第6話 初めての報酬
2人で街道を歩き、川の橋を渡ってセシール村の入口に着いた。
セシール村の門番は、レイナを知っている様子で、笑顔で迎えてくれた。
「レイナ殿、お帰りなさい。薬草は見つかりましたか?」
「はい!コウ様のおかげで沢山取れました。」
「それはよかったですね。コウ殿も無事戻られてよかったです。」
「ありがとうございます。レイナ様に助けていただきまして無事戻れました。」
「いやですわ、私の方こそコウ様のおかげで依頼が達成できました。」
門番が笑顔で笑っているのを見て、照れてしまった。
ギルドに戻ると、受付嬢のエリスに声を掛けられた。
「コウさん!無事に戻ってこられたのですね!」
「はい、エリスさん!装備の事を忘れていてひどい目に会いましたが、レイナ様のおかげで何とか無事に戻れました。
「こちらこそ説明不足で申し分けありません。武器や防具、道具のたぐいは一番端のカウンターで購入して下さい。ただし初心者用の物ばかりですので、レベルが上がったら町で揃え直して下さいね。」
エリスが申し訳なさそうに説明すると、隣にいるレイナに気付く。
「レイナさん、コウさんを助けていただいてありがとうございます。」
「それでレイナさんは、たしかクエストの採取依頼の期限が今日まででしたが、3度目の挑戦もだめでしたか。」
レイナが先ほど採取した薬草をカウンターの上にそおっと置いた。
「いえ、エリス殿!偶然コウ様を助けたお礼にと薬草採取の手ほどきを教えてもらいまして、3度目の正直で薬草が採取出来ました。」
レイナな嬉しそうな声に、エリスが驚いた表情をみせた。
たぶんレイナには依頼達成は無理だと思ってたんだろうな!
エリスがカウンターに置かれた薬草の確認作業を手際よく行う。
「依頼内容の薬草10本確かに受け取りました。」
「レイナさん!依頼達成おめでとうございます。報酬の2銅貨にキレイに採取されていますので。買取アップで合計3銅貨になります。」
「コウ様の教えてもらった通り買取アップになりましたわ!」
レイナは嬉しそうに報酬のお金を受け取り、受け取ったお金を俺に際出してきた。
「コウ様、このお金を受け取って下さい。」
「エ!これはレイナ様が集めた薬草の報酬金ですよ。」
「いえ、この報酬はコウ様がいなけれが無かったものですわ!依頼達成の報酬よりランク上げの条件を満たしたのが何よりもうれしいですわ!!」
「ランク上げの条件ですか?」
「はい、FランクからEランクに上がる条件に採集クエストの達成があるんですが、私はこの条件がクリア出来ず途方に暮れていた所に~コウ様と出会えて~神様に感謝いたしますわ。」
「ぜひ、受け取って下さい。」
レイナの言葉があまりにも嬉しそうなので、ここは受け取っておこう。金額よりも気持ちが大事なんだろう。
「わかりました。このお金はありがたく預かっておきます。」
レイナは満足した態度で、空いてあるテーブルの椅子にチョコンと座った。
たぶん肩の荷が下りたんだろうな!全身の力が抜けている感じが見られる。
レイナは、ここでも兜は外さない。
周りの冒険者たちも別に驚く様子はないし、あたり前のように見ている。
たぶん、いつもと同じ光景なんだろう!
「話が済んだところで、コウさんの依頼報告を受けますよ。」
エリスに言われて、アイテムバックから布袋とスコップを取り出してカウンターの上に並べた。
「はい、依頼内容の薬草100本に、毒消し草10本、それに眠り草を偶然1本見つけました。」
「エッ~薬草100本!初めての依頼でこんなに集められるなんて!コウさんすごいですよ!!」
「すぐ査定しますね!薬草が100本で2銀貨、毒消し草10本で2銀貨、眠り草1本が1銀貨となります。」
「合計5銀貨に、全てキレイに処理されていますので買取アップを入れて、2倍の10銀貨になります。」
エリスが手際よく査定して銀貨を10枚渡してくれた。
教えてもらったこちらのお金だと、1銅貨が100円・1銀貨が1000円・1金貨が10000円・1白金貨が1000000円だったな。
10銀貨だと、10000円の報酬か!往復5時間位だとして時給にすると2000円位だな。結構な稼ぎだな。
今日の宿屋代を稼がないといけないから、もう一つクエストを受けよう。
エリスにお礼を言って、またクエストのボードをみつめる。
ボードをじっくり眺めていると、後ろから声を掛けられた。
「自分に見合ったクエストがみつかりましたかな。」
後ろを振り向くと、そこには髭を生やした男が立っていた。
「私は、ポスト・ロイドという、このギルドで冒険者達の世話役係で雇われている老人です。」
「どうぞロイドを呼んでくだされ。」
ロイドと名乗る老人は、老人とは思えない体つきでニコニコした表情で話しかけてきた。
「コウと言います。今日冒険者登録をしたばかりで、職業が【薬師】なので安全なクエストを探しているところです。」
「ほう!【薬師】ですか?それはめずらしい!」
「職業適性が【薬師】しかなかったのでしかたなくです!そんなに珍しい職業ですか?」
「ウム~生産系の職業はレベルが上がるまで時間がかかるので、初心者はみな敬遠してしまいますな~。」
「そうですか~冒険をしたい人は生産系の職業は敬遠したがるのはしかたないことですね。」
「レベルが上がれば役に立つスキルを覚えられますので、それまで地道に頑張っていきます。」
「前向きな言葉じゃ!若いもんはこうでなくちゃの~」
ロイドと名乗る明るい老人はベテランの元冒険者で、このギルドで初心冒険者のアドバイスや冒険者同士の仲介・トラブルの仲裁等をやっているらしい。
冒険者仲間では、頼りになる老人だそうだ。
「そこでコウ殿に提案があるんだが、パーティーに参加するのはどうかね?」
「パーティーですか?」
「そうじゃ~いくら安全なクエストでも、危険はつきものだ!まして【薬師】であればレベル上げをしないと使えるスキルが覚えられない。そこでパーティを組めば、お互いの苦手な部分を補えるしレベルも上がりお金も稼げるということじゃ!どうじゃ!一石三鳥じゃ!」
「その気になったら世話をするぞ!こまったことがあればいつでもここに来なされ。」
得意そうにしゃべると、満足したみたいで別の冒険者を見つけて声を掛けていた。
きっと世話をすることに生きがいを感じている老人のように感じる。
他の冒険者からも相談を持ち掛けられているのを見ると、結構頼りになる存在だろう!
【漆黒】のメンバーは家族みたいなパーティーだったし頼りになる存在だったな!
パーティーか~考えてもいいかな!
あまり目立たなければ迷い人とはバレないだろう!
早くレベルを上げて便利なスキルを覚えないと、自分の身を守る事は出来ない。
魔法の事も誰かに教えてもらいたいし、パーティーメンバーは慎重に探さないといけないな。
頭の中で先の事を考えながら、この異世界での冒険の一歩だと感じていた。
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