最終話

この世は、時に儚く、残酷だ…


理不尽な運命に人は何度も枕を濡らし

涙を流す…


だが、エーデルワイスとスターチス…


大切な思い出と、変わらぬ心を胸に

その少年は重き1歩を歩みだす…


空に舞う凛とした紫の花が明日を結び

少年は閉ざされた未来を進む…


その先に望む未来があることを祈りながら…


一人は、離れていても懸命に弟の為に

戦い抜き…。


一人は母親の死すら乗り越え、

強くなった…。


一人は、自らの親に立ち向かい

勝利してみせた…。


一人は、悲惨な境遇を乗り越え島まで

辿り着き自らの過去を知った…


一人は、悲しみを乗り越えて自らが抱える

トラウマに打ち勝った…


一人は、自らの子を最後まで信じぬき

その生涯に幕を終えた…。


そして、もう一人は…


様々な人への感謝を感じ、これまで

歩んできた人生に懐かしさを覚えながら

その生涯に幕を終える…


はずだった。


…今、様々な思いがぶつかりあって、

この物語は終わりを迎える…。


誰にもこの物語を非難することも、

賞賛することもできない…。


何故なら、この物語は…


彼らが歩んできた人生と言う旅路の

最終地点…。


この物語の結末は彼ら自身が決め、

後悔することなく選んだ未来だからだ…


ここが…終わりであり…

そしてまた新しい物語の幕開けである。


ーー


主人公「何…で…」


主人公「お前ら…ここに…」


結衣「大変だったんだよ、みんなを

この計画に乗せるの…」


主人公「は…?計画…?

計画って何だよ…!」


主人公「お前らまさか、最初っから

こうなることを知ってて…」


紫央「…半分、正解よ…」


主人公「はい…?」


舞「私と結衣だけは、最初っから の

病気が治ってないことを知ってた。」


主人公「な、何で…!」


舞「今までずっと黙ってたんだけどさ…」


舞「… の寮の部屋に、さ…」


舞「ずっと仕掛けてたんだよね、

盗聴器…。」


主人公「…あ!!」


そういえば、俺はあの部屋で堂々と

病気が治ってなくて、死ぬことを話してた…


…クソっ、もっと警戒するべきだった…!


結衣「まぁ、少しだけ付き合ってよ…」


結衣「ここまで来るに至った経路にさ…」


主人公「…え?」


ーー


死ぬなんて、やだな…


舞「…は?」


死ぬ…って、どう言うこと…!?


なんで?病気は治ったはず、まさか…

治ってない…?


どうなってるの…みんなにこれを…


…いや、待て…いきなり皆にこのことを

話すのは混乱を招きかねない…


1人ずつ、1人ずつ話していこう…


まずは結衣から…そしたら順々に

話していこう…。


プルルルル


結衣「どうした、舞…」


舞「再優先事項、私の部屋まで来て…」


結衣「え?なんでいきなり…」


舞「まずいことになったの、結衣、

一人で私の部屋まで…」


結衣「わ、分かった…」


結衣「…何なんだ?」


ーー


結衣「…来たぞ…」


結衣「んで、何だ…?再優先事項って…」


舞「…治ってなかった…。」


結衣「…は?」


舞「病気なんて最初っから治ってなかった…」


結衣「おい、どう言うことだよ…!」


結衣「鵜伏を倒したら…特効薬が

手に入るはずじゃ…!!」


舞「…無かったようなの…」


舞「 の部屋に仕掛けた盗聴器、もちろん

本人に仕掛けたことは言ってない…」


舞「その盗聴器から、死ぬなんて嫌だって

聞こえてきたから間違いない…」


結衣「…こんな、ことって…」


舞「…私も、状況を掴みきれてない、けど…」


舞「こんなことになった以上は、

もう… は…」


結衣「そんな…どうして…」


結衣「救われるんじゃなかったの?

鵜伏を倒しさえすれば…」


舞「…どうしようも、無いよ…」


結衣「どうして…こんなの…ひどいよ…」


舞「…。」


舞「このことはまだ他言無用で、一度に

多くの人に話すと混乱を招きかねないから…」


結衣「…分かった。」


…どうして…神様はこんなにも

残酷なのだろうか…


1度ならず2度までも、私達から、

希望を削いでいく…


そして最後には、全てむしり取って、

奪っていく…


救われるだなんて、最初から幻想だったんだ…

私達を…ずっと…騙していたんだ…


こんな結末…ないよ…。


…私、泣いてるのかな…


もう、分からない…


ただ辛すぎて、何も言葉が出ない…


…ただひとつ、私にとって がどれだけ

大切だったかが改めて理解できた…けど…


結衣「こんなのって…ないよ…」


舞「…。」


ーー


結衣「…」


何でだよ。


酷いよ…こんなことって。


これじゃ、誰も救われないじゃないか…!!


畜生…こんな残酷なこと…


私には耐えられないよ…


結衣「っ…ぐぅ…」


でも、泣いちゃだめだ…辛いのは…

 も同じだから…!!


結衣「だめ、っぐ、ないちゃ…だめだ…」


弱い自分をここで終わらせなきゃ…


私は、いつまでも…


結衣「…!」


一生、弱いままだから…


結衣「…。」


もう、迷わない…


そうだ、もう失うものなんてない。


私は…私のできることをやろう。


もう…弱くないんだ、私は…


ーー


舞「…。」


やっぱり…


芯の強い結衣ですら、ああなった…


一度に全員話すのは危険だったね…


…にしても、本当に死ぬのかな…


…私にとっては が死のうと死ななかろうと

変わりない…


だって、 が死ぬんなら私も

死ねばいいだけの話だからね…。


そんな単純なことだ…この世界なんて。


こうなることは決まってたのかな…


どうしようもなかったのかな…


結局、私達は世界と言うくだらない天秤の

中で踊さられてるにすぎない…


こんな悲劇でも、この世界そのものにとっては

喜劇なのだろうと、そう感じる…。


希望なんて、所詮は限りのあるもの、

いくら永遠だと思おうが、いつかは無くなる…


そして、ただ一つの希望を依代にしてる

人間がその希望を失った時、

人はどうなるか、私は…知ってる。


…虚無。


何もない、空っぽ…


生きていく理由もないまま、最期を

華々しく飾ることもなく、果てていく…


…私はそうはなりたくない。


だから、最期は と一緒に…

眠りにつくよ…


私は一人じゃない。


そう言い聞かせることで、私は、 が

死ぬと分かっていても、これからも

平気なふりをして生きていける…。


やっぱり、私は弱い…


一つの希望しか、持つことが出来ないから…


この世界は、沢山の希望を持っている方が

心が豊かで、希望を失ったときの傷が

浅いと言う…。


でも、私は違った…


一つの希望しか持ってなくても心は豊かだし、

その希望を失うことになったとしても…


何も…感じることは…


あれ?


私…泣いてる。


おかしいなぁ…こんなはずじゃないのに、

なんで、なんで悲しいんだろう…


いつかは誰も終わりが来て、ただ、

それが早く来るって分かった、ただ…

それだけのことなのに…


涙が溢れて、止まらないや…


こんな私でも、結局は人間だったんだね。


まともな感性なんて、とっくの昔に

無くなってたって、勝手にそう思ってた…


けど、違ったんだね…


私でも、大切なものが無くなるときは、

結局悲しいんだ…


あぁ…


もう、どうしようもないな…私は。


ーー


舞「むー、どれにしよう…」


主人公「そろそろ決まったかー?」


舞「待って、選べない…」


舞「もう、 が選んでよ…」


主人公「え、えぇ…」


主人公「じゃ、じゃあ、これとか…?」


舞「え、何これ…」


主人公「新しいモデルの奴で、なんでも

使用者の脳波をスキャンして、使用者の感情に

合わせて眼帯の表情も変わるらしいぜ…」


舞「えー!それいいね、買おう…!」


主人公「そうか、お気に召したようで

よかったよ…」


舞「ふふふ、これをつけるのが

楽しみだなぁ…!」


ーー


…とつぜん、蘇ってくるのは

懐かしい思い出…。


一番、嬉しかった思い出…


あの日私は に連れられて、眼帯を

買ってもらった…


そして、その日買ってもらったこの眼帯を、

私は今でもつけている…


楽しかったな…。


あの眼帯をつけたとき、似合ってるって

優しく微笑んでくれたのも、嬉しかった…


でももう、それも過ぎたこと…


私は新しい未来へ歩みを止めてはいけない…


だから、もう…


舞「私、もうこの先に待ち受ける、

どんな未来からも逃げないよ…」


舞「どんな理不尽でも受け止めてみせる…」


舞「さぁ…どうなるかな?」


舞「これが、最後の戦いだね…!」


舞「…私はもう、後悔したくないから…」


舞「自分の選ぶ選択肢に…!」


ーー


舞「…」


とは、言ってみたものの結局一日中

寝込んでしまった…。


学校もあったのに…


舞「ま、いっか…」


舞「結衣の方はどうなったんだろ…」


プルルルル


結衣「…もしもし?」


舞「…結衣、元気無さそうね。」


結衣「そんなこと言ってる舞にも

覇気を感じられないぞ…」


舞「そうかな…あはは。」


結衣「まさか、お前も一日中寝てたのか…?」


舞「え、結衣もなの…?」


結衣「はぁ、やっぱ、私達って

似てるんだな…そう言う所。」


舞「そうなんだろうね…」


結衣「…。」


舞「…。」


結衣「もう、切るよ…」


舞「うん…。」


ピッ


舞「やっぱ、どうにも元気が出ない…」


舞「どうしよう…」


ーー


舞「…」プルルルル


結局のところ私は上手く元気を出せなくて

しかもそれを に勘付かれた…


から、なんとか演技で誤魔化せた、

なんだけど…


結衣「もしもし?」


舞「ねぇ、どう言うこと…?」


結衣「土曜のやつのこと?」


舞「あんなの私聞いてないんだけど…」


舞「てか、なんであんな所で

集まろうと思ったの…?」


結衣「…今日さ、鈴さんと話したんだけど…」


結衣「あの人、お母さんが亡くなったことを

相当気にしてるみたいでさ…」


結衣「何か、ちゃんと精算する機会が

欲しくてさ…。」


舞「…そう言うこと?」


結衣「うん、いきなりこんな話出して

悪かった…。」


舞「…もう、いいよ…」


舞「それで、どうするつもりなの…?」


舞「みんな、パーティーだと

思ってるみたいなんだけど…」


結衣「じゃあ、違和感がないように

パーティーにしよう。」


結衣「そういや、このパーティーで

誰か一人にあれを教えようと思うんだけど…

誰がいいかな…」


舞「まずは、紫央がいいと思う…」


結衣「…それは、何故…?」


舞「まず、鈴さんはこの事を話すとなると

混乱して皆に話しそうだからアウト、

楓花さんはメンタルがおかしくなって

どうなるか分からないから保留…」


結衣「じゃあ、紫央にするしかないな…」


舞「うん…」


舞「ねぇ、そういえばなんでこんな

パーティーでそんなこと話すの…?」


舞「直接会うだけなら呼び出せばいいだけの

話じゃない…?」


結衣「…もし、そんな呼び出しをして

誰かに話の内容を聞かれてみろ…」


舞「そんな可能性あるの…?」


結衣「もし、あの中の誰かが来たら

聞かれる可能性が高いんだ…」


舞「それは…どうして?」


結衣「防音終わってるんだよ…寮の壁…」


舞「あぁ、確かに…」


結衣「聞かれないように対策することは

ほぼほぼ不可能だし、こうするのが

苦肉の策だ…。」


舞「なら、そうしようか…」


結衣「じゃ、準備始めようか…パーティーの。」


舞「買い出し、行こっか…

皆にバレないように。」


ーー


紫央「ねぇ結衣、話って…?」


結衣「…辛い話になるが…これを…」


紫央「…」


紫央「え…?」


結衣「…これは、舞が仕掛けてた盗聴器の

音声だ、本人には気付かれてない…」


紫央「…やっぱり。」


結衣「え…?」


紫央「最初からおかしいと思ってた…」


紫央「あいつ、明らかに様子が変だったし…」


紫央「何より、全部終わって、病気も

治ったはずなのに、悲しそうな顔だった…」


結衣「…なんとなく、何かあったって

分かってたのか…?」


紫央「…うん。」


紫央「あいつは好きなアイドルが結婚したから

元気無くなってたとか言ってたけど…」


紫央「あいつ、アイドル興味ないって

昔言ってたのよ…。」


結衣「…確かに、私も聞いたことある。」


紫央「…私、悪いけど先帰る…」


結衣「え、もう…?」


紫央「…気持ちの整理をさせて。」


結衣「…分かった。」


紫央「…ありがと。」


結衣「じゃあ…」


紫央「うん、またね…」


ーー


紫央「…。」


突然、それはあまりにも突然だった…


一番、大切だった人を失う…


またしても…


虚しい、ただただ虚しさだけが渦巻く…


どうしようもなく、辛い…


私の人生、私の思い出、全ては

あいつのおかげで成り立ってた…


でももう、それも無くなるんだね…

結局、こうなった…


選ばれたのはこの未来。


救いなんて最初っから用意されてなかった…


あぁ…


何でこうなるのかな…


ここまで理不尽だと、もはや涙すら

湧いてこないよ…


何もない…


ただただ、この世界が馬鹿馬鹿しい…。


何もできない自分が、虚しくて虚しくて

仕方がない…。


これじゃ、今までずっと生きてきた

意味が無いみたい…


どうして、こんなことになるのかしら…


何故こんなにも、理不尽なのだろうか…


ーー


楓花「どう言うことなの…」


楓花「 が…死ぬって…!」


結衣「…残念ながら、本当らしいんだ…」


楓花「そんな!どうして…どうして…!!」


結衣「結局、あそこに特効薬なんて

最初っから無かったんだよ…。」


楓花「…そんな…あるんじゃ…なかったの…?」


結衣「…。」


楓花「どうして…どうして…!!」


結衣「どうしようもないよ…こうなるなんて、

私も思いもしてなかったから…」


楓花「私、お姉ちゃんとしてまだ

あの子に何も出来てないのに…!!」


結衣「…すまない。」


楓花「…何で…」


ーー


楓花「…」


悔しい…。


結局私は何もしてあげられなかった…


どうしようもない喪失感に苛まれて、

悲しみが体中に溢れ出していく…


辛いとかもうそう言う問題じゃなくて、

何も出来なかった自分への無力感で、

ただただやるせない…。


もちろん、私だけがこんな

気持ちになったんじゃない…


きっと、みんなそうなんだ…


…そう考えると、あの子は人望もあって、

いい弟だったんだなぁと実感する…


楓花「…。」


…残り、どれくらいあの子と話せるんだろう。


…残り、せめて残りの時間だけは

あの子のお姉ちゃんとして、

一緒に居よう…


…それが、私がお姉ちゃんとしてできる、

最後のことだろうから…


ーー


結衣「…」


今は、目的もなく街をぶらついている…


そういや、この辺りってホームセンターとか

あったよな…


主人公「…」


結衣「…え?」


何で が…しかも、あんな大荷物抱えて…


そういや、紫央にメールしろって

言われてたんだ、誘導のためにメール送ろ…


主人公「…。」


結衣「よし、これで…」


主人公「…」


結衣「…待て、あの方角は寮じゃないぞ…?」


結衣「何処だ…」


結衣「…着いたか…ここは、高台…」


主人公「…」


茂みに荷物を置いた…?


隠れなきゃ…


…行ったかな?


…中身は…


…テントに、練炭…


もしかして、練炭自殺をするつもりなのか…?


メールで舞に送らなきゃ…!


結衣「…。」


結衣「電話…」


結衣「もしもし?」


舞「…メールの内容、本当だったんだね。」


結衣「うん。」


舞「でも、それならしばらく泳がせて置こう。」


結衣「…え?」


舞「多分だけど、 の性格を考えて が自殺する

タイミングはおそらく祭が終わった

翌日以降、あるいは…」


結衣「祭が終わった直後?」


舞「そう。」


舞「それまでは、何も動きは無いはずだから…」


舞「それまで の動向を見計らって、

動きがあったら皆で話そう…。」


結衣「うん…とりあえず、今日、

祭の練習が終わったら鈴さんに の

ことを話すよ…」


舞「分かった、よろしく…。」


ーー


鈴「…え?」


結衣「本当に申し訳無いんだが、

これは全部本当の事なんだ…」


鈴「…え?ドッキリ?ドッキリだよね…」


結衣「…そんな悪質なドッキリ、しないよ…!」


鈴「嘘…でしょ…」


結衣「本当に、すまない…!」


鈴「どうしてなの…」


鈴「何でこんなに頑張った人間ばっかりが

報われないで終わるの…」


結衣「…。」


鈴「こんなの、おかしいよ、こんなの…」


鈴「何で…なんで…」


結衣「…私も、本当に心苦しい…」


結衣「 は私の一番大事な人だったから…」


結衣「気持ちは、大いにわかる…」


結衣「けどもう、これは避けられないんだ…」


鈴「そんな…そんなの酷いよ…」


鈴「祐伸さんも…祐伸さんの娘さんも…

私のお母さんも死んで…みんなが苦労して

頑張って行き着いた先がこれなの…!?」


結衣「っ…」


鈴「酷いよ!こんなの…!」


鈴「どうして…こうなるの…」


結衣「…私は…!!」


結衣「 に、助けられて、救われて、

今生きれてる…!!」


結衣「鈴さんもきっと、 に

救われただろう…!」


鈴「…!」


結衣「そんな救われた私達に出来ることは

一つしかない…!」


結衣「今度は、私達が の為にできる事を

やって、 を救うんだ…!」


鈴「…」


鈴「うん…」


鈴「私も、出来ることはしたい…」


鈴「けどさ…」


鈴「正直、頑張れるか分かんないよ…」


結衣「…!!」


鈴「私、 を救おうとして、救うために

ここまで頑張ってきたんだ…」


鈴「でも、もうどう頑張ったとしても

 は助からないわけで…」


鈴「何か、もう…頑張る気持ちになれないよ…」


結衣「…鈴さん…」


結衣「あなたが何かするもしないも、自由だ…」


結衣「ただ、私はやる…」


結衣「鈴さんがそれでいいならきっと、

それで間違いないんだろう…」


結衣「ただ、このままじゃダメだって

思ったなら、行動に移すんだ…」


結衣「そうすれば、少しでもいい結果になる…

かもしれないから。」


結衣「とにかく、私は鈴さんが少しでも

元気になってくれることを願う。」


結衣「ムードメーカーの鈴さんが

凹んでたら だけじゃなくて

みんな気にするだろうし…」


鈴「…言いたいことは、分かったよ」


鈴「私も、出来ることは頑張るよ…」


鈴「たとえ、無駄だとしても…」


結衣「…それでいい…。」


…そう言った手前、私も

頑張らなくちゃな…。


ーー


鈴「…」


もう、壊れてしまいそうだ…


こんな理不尽な目に合うくらいなら、

最初から生まれてこなきゃよかったとすら

思えてしまう、こんな状況だ…


…結局、みんな死ぬんだ…


不幸な目にあって、救いもなくて…


それで結局、何もなく終わり…


人生って、そんなものなんですか…?


誰も報われず、救いもなくて、痛みだけを

受ける世界…それが普通なんですか…?


神様…教えてください。


どうすれば…この穢れた世界で

生き抜くことができるんですか…?


…返答なんて来るわけない。


…神なんて、所詮は人が生み出した願望、

都合のいい作り話でしかない…。


でも、人はそんなものにすがってしまう…

でも、その理由も今なら分かる。


この世界がそんなものにすがっていかないと、

生きていけないような世界だから…!


だから、存在しないと心の底では理解できても

神が居ることを諦めきれない…


そう考えると私を含めた人の心なんて脆くて、

ふとした瞬間に音を立てて崩れてしまう

物なんだと、思い知らされる…。


誰か…助けてよ…


ーー


舞「…ん?」


舞「 の部屋に葉桜さんがいる…?」


舞「…。」


舞「…やっぱりそう言うことか!」


プルルルル


結衣「もしもし?」


舞「…やっぱり、結衣の言った通りだ!」


結衣「…え?」


舞「 は…紫央の祭が終わった直後に

自殺するんだ…!」


結衣「…やっぱ、そうなんだ…」


舞「…それでさ、一つ思いついたことが

あるんだけどさ、いい…?」


結衣「…なんだい?」


ーー


主人公「…それで?ここに来たと…」


結衣「あぁ…」


主人公「…俺を…止めるつもりか?」


主人公「そんなことしても無駄だ!

俺は止まるつもりなんてない…」


主人公「分かるだろ!?お前達と

一緒にいれない世界に用なんてない、

だから…俺は!」


舞「分かってるよ、だから…」


紫央「私達は の自殺を止めはしない…」


主人公「…え?」


鈴「ただ、その代わりにね…?」


主人公「…おい待て、何でお前らまでテントの

中まで入ってくんだよ…」


結衣「そんなの決まってんじゃん…!」


舞「 と一緒にここにいる私達全員も死ぬ!」


主人公「は…!!?」


結衣「なぁ 、私達も同じだよ…」


主人公「え…?」


楓花「私達は、 や皆がいない世界で

生きてたくはない、と言う結論に至った…」


紫央「それくらい、私達にとっても

 が大切な人だってこと…!」


主人公「…いや…だからって、お前らまで、

こんなことしなくたって…!!」


舞「何言ってるの…?」


鈴「私達は全員、自分で選んでここまで来たの…」


楓花「だからね、みんな と同じなの…」


舞「ここにいる全員、同じ境遇、

そして同じ末路を辿るの…!」


主人公「なんで…何でそんなことを…」


主人公「お前たちが死ぬ理由なんて、

無いじゃないか…!」


舞「…」


結衣「理由なら、あるよ…。」


主人公「…は?」


楓花「私達も、 と同じなの…」


主人公「…さっきから、同じって何だよ…」


鈴「…それはね…」


舞「私達も が居ないと生きていけない

みたいなんだよね…」


主人公「…は?」


鈴「…本当に、こうなっちゃうなんて

思わなかったよ…」


舞「全員ここに来るなんて、私も思いも

してなかったよ…」


紫央「アンタ、やっぱ愛されてるわね」


結衣「関心関心。」


主人公「いや…おかしいでしょ…」


舞「ねぇ…1ついい?」


主人公「…何だ?」


舞「私達は、 に出会えて、一緒に居れて、

心から幸せだった…」


舞「だから、もういいの…」


舞「私達はもう、これ以上は望まない…」


舞「十分幸せなの、これで…」


主人公「なぁ…」


主人公「本当にそんなんでいいのかよ…」


鈴「決まってるよ…」


紫央「これでダメだったら、

ここには来てないよ…」


主人公「…なぁ、本当にそれでいいのか?」


楓花「うん…!」


結衣「私達は、それを望んでる…。」


主人公「…なら、俺も止めないよ…」


舞「…!」


結衣「ありがとう…」


主人公「…。」


主人公「俺は…」


主人公「お前達と出会えてよかった。」


主人公「お前達は俺の人生を

大きく変えてくれた…」


主人公「心から感謝してる、ありがとう…」


舞「いいんだよ、お礼なんて…」


鈴「私達はもう、それ以上の物を から

もらってるから…」


主人公「…!」


舞「みんな、 に感謝してるんだよ…」


舞「んな、 と出会って、人生が

いい方向に変わったからね…」


紫央「うん…」


結衣「紫央なんか、 にベタぼれ

だったもんね!」


紫央「あっ!?コラァ!?」


鈴「あははは、やってるねぇ…」


主人公「あそこは、いつもああだったな…」


紫央「結衣…アンタ…」


結衣「別に、事実じゃん…」


紫央「…っ…むぐぅ…」


結衣「ふふふ、私の方が1枚上手のようだ…」


紫央「むぐぅ…!!」


楓花「楽しいわね、こう言うのも…」


鈴「ですね…」


鈴「私も、そんなに大切な人がいたな…」


鈴「…お母さん、きっと会えるよね…」


楓花「会えるわよ、きっと…」


鈴「ですよね…!」


鈴「お母さんに会えたら、皆の話しよーっと!」


楓花「いいわね…」


主人公「母さん…か。」


主人公「会ってみたいなぁ…」


主人公「どーやったら会えんだろ…」


楓花「その時は、私も一緒に行くわ…」


主人公「お、ご一緒ですか…」


楓花「楽しみが1つ増えたわね…」


紫央「それじゃ、そろそろやる…?」


主人公「そうしようか…。」


結衣「これでこの世界からもお別れか…」


楓花「なーんか、短いようで

長い人生だったね…」


主人公「…ですね。」


紫央「みんな…次でも、一緒だよ…」


主人公「あぁ、約束だ…!」


舞「じゃあ、行こう…!」


そして…俺達は、人生に終わりを告げる。


それぞれがそれぞれの思いを抱え、

今まで生きてきた…


けど、結局みんなこの結末に辿り着いた…


たとえ遠くに居たとしても、

変わらずずっと同じ想いを持ち、

そして…エンディングを迎えた。


大変だったし、悲しいことも沢山あったけど…


結果的には、この結末に辿り着けて、

幸せだったと思う…!


楽しかったぜ…!


ーー


少年「…ここは?」


少年「…」


少年「…え?」


少年「何で…涙が溢れて…」


少年「…あぁ、そうだ…」


主人公「これ、全部俺の記憶だ…!」


主人公「こんな所に…あったんだな…」


主人公「全部、全部思い出した…」


主人公「これが、走馬灯ってやつか…?」


主人公「ははは…最高だよ…」


主人公「懐かしい記憶が、全部、

蘇ってきて…」


主人公「…でも、もう、楽しい時間は

終わりなんだな…」


主人公「ありがとう…最期に

いいものを見たよ。」


主人公「さぁて…」


主人公「俺も行くよ。」


主人公「ありがとう、みんな…!」


ーー


臨時ニュースをお伝えします。


昨夜未明、井産江和衣須島の高台にて

自殺と思われる死体が発見され、

病院で死亡が確認されました。


発見者によりますと、死亡していた男性は

安らかに眠っているようだったとのことです。


ピッ


???「…それがお前の答えか…」


???「…何だか、つまらないな…」


???「なぁ、これでよかったのか…?」


???「…残念だよ。」


なお、その現場からは男女含め6人の

死体が見つかっており、警察は現在この事件を

無理心中として調査しており…


???「…は?」


???「…おいおい…嘘だろ…?」


???「ククク…」


???「ハハハハハハハハ!!」


鵜伏「面白えじゃねぇか…!」


鵜伏「お前ら…本当に最高だよ…!!」


鵜伏「なぁ…おめえらどうやったら

こんなこと思いつくんだよ…」


鵜伏「あぁ…あのときわざわざ自殺の

ふりをして逃げた甲斐があった…」


鵜伏「計画も全部成功したし、今度こそ

安心して死ねるよ…」


鵜伏「最高のストーリーを…ありがとう…!」


鵜伏「フハハハハハハハハハハハ!」


End

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