第5話 初めてのクエスト

 【漆黒】のパーティーと別れて暫く余韻に慕っていたが、先ほど頂いたアイテムバックに魔石とポーションを入れてクエストが張り出されているボードを隅からじっくり見渡した。


 クエストランクはFからA級まであり、自分と同じランクまでの依頼しか受けられない。

 ただし、2人以上のパーティーだと1つ上のランクまでの依頼が受けられる。

 また、情報提供や捜索依頼はランクに関係なしで受けられるし、事後報告でもいいとのことだ。


 クエストが貼られている内容を確認しながら、自分でも出来そうな依頼をさがしてみる。


 初心者や新人冒険者向けなのか、F~Eランクの依頼が多くある。中にはDランクの討伐依頼もあるが、まだ無理はやめておこう!異世界に来たばかりで死んで終わりは情けない。

 まずは職業が【薬師】なら、採取クエストだな。

 Fランクで受けられる薬草納品のクエストの紙をボードから剥ぎ取り、受付カウンターのお姉さんに差し出した。

「このクエストを受けたいんですけど!」

「薬草採取ですね。」

 受付嬢のエリスがカウンタの下から分厚い本を出して、薬草の絵のページを見せてくれた。

「こちらが薬草の絵になります。雑草と似ていますので間違えないで下さいね。」

「他に、毒消し草・眠り草、めったに見つからない上級薬草・魔力草・火炎草の絵も覚えていてくださいね。」

「クエスト以外の薬草も買い取りますので、普段から採取しておくと良いですよ。」

 エリスが採取方法と買い取りアップ術を内緒で教えてくれた。

「納期期限は、3日ありますので慌てないで下さいね。」

「比較的薬草が生えている場所は、イザベェルの森へ行く道を1時間ほど歩き二又に別れる道をイザベェルの森と反対側の森の方に向かうと比較的に見つかりますよ。」

「間違えてもイザベェルの森には近寄らないで下さいね。強い魔物が多くいますので!」

 エリスが丁寧に教えてくれたうえに、布袋とスコップを貸してくれた。

「ご親切に有り難うございます。」

「初めてのクエストなので、無理はしません!すぐ戻ってきます。」

 エリスに頭を下げて、村の門に向かった。


 門番に見送られて、エリスに言われた通りの道を歩いて森にたどり着いた。

 森の中を少し進むと草現地が見えた。

「ここだな。結構広い場所だ。」

「この中から薬草だけをさがすのは結構大変そうだ。」

「あれ・・・広い草原の中からが濃く見える草がある。近くに行って見てみるとギルドで見せてもらった薬草の絵と同じだ。」

 他の場所に目を向けると、やはり濃く見える草が見える。

 おもわず、ステータスオープンと唱えた。


   【名前】      :【コウ・シバ】    【HP】 :【 28】

   【種族】      :【人間】       【MP】 :【 35】

   【年齢】      :【16歳】      【ATK】 :【 F 】

   【レベル】     :【レベル1】     【DEF】 :【 F 】

   【ファーストジョブ】:【 薬師 】       【魔力】  :【SS+】

   【追加ジョブ】   :【 ・・・】       【AGI】 :【 E 】

   【システムスキル】 :【生活魔法】【採取】 【魅力】  :【 E 】

              【鑑定】         【LUK】 :【 E 】

   【経験値スキル】  :【 ・・・】


「おっ~ステータスが表示されている。」

 初めの画面では名前ぐらいしか表示されなかったのが、今度は全て表示されている。

 多分、冒険者登録して表示条件が揃ったからだろう!

「システムスキルが【生活魔法・採取・鑑定】、【魔力】が【SS+】・・・【SS+】・・・どんだけ~すごいんだ!!~て~何がどうすごいんだろう。」

 つい大きな独り言がでてしまった。

 他のステータスは普通というよりも低い設定だ。

 【魔力】だけが異常に高いのは異世界から来たからだとしたら、隠しておかないとまずいな!

 【生活魔法】・・・魔法が使えるんだ!たしか魔力持ちは誰でも魔法は使えると言ってたな。でもどうやって使うんだろう!! 

 【採取】・・・このスキルのおかげで、必要な薬草が分かるようだし便利なスキルだ。

 【鑑定】・・・そういえばタイソンが言ってたな!自分のステータスを知るのは教会でお布施を払って診てもらうか、【鑑定】スキルを持っている人しか知ることは出来ないと。

 エミリーは、【鑑定】スキルは魔力の高い宮廷魔導士か迷い人ぐらいだとも言っていたな!

 これもまずい!【鑑定】スキルもバレない様にしないと!うかつには使えないぞ!


 【採取】スキルのおかげで、必要な薬草は十分とったな。

 エリスさんが教えてくれた買取アップ術の方法で、茎の泥をキレイに落とし10本包みに分けてアイテムバックに入れておく。 

 薬草の他に毒消し草も結構見つけたし、レアと言われている眠り草を1本見つけたのはラッキーだった。

 お金もないことだしまだ日が高いので、一度ギルドに戻って採取した薬草を買い取ってもらおう。

 そのお金で、食事をしながら情報収集と行こう。


 来た道を戻る途中、街道の左側からの茂みから狼の集団が何かに追われているような形相でこちらに突進してくる。

 まただ、体が自然に逃げる体制になった。

 しまった、武器を持っていない!

 ここは逃げるしかないが、いくら足が速くても狼のスピードにはかなわない。

 あっという間に追い付かれて、囲まれてしまった。


 ・・・万事休す・・・


 突然自分の後ろから一人の騎士が剣を片手に飛び出し、狼の一匹を切り倒した。

 狼が悲鳴を上げながら後ろに飛んで行った。

 残りの狼4匹がうなり声を上げながら、次々に騎士に襲い掛かった。

 狼の攻撃を盾で受け止めて、剣で切り倒しながら応戦をする。

 一撃で倒せる力はないみたいだが、巧みに狼を弱らしている。

 分が悪いと思ったのか、狼の群れは森の中に逃げて行った。


「危ない所でしたね!ケガはしていませんか!」

 剣を鞘に納めて、こちらに近寄ってきた。

「有り難うございます。おかげで命拾いをしました。本当に助かりました。」

 お礼を言いながら、騎士を見つめた。

 頭、腕、足、胸に金属の鎧を装備している。顔は兜をかぶっている為わからないが、声からすると若い女性の様だ。雰囲気からして貴族の女騎士だな!

「私はコウといいます。武器も持たずにクエストを受けたまぬけな【薬師】です。」

「エッ!【薬師】ですか!私はブェルナー・フォン・レイナです。レイナとお呼び下さい。職業は【クルセイダー】です。」

「コウ様は【薬師】と言いましたが、どのようなクエストの依頼を受けているのですか?」

「はい、薬草採取依頼です。今日冒険者登録をしたばかりなので採取依頼が妥当かなと思いまして!」 

「そうですか、今日冒険者登録で採取依頼ですか!」

「それで、薬草は採取できましたか?」

「はい、たくさん採取できたので、ギルドに戻る所でした。」

 もじもじ話していたレイナが急に眼が輝き、近寄って来た。

「お願いがあります!薬草の採取方法を教えてくれませんか!!」

 近い・近い・・・兜が顔に当たる!

「私も冒険者登録をしたばかりで、薬草採取のクエストを受けたのですが、薬草が全然見つからず今日が期限の3日目なんです!」

 兜の中からレイナの悲痛な声が聞こえる。

「そうでしたか!レイナ様も同じクエストで薬草採取をしていたんですね。助けてもらったお礼にはなりませんが、薬草でしたら差し上げます。」

「本当ですか!コウ様・・・有り難うございます。」

 手を握られ、涙声で感謝されてしまった。

「でも~ありがたいお言葉ですけど、やはり自分で受けた依頼は自分でやり遂げたいです。」 

 レイナの真剣な言葉にさすがと感心してしまうが、3日も探して1本も見つからないなんて採取の仕事は苦手なんだろうな!騎士だし!やっぱり、貴族だな!

 レイナの申し出を快く感じた俺は、一緒に薬草を探す手伝いをすることにした。  

【採取】スキルのおかげで、レイナの依頼採取はすぐに終わった。

「ありがとうございます。これで依頼達成です。本当に感謝いたします。」

「いえいえ、薬草採取しか取り柄がありませんので、気になさらないで下さい。」


 それにしても、兜は外さないし素顔は見せられない様子みたいだな。

 兜の中身は気になるが、貴族とは関りを持たない様にしょう!面倒事が定番だし。


 レイナは薬草を嬉しそうに持って、2人並んで帰りの帰途についた。


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