第13話 宿屋の食事
エリスから受け取った報酬金額を持って、レイナとココが待っているテーブルでゆっくりとイスに腰掛けた。
「今回の報酬金額は魔物の買取を含んで、なんと26金貨!」
テーブルの上に金貨を並べて置いた。
「すごい!こんなにもらえるなんて始めてだよ!お腹いっぱい食べれるね!」
ココは非常に喜んでいる。
「1人8金貨づつ分けて、残り2金貨は今後の為にポーションを購入しませんか?」
三等分に分けようと提案したが、レイナが難色を示した。
「コウ様!パーティーで稼いだお金はリーダーであるあなた様が管理すべきです。一緒に行動してる間の宿泊・食事・討伐に必要な武具や道具などにお金が要ります。」
「お金の管理は大変だとおもいますが、私もココさんもお金の計算や損得勘定が得意ではありません。コウ様は、その辺の計算が優れていると感心しています。」
「ココもそう思うよ。コウはお金の計算がすぐ出来るから頭がいいんだね。」
計算が得意と言われても小学校でならう算数なんで、なにもすごくはないんだけど!
2人が納得したようにお金を俺に戻した。お金についてはもめ事が付き物だから、少し拍子抜けになったけどそこまで信用してくれるならと引き受けることにした。
ココはお金よりは食べ物が大事だし、レイナに至ったはお金には困っている様子はないようだ。
「今日の冒険は終わりにして、宿屋を探さなければ!」
俺が宿屋の心配していると、ココのお腹の虫が鳴いた。
「ココ~お腹がすいたよ!コウ!宿屋で食事をしようよ。」
「コウ様、この村には宿屋が一軒しかありません。私もそこに宿泊していましたのでご一緒にいかがですか?」
レイナが誘ってくれたので期待が膨らんで舞い上がってしまった。
「すぐ宿屋に行きましょう!」
慌ててイスから立ち上がってしまった。
焦る気持ちがあったのか、立ちあがった瞬間に世話役のロイドさんに声を掛けられてビックリしてしまった。
「お前さんたち、今日の冒険はうまくいったようだな。」
「はい、ロイドさんのアドバイスでパーティーを組んで正解でした。」
「そうかそうか、よいパーティーみたいだな。」
「今日はお腹いっぱいにご飯を食べて、明日も頑張るよ!」
ココの言葉にロイドが優しく応える。
「元気があってよい事じゃ!」
「ただし!油断は禁物だ。焦らず確実にレベルを上げなされ。」
「今日の帰りには、ギルドカードの更新とレベルの確認を忘れないようにな!」
ロイドはそう言うと、他の新人パーティーの冒険者に声を掛けていた。
「そういえば、ギルドカードの更新はどうするのだろう!」
カードを眺めていると、レイナが教えてくれた。
「コウ様、受付の隣にある水晶にかざせば更新が自動的に出来ます。レベルと変更ができる職業も表示されますので、最初の内は頻繁にしておいた方が良いと思います。」
「ランクも自動で上がるのですか?」
「ギルドランクは、更新時に記録されたクエストや討伐した魔物等の総合判断でギルドからランク上げの申請書が渡されます。但しランクを上げるかどうかは本人が決められます。」
「ランクを上げない冒険者もいるのですか?」
「ランクが上がると報酬の高い依頼を受ける事ができますが、Bランク以上になるとギルドから、Aランク以上になると国からの指名依頼がくるようになります。この依頼は基本断ることが出来ません。」
「そのように縛られるのを嫌がる冒険者は、ランク上げを断っています。」
「そうですか、ランクが低くても実力がある冒険者もいると言う事ですね。」
レイナの説明にうなずいて納得した。
「それでは、我々もカードの更新をしましょう。」
カードを手にしてに声を掛けたが、2人共イスから立ち上がらない。
「更新にはいかないんですか?」
不思議に思って2人を見つめた。
「私たちはもう更新を済ませました。」
「ハァ~通りでゆっくりしていると思いましたよ。」
レイナもココも今日が初めてではないし、知っているといえば当たり前だな。
自分だけ席を立ち受付カウンターにある水晶にカードかざして更新を行った。
水晶に表示されたのは、職業「薬師」レベル3を示していた。
職業に関しては、「薬師」以外の表示は無かった。
ある程度予想はしていたので、驚きもせずに席に戻った。
「それでは宿屋にいきましょう!」
3人と2匹はそろってギルドを後にして、すぐ近くに在る宿屋に向かった。
宿屋の入口に入ると、大きな体をした女将が声を掛けてきた。
「一泊4銀貨だよ、夕食と朝食付きだと1人5銀貨になるよ。そこの従魔は、1匹1銀貨で裏の家畜小屋になるけどどうですか~。」
「それで構いません。3人分と2匹の従魔で、食事付きでお願いします。」
「2匹の従魔にはもう2銀貨追加しますので、良い食事を出してもらえますか。」
「兄ちゃん~よくわかっているね!従魔の食事は任しておきな!」
「従魔を小屋に置いてきたら、食堂の空いてるテーブルで待っていておくれ。すぐ食事の準備をするよ!」
威勢のいい女将に言われるまま、ココは裏小屋に従魔を連れて行き、俺とレイナは賑やかな食堂で空いてるテーブルを探した。
「コウ様、ここにしましょう。」
レイナが見つけた場所に座ると、可愛らしいメイド服を着た少女が注文に来た。
「お泊りのお客さんですね。食事は後ほどお持ちします。飲み物と追加の料理は別料金になります。」
メイド服に目が釘付けになったが、よく見ると耳が尖がっている。
もしかしたらエルフ!メイド服を着たエルフ!!
本物のエルフを目のあたりにして、テンションが上がってしまった。
テーブルの上でゴトンと音がした。
自然に音がした方を向いて、マジマジと見入ってしまった。
兜がテーブルの端に置かれ、目の前には金色の長い髪が目を惹くレイナの姿があった。
「コウ様、今日はパーティーに参加させてもらって有難うございました。」
「こちらこそ、レイナ様のおかげで無事こなせました。」
レイナの言葉に、改めて感謝した。
ココが従魔を家畜小屋に置いてきて食堂にやってきた。
俺たちを見つけると、テーブルの側にきてレイナの横に座った。
「食事はまだだよね、お腹すいたよ~」
レイナの兜を脱いだ姿に驚かない!ココは見たことがあるのかもしれないな。
「レイナ様が兜を脱いだ姿を初めて見ました。ココは知っているのかい。」
「何回か見て知っているよ!」
「コウ~レイナ様が美人だと知って喜んでいるんだね!」
「戦闘時の姿とギャップがあり過ぎて驚いているだけだよ!」
「コウ様~そうなに見つめられると恥ずかしくなります。」
「すみません!そんなつもりはないんです!」
「兜を脱いだ姿も気に入ってもらえたなら嬉しいです。」
レイナの意味不明な言葉に、ドキッとして慌ててしまった。
「コウ~顔が赤いよ!」
ココのツッコミに慌てて視線を逸らしてしまった。
本音を言えばもって見ていたかったが、またチャンスはいくらでもあると自分に言い聞かせた。
暫らくすると、料理が運ばれてきた。
スープにサラダとパン、メインはステーキ肉で見た目は豪勢だ。
別注文した果実水で乾杯してから、食事を頂いた。
「このお肉やわらかくておいしい!」
「たぶん、ホワイトボアの肉だと思われます。」
ココとレイナが美味しそうに食べる。
2人が食べてるのを見て、ホワイトボアの肉を食べてみる。
「たしかにやわらかくて美味しい。・・・」
猪の肉だろうか、臭みもなく美味しいが味付けがあまりしない。しいて言えば塩焼だ。
2人は美味しそうに食べている。
こちらの世界では、これが普通なんだろう。日本人の俺としては味にこだわりすぎるかもしれない。
パンも日本で食べていた物とは全然違う物だ。
ココの話しによると、食べられるだけでもすごい事の様だ。
贅沢は敵だ!美味しく頂こう!
今までの俺では、女性と食事するなんて考えられなかったはずだ。
女性2人と一緒に食事が出来ている状況に感謝しよう!
その後3人で楽しく食事を済ませ、今日の出来事に話を咲かせながら食堂を後にした。
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