第9話 仲間と初討伐
装備の確認をしながら3人で歩いて討伐対象がいる草原にたどり着いた。
依頼クエストは、ホーンラビットの5匹以上の討伐。
「ホーンラビットは動きが素早く、角に刺さると大怪我をするから気おつけてね。」
レイナが何度か戦ったことがあるとのことで、討伐方法を話してくれた。
俺もホーンラビットは経験はあるが、偶然に死んだだけの恥ずかしい出来事なので黙っておこう。
「ホーンラビットから逃げるのならココは問題ないです。」
ココが自慢げに言うが、討伐は倒さないと意味がない。だけど怪我をしない事は大事だ。レベルが低い間はそれで良いと思っている。
草原に強い風が吹いてきた。
風の揺らぎで草が緩やかに揺れていたのが、急に激しく辺り一面に動き出した。
レイナが剣が抜いて構えた。
「すぐ近くに魔物がいます。」
「コウ様とココさんは私の後ろに!」
レイナが言うのと同時にホーンラビットが飛び掛かってきた。
最初の一匹を盾で防ぎ、二匹目を剣で叩き落とした。
目の前に倒れた来たホーンラビットを俺は剣で刺したが、弾かれてしまった。
「クッ、しぶといな!」
レイナと俺の攻撃でも倒れない。
次々とホーンラビットがレイナに飛び掛かっている。
レイナは盾で防ぎ剣で叩き落とすが、致命傷にはならず俺やココにも襲い掛かってきた。
ホーンラビットの動きが早くて剣が突き刺さらない。
俺が剣で刺したが致命傷にはならなかったホーンラビットが、後方にいたココに襲い掛かった。
「ココあぶない!」
俺は大きな声を出してココの所に行きかけたが、ココはホーンラビットを避けて素早くナイフを刺した。
「コウ、大丈夫!一匹倒した。」
「エッ!」
ココの素早い動きに唖然としていた。
「ココさん、また一匹行きましたよ!」
レイナが剣で叩き落としたホーンラビットが、ゆっくり立ち上がりココに向かった行く。
「分かった、任せて!」
二匹目もココは素早く避けてまたナイフでとどめを刺した。
「コウ様、そちらにも一匹いきました!」
ココの動きに見とれていて避けるのが一瞬遅くなってしまった。
「ウッ!痛い!」
ホーンラビットの角が足に当たってしまった。
膝をついたところに、ホーンラビットが向きを変えてまた突進してくる。
剣を構えて突っ込んでくるホーンラビットを刺したが、また弾かれてしまった。
「コウ様、大丈夫ですか!」
レイナが駆け寄って、俺が仕留め損ねたホーンラビット目がけて剣を突き刺した。
「やりましたわ!」
レイナの剣が見事に刺さった。
「ありがとうレイナ様、お見事です。」
「あと二匹左右から来ます。」
レイナとココが左右一匹づつ、弱っているホーンラビットに剣とナイフでとどめを刺した。
「やりましたよ!コウ様!」
「ココも頑張りました!」
二人の嬉しそうな声を聴いて安心したのか、足の傷が痛みだした。
「血がいっぱい出ています!死なないで下さい。」
ココが今にも泣きそうな顔で見つめる。
「大丈夫だ。このくらいの傷では死なないよ。それにポーションがあるので心配いらない。」
ココに声をかけて、バックからポーションを取り出して飲んだ。
「ウッ!やはりまずい。」
ポーションを飲むと傷が一瞬で治ってゆく。
傷が治ると、ココが安心した表情になった。
「それにしてもココの動きはすごかったな!」
「さすがに猫人族ですね、私もびっくりしました。」
レイナが褒めると、ココは顔を赤くして照れくさそうな表情を浮かべた。
「ココにはびっくりしたが、レイナ様の防御のおかげで直撃をすべて防げました。」
「レイナ様が剣と盾で弱らせていたから、ココのナイフが刺さったたんだよ!一人の時は一匹も倒せなかったからすごく嬉しい。」
ココがレイナの手を握り、体全体で嬉しさを表している。
「コウ様が飲んだポーションは、手作製ですか?」
「レイナ様違います。知り合いのパーティーからもらいましたタンジョン製のポーションです。」
さっそく役に立つ物を選んでくれてるとは、さすが経験者だ。
「コウ様は、ポーションの作成はしないのですか?」
「レイナ様、恥ずかしながら作成方法をしらないんです。」
「帰りに薬草を採取して、誰かに教えてもらおうと考えてます。」
「そうですね!レベルが低い間は、怪我は付き物ですからたくさん持ってた方が安心できますね。」
「作成方法はギルドの2階の図書室で調べるか、道具屋で働いて覚える方法もありますね。町に知り合いの錬金術師が居ますのでご希望があれば紹介いたします。」
「錬金術師ですか!有難うございます。レイナ様、その時はぜひお願いします。」
ギルドに図書室があるのか!あとで寄ってみて本を探してみよう。
レイナとココと違って俺は初めての討伐経験だ。
自分一人だと何もできなかったかも知れない。
仲間がいるというのは本当に嬉しいし、パーティーは素晴らしいと感じた。
「ホーンラビット5匹集めたけど処理はどうする。」
みんなで集めた死骸をみてレイナが説明してくれた。
「ホーンラビットの角、または死骸をギルドに持っていけば依頼達成です。」
「ギルドでは魔物の解体もしてくれますし、手数料を払えば食料の肉や毛皮も手に入ります」
「魔物の肉!食べれるんですか?」
「柔らかくて美味しいですよ。」
ココは今にも食べたそうな顔をしている。
「解体はまだ無理なので、このままギルドに持って帰りましょう。」
「でも結構大きくて重たいですよ。」
レイナが困った声を出した。
「大丈夫ですよ!俺のバックに入れますから。」
バックの中にホーンラビットを次々と入れて見せた。
バックの口まで運ぶと大きな魔物が吸い込まれるように入っていく。
重さも変わらない。なんて便利なんだろう!
その様子を見ていたレイナとココがびっくりしている。
「コウ様!それはアイテムバックですか?」
「はい、知り合いのパーティーから貰ったものです。」
「どれぐらい入るかはよくしらないんですが、バックがあると何かと便利ですね。」
「アイテムバックとはすごい高価な物をお持ちで驚いています。」
「ココも初めて見たよ!」
「中級以上の冒険者でなければ、たとえ手にしたとしても使いこなせない品物です。」
「エッ~購入さえ出来れば誰でも使えるバックじゃないんですか?」
「そんなことはありません。バックに登録できる人はそれ相当のレベルか、膨大な魔力を持っている冒険者だけです。」
「俺はレベル1だからレベルは関係ないし~魔法も生活魔法だけ。きっとタイソンさんが俺にも使えるように登録してくれたからだと思うよ!」
必死でごまかして説明したが、今後は普通のバックとして気おつけて扱おう。
アイテムバックがそんなに凄い品物とは思いもしなかった。
ゲームでは序盤から使えるサービスアイテムだったが、こちらの世界では貴重品ということか。
レイナとココにアイテムバックを貰った経緯を説明し、俺が使えるのを納得してもらった。
魔力SS+は関係ないよな~。
2人が納得したところで、帰りの帰途についた。
帰りながらアイテムバックの種類や、使い方を教えてもらった。
特に錬金術で制作可能とは、【薬師】としては興味を持ってしまった。
幻のアイテムバックの話しがでたが、イヤな予感がしたので聞き流した。
途中の草むらで薬草を見つけたので、休憩がてら採取していたら大きな叫び声が聞こえた。
「今の叫び声は!」
俺は悲鳴のした方向に目をやった。
レイナが剣を抜き盾を構えて、2人の前に立った。
大きな叫び声に何かの悲鳴!
「この森の奥で、魔物同士が争っている声みたいだ。」
「コウ様、どういたしましょう!」
レイナが俺に指示を仰ぐが、俺は悲鳴の方の声が気になっていた。
3人は森の奥を見つめたまま、動けずにいた。
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