第18話 Fランクパーティーでの戦闘

 ギルドを出て、セシール村の出入口で門番に呼び止められた。

「イザベェルの森は立入禁止です!それとこの頃魔物の数が急激に増えていますのでご注意して下さい。」

「いつもの門番は、優しく促してくれる。

「ありがとうございます。今日は反対側の遺跡の方角に行きます。」

「お気を付けて!」

「いってきます。」


 門番と会話を済ませて、門を出て橋を渡り遺跡の方向へ歩く。

 遺跡までもう少しという距離まで歩いて来たところで、朝ギルドで声を掛けてきたグレンという男が1人立ち尽くしていたが、こちらに気が付いてようで声を掛けてきた。

「今から冒険か!お互い新人同士だ、困った事があれば声を掛けてくれ~力になるぜ!」

 他の冒険者達とは雰囲気が明らかに違う感じがするが、悪い人ではなさそうだ。

 彼の仲間はどうしたんだろう!気になって訪ねてみた。

「パーティーの仲間はどうしたんだい?」

「ハッハッハッ・・・急にお腹が痛くなって奥の草むらで奮闘中だ!」

「のぞくなよ!!俺の仲間が見張っているからな、変な気はおこすな!」

 いや、用を足している所をわざわざのぞかないしそこまで変態ではない。

「悪いな!そんな趣味はないのでお先に失礼!」

 仲間の事を思っての言葉だと思うが、グレンの心配振りは少し異常だな!

 今日は試しておきたい事があるので先を急ごう。


 セシール村を出て1時間程歩いたところで、少し開けた草原に到着した。

「この草原で、薬草の採取をしょう!」

 3人は手分けして薬草を探し始めた。

 シロとクロは、ココの周りをただ走り回って戯れている。

 レイナは薬草採取が苦手なので、薬草が茂っている場所を教えた。

 今後のためにも薬草は多めに採取しておこう。


 広い草原の中で薬草を集めていると、急に頭の中にシノが話しかけてきた。

「ご主人様!魔物の気配がします。」

「魔物!」

 しまった!採取に夢中になって周りの警戒を怠ってしまった。

 すぐにレイナとココの姿を探した。

 レイナの姿は確認できたが、ココの姿が見当たらない!

「レイナ様~ココをみませんか~」

 レイナは俺の声に気付いて辺りを探してくれる。

「コウ様~こちらには見当たりません~」

「レイナ様~魔物の気配がします。注意して下さい~」

 レイナに言葉を掛けてから、ココが居たはずの方向を見渡す。

 何かがこちらに近づいてくる気配がする。

 レイナも異変に気付いて防御態勢を取って待ち構える。

 俺も剣を抜いて構えると、手前から大きな唸り声が聞こえたと同時に空中に大きな塊が飛んで来た。

 このまま俺の真上に落ちて来ようとした瞬間に、横からクロが飛び掛かって大きな塊は真横に飛んで行った。

 塊の正体はホワイトボアだ。それもかなりの大型だ!

「クロ!助かった~レイナ様~そちらに行きました気お付けて下さい!」

 クロのおかげで直撃を免れた。

 空中で態勢を崩したホワイトボアはそのまま地面に落ちたが、すぐに起き上がり近くにいたレイナに向かって突進していった。

 レイナは盾を構えたが、一瞬の判断で横に交わした。

 ホワイトボアは勢いが止まるとこちらに向きを変え鼻息を荒くして今にも突進しようとしている。

「コウ~レイナ様~大丈夫!」

 ココがシロと一緒に駆け寄ってきた。

「ココ!大丈夫だったか!心配していたんだ!」

「ごめんなさい。シロとクロが草むらに休んでいたホワイトボアに、ちょっかいを出して怒らせてしまったみたい。」

 こんなところにDランクの魔物がいるとは!・・・なんてついているんだ!

 他の魔物がいないか辺りを確認する。

 どうやら、ホワイトボア1匹だけのようだ。

「ココ!クロとシロに指示を出せるか?」

「うまく伝わるかはわからないけど、やってみる!」

「よし!ホワイトボアを足止めするよう、クロとシロに威嚇をさせてくれ!」

「レイナ様は後ろから、俺が正面から囲います。」

 クロとシロはココの指示通り威嚇をしているおかげで、ホワイトボアはその場で唸り声をあげるだけで動こうとはしない。

「一斉に攻撃だ!」

 ホワイトボアの目の前に剣を突き出し、注意をこちらに向けておきレイナが後ろから攻撃をした。

 レイナの一撃は強烈だったが、叫び声と共に振り返りレイナに襲いかかる。

 今度は俺が剣で攻撃したが、動きを遅くしただけでゆっくりレイナに襲い掛かった。

「レイナ様~逃げて下さい!」

 レイナに声を掛けたが、レイナはホワイトボアの攻撃を盾で防いだ。

 防御力が上がったのか、後ずさりはしたもののホワイトボアの突進を防いだ。

「ココ!クロとシロに攻撃指示を!」

 ココの合図でクロとシロがホワイトボアの体に噛みついた。

 子供とはいえオオカミの牙だ、ホワイトボアの巨体はその場で悲鳴と共に倒れた。

 それでも体を動かし、クロとシロを振り払う。

 クロもシロも何度も噛みついては振り払われを繰り返していた。

 ホワイトボアの動きが鈍くなったところで、俺とレイナが剣で攻撃をする。

 さすがにDランクの魔物だ!こちらの息もだんだんと上がってきた。

 クロがホワイトボアの喉元に噛みついた!

 今がチャンスだ!ありったけの力を込めて剣を突き刺した。

 大きな悲鳴と共にクロを振り払い、俺の真上に覆いかぶさってきた。

 魔物の爪が顔に近づくと条件反射で、左腕で防御して剣を突き刺した。 

 剣が刺さるのと同時にシロがホワイトボアの顔に飛びかかり、そのまま倒れると動きが一瞬止まった。

 それでもまだ立ち上がろうとするホワイトボア。

 腕の痛みをこらえて俺はその場を離れ、剣を構えて攻撃できるチャンスを待った。

 動きが鈍ったホワイトボアにクロとシロの攻撃、そしてレイナが剣で心臓を刺した瞬間にホワイトボアはその場から動かなくなった。

「仕留めたのか?」

「コウ様!お怪我はありませんか?」

 レイナが止めをさして倒したのに、一番に俺の心配をしてすぐ隣にやって来た。

「腕を怪我しています・・・傷の手当を・・・ヒール!」

 レイナが回復呪文を唱えると傷だらけになっていた腕が淡い光に包まれて元に戻った。

「レイナ様!有難うございます。」

「コウ、すごいね!ホワイトボアを倒したよ!」

「レイナ様のお陰だし、ココの従魔もすごいな!」

「うん、クロとシロは強いし賢いよ!」

 ココの回りでじゃれあうクロとシロの頭をなでながら、ティマーとして戦えた余韻にしたっているようだ。

 このパーティーでDランクの魔物を倒したのは大きな意味がある。

「とりあえずホワイトボアをアイテムバックに回収して、この場を離れよう!」

「コウ様、どちらえ向かわれますか?」

「この先に遺跡があります。入口付近の安全な場所で休みましょう!」

「ココ、クロとシロを先行させて安全を確保してくれないか!」

「うん、わかったよ!クロが先頭に次にシロと私が先に行くね。」

「助かるよ、気おつけて進んでくれ。」

 従魔のおかげで、安全に移動することができた。


 ココと従魔達が遺跡の手前で立ち止まった。

「コウ!この場所が休憩するにはもってこいだよ!」

 ずいぶん前だろうが、冒険者が休息していた跡がある。

「ここなら安全そうだな!休息しよう!」

 切り株に腰掛け、水分をとる。

 ココはクロとシロにしつけのまねごとをしてじゃれあっている。

 レイナが俺の隣に腰掛け、怪我をしていた左腕をやさしくなでる。

「コウ様、腕は大丈夫ですか?」

「回復呪文のおかげで、すっかり元の状態に戻りました。」

「よかったです~安心しました。」

「コウ様、遺跡に何の用がおありですか?」

「エリスさんからの依頼で、指輪を探しています。」

「指輪!」

「以前近くの街道で魔物に襲われた際に貴族が落とした指輪という事で、その魔物の中にはゴブリンがいたと聞きましたので、もしかしたらこの遺跡にそのゴブリンがいるのではと考えています。」

「コウ様の推察力はすごいですね。」

 この遺跡はゲームの中では一番最初の試練クエストで、レベルがある程度ないと厳しいクエストになる。

 先ほどのホワイトボアを倒したことにより、レベルが上がっているはずだ!

 ゲーム序盤はレベルが低かったせいもあり、ここでパーティーの仲間を失った経験がある。

 同じ失敗はしたくない。

 この世界ではやり直しは出来ない!大事な仲間を守るためにも慎重に事を進めなければ!

「レイナ様、この場所を拠点に2日ほど遺跡の探索をしたいと思いますが、よろしいですか?」

「はい大丈夫です。食料を余裕に持ってきています。」

「ココも大丈夫だよ!野宿は慣れているし、今回はクロとシロと一緒だから楽しいよ!」

 2人も納得してくれて、気分が楽になった。

「今日の探索が終わったらこの場所で野宿します。今しばらく休んでおこう!」

「コウ!今日の夕食は昨日のオーク肉を食べたいな~」

 ココは、もう夕食のことを考えている。 


 装備と探索の準備をしながら、体を休めておく。

 休憩が済んだら遺跡の調査に向かう事になるが、なにが待ち受けているかはまだ分からない!

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