第11話 2匹の仲間
オークとの戦いで亡くなったダイヤウルフ。その横でうずくまっている2匹の子供のオオカミ。
ココは子供のオオカミの側に・・・レイナは頭を抱えながら辺りを気にしている。
「レイナ様、どうかしましたか?」
「コウ様は何か違和感はありませんか?」
「違和感?」
思い当たると言えば、バックの中ににいる黒蜘蛛かな。
「以前レベルが上がった時なような感じで、体から熱い物を感じます。」
「言われてみれば体が強くなった感じがします。」
2人そろって思い当たる言葉を同時にしゃべった。
「レベルがあがりましたわ!」
「レベルがあがったんだ!!」
ステータスを見てみたいが、ここではまずいので一人になった時に確認しよう。
「レベルの確認はギルドで確認できますが、スキルや能力値は教会で鑑定してもらわないとわかりません。」
「ただ・・・体を廻る魔法の循環を感じます。」
「魔法の循環ですか?」
「はい!クルセイダーが初めに取得できる回復魔法です。」
「コウ様、試してみてもよいですか!」
「うずくまっている子供オオカミにかけてみてはいかがでしょうか?」
レイナは、手のひらを向けて「ヒール」と唱えた。
薄い緑色の光が、子供のオオカミを包む。
光を浴びた子供のオオカミは2匹共立ち上がりキョトンとしている。
「すごい!レイナ様!回復魔法だ!オオカミが元気になった。」
「ありがとうございます。回復魔法が使えるようになりました。これもコウ様のおかげです。」
「いえ、俺は何もしていませんが!」
「ホーンラビットを倒しただけではこんなにレベルは上がらないはずです!」
2人共しばらく無言になった。
「Cランクのオークを倒したのではありませんか?」
レイナが俺に問いかける。
隠してもしかたない、正直に答えよう。
「レイナ様!オークが森の奥で勝手に倒れたので、無我夢中で剣でとどめを刺しました。」
嘘は言っていない。
「勝手に倒れたのですか?」
「コウ様!オークが倒れた場所まで連れて行って下さい。」
3人でオークが倒れている場所まで向かった。
なぜか元気になった2匹のオオカミも一緒についてきた。
しばらく森の奥を歩くと、オークが倒れた場所にたどり着いた。
「すごい!ホントに死んでいる。」
ココがオークの姿をみてびっくりしている。
「オークの周りにかすかですが、麻痺系のガスの匂いがします。」
たしか黒蜘蛛は神経ガスと言っていたな。
「このイザベェルの森は別名死の森と呼ばれていますので、麻痺系のガスが発生していた可能性があるかもしれません。」
さすがレイナだ!推測がほぼ当たっている。
「でもよかったです。コウ様がこのガスで倒れなくて!」
レイナが俺の事を心配してくれてる。
兜で顔の表情はわからないが、俺の事を心配してくれている!やはり聖騎士ですばらしい女性だと想像してしまう。
「コウ!やけに嬉しそうだね!」
ココが俺の顔を覗き込む。
「オークの肉はとっても美味しいよ!」
ココが俺の手をつかんでオークの前につれてくる。
「コウ様、アイテムバックにこのオークがはいりませんか?」
「クエスト報酬はありませんが、情報提供にオークの買取で報酬金額が見込めます。」
状況判断がすぐできるレイナはさすがと思わせる。
「やってみましょう!」
オークの頭付近にバックを近付けると、大きな巨体が吸い込まれていった。
「入るんだ!」
すんなり入ったバックを持ったが、重さは変わらない。
「コウ様、ここは危険な場所なので、安全な場所まで戻りましょう!」
レイナが心配そうに言う。
周りの雰囲気がレイナを不安にさせるんだろう。
「そうですね、行きましょう。」
3人で元居た場所まで戻ってきたが、ふと2匹のオオカミがココについて来ているのに気づいた。
レイナがオオカミをみて何か考え事をしてる。
「コウさま、オオカミ達はどうされますか?」
「危害を加える感じはありませんが、子供といえども凶暴な魔物には違いありません。」
「レイナ様、オオカミ達について相談があります。ココも聞いてほしい。」
「たぶんココのレベルも上がっていると思います。ココと従魔契約をさせてみるのはいかがかなと。」
「ココ、やってみたい!コウお願いやらせて!レイナ様もいいでしょう!」
ココが俺とレイナに必死でお願いする。
「やってみましょう!」
レイナが賛成したのでココは大喜びしている。
「よし、ココ!従魔契約を始めよう。」
ココが地面に魔法陣を描き、2匹を魔法陣の中に招き入れた。
「私と契約をして!」
ココが呪文を唱えると、魔法陣から青白い光がオオカミ達を包み込むように光った。
「成功だ!」
おもわず声をだした。
「ココさん、おめでとうございます。」
レイナも声をかける。
「コウ・レイナ様、ありがとうございます。」
ココは喜びながら、2匹のオオカミに抱きついた。
「ココさん、名前をつけてあげないといけませんね。」
「はい、もう決まっています。シロとクロ!」
「そのまんまじゃないか!」
俺は思わずツッコミを入れてしまった。
「わかりやすくて良い名前だと私は思います。」
レイナがそう言うと、ココはうなずいた。
「今日からシロとクロだよ!よろしく!!」
シロとクロは、ココにじゃれ合いながらシッポを振っていた。
「ギルドに戻りましたら、シロとクロの従魔登録もしておかないといけませんね。」
「従魔登録!」
「はい、従魔登録をしておけば魔物として討伐されることはありませんし、ココさんの所有物として保護されます。」
「さらに従魔自身も魔物を倒せばレベルがあがりますし、契約したココにも経験値が入りなお且つパーティーメンバーにも経験値がはいります。」
「従魔にそんなメリットがあるんだ!」
そういえば、俺と従魔契約した黒蜘蛛がオークを倒したからパーティーメンバーのレベルが上がったんだろうな。
でもオークに止めを刺したのは俺だから問題は無いはずだ。
黒蜘蛛もカバンから出てこないので、今はまだ内緒にしておこう。
「シロもクロもまだ子供ですが、変異種のウルフですので頼もしい仲間が増えましたね!」
レイナはココに優しい言葉をかけていた。
「ココはこれで一人前の【ティマー】になったよ!」
「コウ!レイナ様、ありがとう!」
ココは感謝の言葉を体全体で表していた。
3人と2匹で、セシール村までの帰途についた。
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