第22話 ダンセット遺跡探索③
遺跡の奥深く、薄暗い部屋でギルドからの救援隊を待っていた。
「ご主人様!救援隊が到着されました。」
シノの連絡が早かったおかげで、すぐに救援隊が到着した。
俺は彼女を抱きかかえて、明るい入口に運んだ。
「救援隊のギルド職員です。私どもで運びます。」
救援隊に彼女を渡すと、救援隊に残りの女性をお願いした。
レイナとココもまだ意識は戻っていないので、救援隊にお願いをした。
シロとクロはココが心配の様子で、ココから離れずついていく。
「あなたも一緒に戻りますか。」
救援隊の1人が、ポーションを渡してくれて尋ねる。
「俺は大丈夫です。もう少し探索をします。」
「無理をせず早めに戻ってきて、ギルドに調査報告をお願いします。」
「わかりました、終わり次第戻りますのでそれまで仲間をよろしくお願いします。」
救援隊の人達にレイナとココと従魔をお願いした。
本当は一緒に帰りたいが、探索結果のない手ぶら状態ではエリスに申し訳ないと考えた結果だ。
本来なら1人では探索出来ない場所ではあるが、人間の姿でいるシノがいるおかげで救援隊のギルド職員からは注意もされずこのまま探索の許可はもらってある。
2人には申し訳ないが、今後の為にシノと2人での戦闘も確認しておきたい。
シノのことはどうやって誤魔化すかは後で考えよう。
2人だけになった部屋をじっくり見渡す。
異臭がきついので早くこの部屋から出たいが、奥の祭壇みたいなテーブルに宝箱が置いてあるのが目にはいった。
カギはかかってはない、罠も無い感じがするので開けてみた。
「剣!」
「これはロングソード系だな!戻ってから調べてもらおう。」
宝箱からの武具は、たまに呪いがかかってある時があるのでうかつに装着出来ない。
俺の剣はゴブリンソードマンに刺さったまま折れたので、替えになるといいのだけど。
「そういえばシノの武器は何をつかうのか?」
「私は蜘蛛の神獣ですのでこれといった武器はありません、しいていえば蜘蛛の手足による素手攻撃と魔法です。魔法は闇魔法が得意です。」
「闇魔法というと、オークを倒した神経ガスのことか。」
「はい、神経ガスは初級の魔法で先ほどのダークアイも初級魔法です。」
人間が素手で魔物を簡単に仕留めたら、絶対に怪しまれるな。
「シノ、人間の姿でいるときは、形だけでも剣を使う様に。」
「シノの魔法も役に立つから、魔法剣士として活動してもらおう。」
「魔法剣士ですか?」
「たしか職業欄にもあったはずだ。」
「わかりました。今後は魔法剣士としてご主人様にお仕え致します。」
「ギルドに戻ったら冒険者登録をしておけば、何かあればつじつまがあうだろう。」
「ただし、登録はFランクになるように能力を誤魔化して目立たない様にしてくれ。」
「心得ています!ご主人様の時も魔力の数値を誤魔化せ出来ましたので問題ありません。」
「俺の時も誤魔化した!!」
シノの言葉を聞いて、登録時の情景が頭に思い浮かんだ。
確か水晶に手の平をかざした時に一瞬眩しく輝いたがすぐに収まった経緯があったが、あれはシノが打ち消したのか?」
「勝手な事をして申し訳ありません。あの場でご主人様が賢者と知られると面倒な事になると思いまして、とっさに魔法で誤魔化しました。」
「そうだったのか!そういえば光った時近くで女性が転んだようだったが、それがシノだったんだな。」
「はいそうです。」
「今の姿形が違うので気がつかなかった。」
「あの時の姿形は先代の賢者様の好みで、今の姿形はご主人様と従魔契約した時に共有しました記憶を元に変化しております。」
「要は俺の好みの姿だと言いたいんだな。」
確かに俺が気に入って声を掛けた佐藤さんにそっくりだ。
ただ服装は全く違うしそこまで露出はしていなかったはずだが、これは俺の願望が現れてるのか!
「シノの体は防御力が高いので怪我はしないと思うが、生身の人間に見せるために防具で露出部分を隠しておくように。」
「わかりました。」
シノの姿をマジマジとガン見したいところだが、ここは我慢して探索を進めよう。
闇魔法のダークアイは周囲が暗くても、よく見えてとても便利だ。
ただし上級魔法のため取得者はめったにいないはず、使うのは注意が必要だな。
ダークアイと逆のダークネスは周りを暗黒にしてしまう、闇魔法の中でも初級魔法になるそうだ。
闇魔法が基本的に使用できる時点で怪しまれることになる。
シノには悪いが、俺と一緒に剣での戦闘を覚えてもらおう。
「この部屋はもう何もなさそうだ。」
宝箱が一つあっただけでもラッキーだ。
手前の部屋に移動し、ゴブリンシャーマンの屍体を見る。
首にぶら下がっているネックレスの先端に、指輪が付いている。
「この指輪!エリスが依頼した指輪かもしれないな!」
はっきりとわからないが、指輪を取ってバックに直した。
「シノ、ゴブリン達の耳を切り落として集めてくれ!」
討伐の証拠とお金が必要だから武具も集めておこう。
ソードマンの近くにひときわ目立つ槍が落ちてあった。
「この槍は立派だ!もしかして彼女が言っていた武器かもしれないな。」
あちらこちらに冒険者達が使用してたと思われる武具を拾い集めた。
すべての回収を終えて入口に戻りかけた時に、ゴブリンではない遺体を見つけた。
「この遺体は行方不明の冒険者かもしれないな。」
たぶん男性の冒険者だろう、原型を留めて無いほど無残な姿だ。
何か遺品になる物は無いかと調べてみると、小さなペンダントを見つけた。
「持ち主がわかるかもしれないので持って帰ろう。」
小さなペンダントをバックにしまい込み、部屋を後にした。
遺跡の入口まで戻るのに道がわからず遠回りしたが、その途中に現れたゴブリン達はシノの素手による攻撃であっと言う間に倒れてしまう。
「シノの攻撃力が凄いのはわかるが、人間らしく振舞う練習をしておいて欲しいな~」
「申し訳ございません、つい手と足が出てしまいまして。」
「2人の時は構わないが、他に人が居る時は武器か、初級魔法で倒してくれ。」
「気お付けます、ご主人様。」
「あと俺を呼ぶ言葉だが、ご主人様はマズいので他人がいる場合は名前で呼ぶように。」
「コウ様とお呼びすればよろしいでしょうか。」
「それで構わない。」
「わかりましたコウ様。」
剣を使用してもシノの攻撃は凄い、威力が桁違いだ。
シノの実力はS級以上だな!2人以外の時は、戦闘に参加しない方がいいだろう。
遠回りしたのに、あっと言う間に遺跡の入口に戻ってきた。
「ここで休憩をしておこう。」
すぐセシール村に戻りたいところだが、ステーテスの確認をしておきたい。
【名前】 :【コウ・シバ】 【HP】 :【 92 】
【種族】 :【人間】 【MP】 :【 68 】
【年齢】 :【16歳】 【ATK】:【 E 】
【レベル】 :【レベル5】 【DEF】:【 E 】
【ファーストジョブ】:【 薬師 】 【魔力】 :【SS+】
【追加ジョブ】 :【 戦士】【賢者】 【AGI】:【 E 】
【システムスキル】 :【生活魔法】【採取】 【魅力】 :【 D 】
【鑑定】【全属性魔法】 【LUK】:【 D 】
【錬金術】【召喚術】
【経験値スキル】 :【剣技】【 初級火魔法】【初級水魔法】【初級風魔法】 【付与魔法】【初級闇魔法】【初級聖魔法】【身体強化魔法】【低級ポーション】
【従魔・召喚魔】 :【黒蜘蛛】・【シャドウウルフ】【・・・】
「何だこれは!レベル5でこれ程のスキルがあっていいのか!!」
「何の問題もありません。賢者のスキルはほぼ習得できますが、MPポイントが少ないと使用回数が制限されます。」
「経験値スキルはいつ覚えたのか、それに召喚魔にシャドウウルウの表示があるのはなぜだ!」
「コウ様が見たり受けたり体験したものは、経験値スキルとして覚えていきます。」
「召喚術は一定のレベルごとに、召喚できる種類が増えていきます。」
「召喚魔は選べるのか?」
「召喚できる種類はレベル毎で決まっています。召喚魔の強さは召喚者のレベルで変化していきます。」
薬師の俺が強力なスキルを使うと怪しまれるな、人前では隠しておいた方が無難だ。
普通は教会でしかステータスを知ることが出来ない。
鑑定のスキルを持っている冒険者はめったに居ないとの事なのでバレる事は無いと思うが、スキルを使用することは魔物以外はやめておこう!
ましてや他人のステータスを見るのは、裸を覗く感じになるので道徳的にまずい。
今日の遺跡探索はこれで終わりにしよう。
レイナとココの様子を知りたいので早くギルドに戻ろう。
「シノ、戻ろう!」
「はい」
2人はダンセット遺跡を後にして歩き出した。
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