・・魔物をこの部屋から一匹も出さないように!頼んだよ!!」
だんだん魔物の足音が近づいてきた。
一番最初の魔物が階段から出てきた。
「ご主人様、ジャイアントアントです。牙に毒があります。」
シノの情報を聞きながら、飛び掛かってくるアリの魔物を剣で突き刺す。
今までの俺では剣が弾かれていたが、今は刺さった。
攻撃力が上がっている証拠だ。
「ご主人様、アントは集団で襲ってきます。続けて襲ってきます。」
威嚇音が響き渡るのと同時に、アリが何匹も続けて飛び出してきた。
「シノ・ロキ、一匹も逃がすな!」
次から次に襲い掛かってくるジャイアントアントの攻撃を、かわしながら確実に仕留めていく。
数が多くて俺の剣では仕留めるのに限界があり、ある程度は後方の扉に進むがそれについては心配はしていない。
ロキの攻撃は予想以上に素早く動き、扉に進むアリを的確に仕留めていく。
シノはあまり出番がない様で俺の傍で見守っているが、シノに飛び掛かったアリは秒殺でいなくなる。
30匹を超えた辺りから息が上がってきた。
「一体何匹いるんだ!」
「地下からの気配がなくなりました。今いるアントが最後です。」
「よし!最後は魔法を使う!」
最後に残った2匹のジャイアントアントにファイヤーボールを続けて2発放った。
以前より威力が上がった感じがするファイヤーボールで、2匹同時に仕留めた。
「お疲れ様です。ご主人様!」
「シノもご苦労さま!ロキもよくやった!」
「一匹も取りこぼしはないとは・・・さすがはロキだ!」
俺はロキの頭を撫でてほめてあげた。
地下から魔物が這い上がってくる様子は無いようなので、ロキの召喚を解除して部屋を出た。
部屋を出てから、みんなが待っている遺跡の入り口にシノと2人で周りを確認しながら向かった。
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