第8話 Fランクパーティー

 ギルドでパーティーメンバーを探し始めて初めて声を掛けてもらったのが、猫人族の小さな少女だった。

 境遇が同じだから話を聞こうではなく、獣人にとても興味があるのでつい聞いてしまった。


「ココさん、自分はコウといいます。コウと呼んで下さい。」

「ココさんは猫人族ですか!またなんで冒険者になろうと、どうして【テイマー】という職業をえらんだのかな!」

「私のことはココと呼んで下さい。」

「ココは食べ物に困っていて、冒険者になればお腹いっぱいに食べれると聞いたので来てみたのですが、職業は【テイマー】しか表示されなかったのでしかたなくやってみましたが、うまくいかなかった。」

 ココは悔しがった表情で話しをする。

「選択肢がなかったと!自分と同じだ。【テイマー】というと動物等を使役して冒険するイメージですが、差し支えなければ何を使役しているか教えてくれるかな~」

 【鑑定】スキルを使えば調べれるが、仲間にするんであれば本人の口から教えてもらいたい。

 ココに訪ねたが下を向いたまま黙っている。

 聞いてはイケなかったかな!

 しばらくすると、ココが恥ずかしそうに口を開いた。

「何回か挑戦してみたけど、一匹も使役できなかったです~」

「エッ~使役出来ない!【ティマー】にむいてないのでは~」

 つい声が出てしまった。

 周りの冒険者達の笑い声が微かに聞こえる。

 たぶんココが声を掛けて断った連中だろう。

 周りの反応を見て、ココが今にも泣きそうな表情になっていた。

「使役は相手との相性があると聞いているし、相手のレベルが高いとなかなか難しいだろうな。今は出来なくてもレベルを上げていけば使役出来るようになれるよ!」

 たしかゲームでは【ティマー】という職業はなく【召喚師】の類だな。

 基本レベルが上がるにつれて召喚できる種類と数が決まっていたが、この世界の【ティマー】はどうだろう!興味があるので使役した所をみてみたいな~。

 ココを励ます感じで話をしてみた。

「ホントですか!お願いです!使役出来るまで一緒に連れて行って下さい!」

「一人ではどうしていいか分からないし、お金もありません。」

 ココの切実な訴えに、心が動いてしまった。

「事情は分かった。同じFランクの新人冒険者同志でパーティーを組んでみよう。」

「ありがとうございます。ココ一生懸命頑張ります。」

 成り行き上この結果は仕方ないな、猫のタマを飼った時の感覚を思い出してしまう。


 ココと一緒にクエストボードを見ながら今までの経緯を聞ける範囲で話をした。 


「採取のクエストはお互いクリアーしているんで、討伐クエストを受けよう、」

「チャンスがあれば、ココの使役できる動物に会うかもしれない。」

「はい、ココ今度こそ使役出来るように頑張ります。

 ココは嬉しそうにとても良い表情を見せてくれる。

 

 ボードからFランクの討伐依頼の紙を剥がして受付カウンターに向かおうとした時、さっきまで座っていたレイナがいつの間にかとなりに居たのに驚いてしまった。

「コウ様、2人の話しを少し聞いていました。」

「2人のレベルだと、魔物討伐は荷が重いとおもわれます。」

「ここは、私を頼ってはいかがでしょうか?」

「そんな~上級職の騎士様に手伝ったもらうには、恐れ多いです。」

「気にすることはありませんよ、困っている人の手助けをするのは騎士の務めです。それに私もまだFランクですから!」

 そういえば、レイナも採取クエストを今クリアーしたばかりだったな。

 たしかにココも俺も戦いは不向きだ!前衛で戦ってくれる戦士がいると助かる。

「私ではお役にたちませんか?」

「そんなことはありません。」

「レイナ様は他の冒険者からいくらもお誘いがあるのに、なぜ声を掛けてくれたのかなと?」

「先ほどの人達は私が居なくても問題のないパーティーばかりで、私の居場所がないと感じました。」

「それに~何故か興味がありまして・・・」

 俺に興味がある!この俺に!!それとも異世界から召喚された迷い人だとバレたか?

 バレるような変な行動をしたのか?この世界と違う話し方をしたか?それとも匂いが違うのか?考えてみたが見当がつかない!

「俺に興味があると言われても、小さな村の田舎育ちの何処にでもいる男ですが!」


「・・・・・」


 俺は変な言葉を言ったか?レイナは黙ったままだ。

「ココ殿と言いましたか!アノ~触ってもいいですか!」

「そっちか~」

 俺に興味があると思い込んだ自分が、急に恥ずかしくなった。

「ココと呼んで下さい。構わないけど一緒にパーティーを組んでくれますか?」

「もちろんです。」

 レイナはココの頭をなでながら喜んでいるように見える。

 俺も触りたいのを我慢しているのに、レイナが羨ましく思えた。

 レイナが満足したところで、気お取り直して3人でパーティーについての話しをすることになった。


 パーティーについて話し合いをする為、空いてるテーブルに3人で座った。

「コウ様、3人でパーティーを組んでみませんか?」

「3人でパーティーを組むんですか?」

「ハイ、ギルドカードにパーティー登録をするとパーティー全員に経験値がはいります。」

「クエストをクリアーすると全員にですか?」

「はい、特に討伐クエストは一つ上のクエストも受けられますし、経験値も高く魔石も手にはいります。魔石は売ればお金になります。」

 ココと2人でパーティーを組もうと考えていた所に、レイナが加わることが不思議と違和感はなかった。 

 レイナが説明しながら、パーティーでの戦いかたを決めておきたいと提案してきた。

 パーティーのリーダーはレベルから行けばレイナだが、男性の方が何かと良いとの事で2人に押し切られてしまった。

 あまり目立ちたくなかったが、ここは仕方なく引き受ける形になった。


「レイナ様、俺もココも冒険者になりたてで戦闘に役立つスキルを覚えていません。」

「ココにはまず使役できる魔物が出来るまで、俺は何のスキルが覚えれるかわからないので当面は剣で戦います。」

「ココな猫人なので嗅覚と素早く動けるです。武器は小型ナイフです。」

「私は騎士ですから前衛で剣で敵と戦い、盾でお二人を守ります。」

「まずは、Fランクのクエストで、レベル上げをしましょう。」

 レイナがこの辺りの魔物について色々教えてくれた。 

 俺とレイナが今後の進め方の話しをしているのをおとなしく聞いていたココが割り込んできた。

「ココもがんばります。だからお腹いっぱいに食べれるパーティーになりたい!」

 ココはレベル上げよりも食べ物の為に頑張るみたいだが、それで良いと感じていた。

 最後にパーティー名をどうするかになったが、レイナに任せる事にした。

 レイナはしばらく考えていた。

「国が栄えるのに一番大切な民の生活が平和になるように、実りある土地を目指す意味で【黄金の大地】はどうですか?」

「【黄金の大地】ですか?」 

 俺とココは顔を見合わせ、コクリとうなずいた。

「良いパーティー名です。」

 3人で話がまとまり、採取・討伐依頼の依頼書を持って受付カウンターに向かった。


「エリス殿、私たち3人のパーティー登録をお願します。」

「パーティー登録ですね、パーティー名は【黄金の大地】でリーダーはコウさんでよろしいですね。それでは3人のギルドカードをお預かりいたします。」

 3人はエリスにギルドカードを渡すと、エリスは水晶にカードを照らして登録手続きを行った。

「はい、パーティー登録が済みました。討伐等の経験値は3人に均等に寄与されます。」

「報酬はパーティーの代表者が受け取りますが、配分はパーティー内で決めて下さい。」

 エリスから3人分のギルドカードを受け取り、かわりに依頼書をカワンターの上に置いた。

「薬草の採取とFランクのホーンラビットの討伐ですね。」

「レイナさんがいれば大丈夫だと思いますが、無理はしないでくださいね。」

「大丈夫です。すぐ戻ってきます。」


 先ほどの採取場所の草原まで、もう一度3人で向かう事になった。


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