第12話 ギルドへの報告

 パーティー結成後の初討伐を終えて、無事セシール村の入口まで戻ってこられた。


 門に入ろうとすると、門番が槍を構えて警戒した。

「後ろにいる2匹のウルフは魔物ですね!どういう状況でしょうか?」

 いつもは1人でいる門番が2人いる。なぜか緊張している様子で問いかけて来た。

「この2匹のウルフは【ティマー】であるココの従魔です。」

 俺は門番に説明した。

「クロもシロもココの従魔だよ。おとなしいし危害は加えないよ。」

 ココも2匹のウルフの頭をなでながら説明した。

「そうでしたか!ココ殿の従魔ですか。」

 2人の門番は安心した表情をみせた。

「2人共物々しい様子ですが、何かありましたか?」

 従魔を連れているだけではない雰囲気に、気になって聞いてみた。

「まだ知らないのですか!イザベェルの森で大きな閃光が上空に上がったのが目撃されましたよ!」

「イザベェルの森の異変について、ギルドでは調査隊を出す準備で立て込んでいますよ!」

 2人の門番の言葉を聞いて、急いでギルドに向かった。


 ギルドの中に入ると、受付嬢のエリスが声を掛けてきた。

「コウさん達、無事でしたか!」

「イザベェルの森付近での異変に、巻き込まれてはいないかと心配していたんですよ!」

「申し訳ありません。この通り無事戻ってこられました。」

「それはよかったです。」

 エリスは安心した表情を浮かべ、ココの左右にいるクロとシロに気が付いた。

「ココさんの横にいるのは子犬ですか?」

「ダイヤウルフの子供で、ココの従魔だよ!」

「名前はクロとシロといって、おとなしいよ!」

 ダイヤウルフの子供と分かると少し同様していたが、さすがはギルド職員だ!気お取り直してココの前に書類を出した。

「ココさんの従魔ですね。」

「従魔登録が必要になりますので、この書類に記入をしてギルドカードを提出して下さい。」

「コウさんもレイナさんも報告を受けますので、ギルドカードを出してこちらでお願いします。」

 エリスに言われるまま作業を行い、周りの慌ただしさについてエリスに聞いてみた。

「コウさん達はまだ知らないですよね。」

「イザベェルの森の奥で大きな閃光が上空に上がったらしく、森の奥から街道付近まで魔物が現れたという報告がギルドに届いたのよ。」

「一番近いグラッサの町にあるギルド支店に調査依頼を出したので、ベテランの冒険者が向かうと思うわ。」

「このギルドでは依頼は出さないんですか?」

「セシール支店は基本初心者や駆け出し冒険者のための支店で、危険度がある依頼は出していないのよ!」

「それにしては冒険者の数がやけに多くないですか?」

「街道のあちこちに魔物が出ているおかげで、護衛の依頼が多いのよ。」

 ギルド内では、冒険者達の話し声と出入りとで慌ただしかった。


「エリスさん!討伐報告と魔物の解体をお願いしたいのですが!」

「真中の奥側に裏庭に続く扉があるわ。」

「そこの職員に魔物を渡せば、解体してくれるわ。あと解体報告書をもらってきてこちらに提出して下さい。報酬を払いますので。」

「わかりました。」

 裏庭に続く扉を開けると、大きな調理場が目に入った。

「魔物の解体依頼か?」

 大きな包丁を手にした大男が声を掛けてきた。

「はい、解体に慣れていないのでお願いします。」

「そこのスペースに魔物を置きな!」

 言われるまま、ホーンラビット5匹とオーク1匹をバックから出した。

「オイオイ!ウサギは良いとして、オークだと!ホントにお前らが倒したのか?」

「本当ですよ!偶然が重なりましたが、このパーティーで倒しました。」

「そうかそうか!偶然でも何でもいい、お前らの物であれば問題はない!」

「それよりも、新人冒険者にしても珍しいアイテムバックを持っているな!」

「このバックは知り合いからもらった物です。」

「詮索はしないが、他の冒険者には知られない様にしときな!」

「そんなにすごいバックなんですか?」

「知らないのか?ただのアイテムバックではない!空間魔法が施されている国宝級に匹敵する幻の品物だ!」

「エ~空間魔法が施されている!国宝級に匹敵する幻のバック!!」

 そんなバックとはつゆ知らず、簡単にもらってよかったんだろうか?

「そこにとり出した魔物を見てみろ!」

「討伐してから時間が経っているはずだが、腐らず新鮮な状態のまま保管されてある。」

「バックの中では時間が止まってあるんだろう!」

 調理場の大男の説明に、唖然としたいた。

「お前達とは仲良くなっていて損はなさそうだ!」

「ウサギとオークの解体は、角と毛皮と肉だ。」

「いる分だけ持っていきな、残りはギルドが買い取る。」

 ココが俺の袖を引っ張り、耳元でつぶやく。

「肉!肉!肉!」

「コウのバックなら、肉も腐らずに持ち運べるしいつでも食べれるね!」

 ココは嬉しそうに解体している肉の塊をみて喜んでいる。

 なぜかクロもシロもシッポを振って喜んでいる。

「食べれる部位の肉だけもらいます。残りの部位と素材は買い取りをお願いします。」

「少し待ってな、すぐ終わらせるからな!」


 血抜きから解体まで手際のよい解体ショーに見とれていたら、すぐ終わってしまった。

「肉の塊は食べやすい大きさに分けておいたぜ。」

「この解体書類を受け付けに出しな!報酬がもらえるからな。今回だけ手数料はサービスだ!」

「ありがとうございます。」

 解体場の大男にお礼を言って、書類を受付のエリスにもっていった。


 護衛や討伐の依頼量が普段より多いのか窓口が込み合っている。

 エリス以外の職員も窓口業務を手伝っている。

 他の冒険者に遠慮して後ろで待っていると、エリスが気づいて別の窓口に呼んでくれた。

「解体報告書は貰って来たかしら!」

 エリスの配慮に感謝して解体報告書を提出した。

「コウさん!この報告書はホントなの!」

 エリスがビックリした表情をしている。

「オークを倒したの!」

「はい、結果的にはこのパーティーで倒したことになります。」

「すごいわ!!Fランクのあなた達が、Cランクのオークを倒すなんて!」

 エリスは自分の事のように喜んでいる。

「オークに遭遇した事は、情報提供で買い取ります。」

「報酬の手続きをすぐしますので、お待ち下さい。」

「それとココさんの従魔の手続きが終わりましたので、この首輪を従魔に付けておいて下さい。」

 エリスがココに従魔用の首輪を渡した。

「それにしてもとてもおとなしい従魔ですね。ココさん後で触らして下さいね。」

「エリスさんならいつでもいいよ!」

 ココは嬉しそうに2匹の従魔に首輪を付けたいた。

「コウ、奥のテーブルでレイナ様と待っているね。」

 2人と2匹は他の冒険者達の邪魔にならない様に移動した。


 しばらくしてエリスがカウンターに戻ってきた。

「コウさんお待たせしました。」

「ホーンラビットの討伐達成料が5金貨、オークの情報提供で1金貨、解体の買取料が20金貨で合計26金貨になります。」

「エッ~26金貨!」

「ごめんなさいね!オークの討伐依頼があれば50金貨だっただけど!」

「いえ!26金貨でも驚いています。」

「それに解体の買取が20金貨とは、多くありませんか?」

「魔物の毛皮や角は、魔道具の材料になるから高額に取引されるの。今回はオークの角が一番高額だったわ。」

「コウさんもレベルが上がれば、強い武具が必要になるから売らずに持っていても損はないわよ。」

「武具を作る時に魔物の素材が必要になるんですか。」

 エリスが詳しく調べたいなら2階にある図書室を教えてくれた。

 図書室は24時間いつでも無料で使用できるとの事らしい。

 武具の強化や魔法のことで、これから頻繁に通うことになるだろう。


 エリスから受け取ったお金を持って、レイナとココが待っているテーブルに向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る