第9話
鵜伏「なぁ、幽希…知ってるか?」
葉桜「…何をですか?」
鵜伏「この島には桜の他に、美しく咲く
2つの花があるらしいんだ…」
葉桜「…それは?」
鵜伏「エーデルワイスと、スターチスだ…」
葉桜「…聞いたことのない花ですね。」
鵜伏「そんな花が咲く花畑がこの島のどこかに
あるらしくてな、見てみたいんだ…」
鵜伏「花言葉は…何だっけな。」
葉桜「…」
鵜伏「さて、そろそろ仕事に戻んなきゃな…」
葉桜「ええ、そうですね…」
ーー
葉桜「…懐かしいな。」
主人公「…どうした?」
葉桜「いや、ふと昔を思い出したんだ。」
主人公「なんで、そんな唐突に…。」
葉桜「昔鵜伏さんに聞いたんだ、
この島の花畑のこと。」
舞「え、この島花畑なんてあるの!?」
楓花「聞いたことないわね…。」
葉桜「まだ俺も見たことなくてな、
いつか見てみたいな…。」
主人公「…。」
見れるかな…
俺が死ぬ前に、その花畑を…。
紫央「っふう…」
紫央「これ、しんどいわね。」
結衣「そりゃそうだ…。」
紫央「これに加えて当日はめっちゃ思い
甲冑を着て炎に囲まれた中やるんでしょ?
きついなんて次元じゃないわよ…」
結衣「てか、甲冑の中に着物着るって
何なんだよ…。」
紫央「ほんと、こんな激しい動きすんのに
着物と甲冑着るなんて意味分かんないわ。」
主人公「祭の内容初めて知ったんだけど、
そんな大変そうなんだな…」
楓花「大変そうなんじゃなくて大変なのよ…」
主人公「…そうですよね。」
紫央「あー、ちょっと休憩!」
舞「私もちょっとやってみていい…?」
紫央「ええ、いいわよ。」
主人公「舞ならもしかしたら出来るかもな…」
結衣「そうなのか…?」
主人公「ああ見えてあいつ、身体能力
えげつないんだよ…。」
結衣「…確かにそんな感じはするよな。」
舞「…ふっ、ふっ…!」
舞「あぁ、こりゃ確かにきついね…!」
舞「腕と足が張り裂けそうになるよ…!」
主人公「あの舞でそんなにきついなんて…」
結衣「これは中々苦しい戦いになりそうだな。」
紫央「…でも、やるしかないのよ。」
紫央「…よっし、やるからには
死ぬ気でやるわ!」
紫央「休憩終わり!楓花さん、お願い!」
楓花「えぇ…!」
主人公「はえー、頑張るな…」
舞「よっぽど本気みたいだね、紫央…」
結衣「そりゃそうだ、昔から紫央は
お姉さんやこいつのことについては
感情出まくるからな…」
結衣「普段感情出さないのに。」
主人公「てか、俺もふくまれてんのかい!?」
結衣「あぁ、そうさ…。」
結衣「だが、私もあそこまで鬼気迫る
紫央は見たことない…。」
主人公「…確かに。」
紫央「…!!」
主人公「いつにもまして真剣だ…」
結衣「今の紫央なら演舞を完成させることも
可能なんじゃないかって、思えてくるよ…!」
主人公「確かに、ありゃ本物だ…!」
鈴「…よくわかんないけどすごいってことだけ
理解できたよ…!」
舞「よく見たらさっきまでより動き
良くなってるっぽいね!」
主人公「…言われてみれば、さっきよりも
動きが早くなってる…」
結衣「本気になって使える力が増えて、
さらにそこに慣れも加わってるんだよ…」
主人公「だが、あれじゃ疲れも
ぐっと来るだろうな…」
結衣「それをケアするのが私達の仕事だよ。」
主人公「あぁ…」
ーー
紫央「あれ?もうこんな時間…」
楓花「今日はもう終わりにしちゃう?」
紫央「ええ、そうするわ…」
紫央「アンタ達も付き添ってくれてありがと、
明日からもよろしくね。」
結衣「あたぼうよ。」
主人公「そういや紫央、疲れてないか…?」
紫央「…確かに、疲労が溜まってきてるわね…」
結衣「よし、今日は私がご飯を作るよ。」
紫央「え、結衣って料理出来るの?」
結衣「まあまあ自信はあるよ。」
紫央「じゃ、お願いするわ!」
鈴「私も手伝うよ!」
結衣「ああ、頼む…」
主人公「…待ってる間、何しようか…」
舞「昔のことでも話す?」
紫央「そういや、 と舞のこと
聞いてなかったわね。」
主人公「お、それを話すか…。」
舞「いいね、そうしよう…」
主人公「舞との出会いは中々衝撃だったよ…」
主人公「ボロボロで座り込んでる舞が見えて
たまらず俺は話しかけたんだ。」
舞「あの時は本当に嬉しかったよ、あの時
私に味方なんて居なかったから…。」
主人公「舞はいじめを受けてて、それこそ
片目の視力を奪われるほど壮絶な物だった…」
舞「でも、 がいじめっ子を
成敗してくれたんだ…」
紫央「え、そうなの…!?」
主人公「大変だったよ、
いじめの証拠集めるの…。」
舞「ほんとに、 は私にとってヒーロー
だったんだよね…」
紫央「すごいことになったわね。」
舞「ねー。」
主人公「それで、俺にもとばっちりが
来たけどその時は舞が助けてくれたんだ…。」
舞「 を説得するの大変だったよ…」
紫央「…色々あったのね。」
主人公「…待ってくれ。」
舞「何?」
主人公「今思い出したんだが俺って
舞に眼帯買ったよな…」
舞「うん、これでしょ…?」
紫央「それ、いいよね…。」
舞「でしょ?けっこう高かったんだよ…」
舞「これがあれば と繋がってるって、
そんな気がするからずっとつけてるの…。」
舞「だから、私にとってはこれはとても
大切なものなんだ…。」
紫央「なんか、良いわね…そう言うの。」
舞「ま、当の本人は眼帯を買ったことすら
忘れてたみたいだけど…。」
主人公「…悪かったよ。」
舞「冗談だよ、記憶障害のせいでしょ…?」
主人公「…ああ。」
主人公「本当に嫌になるよ、いつになっても…」
紫央「なんとかならなかったのかしらね…」
主人公「しかたないよ、あの鵜伏が
記憶障害を無くさせるように
出来なかったんだから…」
ま、本当は治ってすらいないんだけど…
そんなこと、言えないよ。
舞「あの鵜伏、出来ることならもう一回
死なせてやりたいよ…」
紫央「無理よ…もう死んでるんだから。」
舞「…だよね。」
舞「あぁ、あいつマジでムカつく。」
舞「私の を傷つけやがって、絶対許さない…」
舞「生きてたら即刻首を削いでやったのに…」
主人公「バリアあるから、無理だろ…」
舞「そんなもの破壊すればいいだけでしょ?」
主人公「えぇ…この人怖いよ。」
紫央「本来この子はこう言う物でしょ?」
主人公「…それは…そうだな。」
舞「酷い!」
主人公「だって、事実だろ…」
舞「実際そうなんだけどね…」
結衣「おーい、ご飯出来たよ!」
舞「おっ、出来たか、行こう…!」
主人公「だな。」
紫央「楽しみね…」
ーー
主人公「…美味かったよ。」
結衣「そうか、よかった…」
舞「そういや、演舞ってどうなってるの…?」
紫央「今の所は予定通りよ。」
主人公「よれはよかった…」
紫央「ただ、実戦に備えなきゃだから
大変になってくるのはここからよ…」
舞「うーん、どうにかならないかな…」
紫央「なればいいんだけどね…」
主人公「俺達も手伝えることは手伝う、
だから紫央も祭を成功させられるように
頑張ってくれ…」
紫央「もちろん、そのつもりよ…」
主人公「…なぁ、1つ聞いていいか?」
紫央「ええ、何…?」
主人公「…」
紫央「…何よ?」
主人公「俺、どうしたらいいか分かんないや…」
紫央「どうしたのよ、突然…?」
舞「…。」
主人公「…俺さ、やりたいこととか
分かんないんだよね…何すればいいか
何も思いつかなくてさ。」
紫央「…アンタがそんな事言うなんて、
珍しいわね…。」
主人公「だろ?だからなんか
おかしいなーって思うんだよ…。」
主人公「なんと言うか、自分の中の大切な
何かを失ったって言うか…」
主人公「…分かんないけど、俺の中の
何かが決定的に変わったような、
そんな気がしてるんだよな…。」
紫央「…」
紫央「アンタがそこまで思いつめるなんて、
どうしたの…?」
舞「そうだよ、 らしくないよ…」
主人公「だよな…」
主人公「…」
舞「外に散歩でも行こ?そしたら何か
思いつくかもだよ…」
主人公「…そうかもな…」
主人公「とりあえず、行こうか…」
舞「…うん!」
結衣「…」
結衣「鈴さん、少しいいかな…?」
鈴「うん、どうしたの?」
ーー
…私には1つ、疑問があった…
島に来てからのアイツは、何かが変わっている…
一目見ただけでは分からないけど、何かが
間違いなく変わっている…
私にはそれが何故か分からなかった…
けど、答えは簡単だった。
…記憶障害。
は鵜伏によって記憶障害を起こされて
今じゃ半分以上の記憶を失っている…
…そのせいでその記憶で得た経験を忘れて
たった1つの仕草や言動なんかも変わっている…
私は彼の為にできる事を全てしたい、
そう、思っていた…
…もう、過ぎたことはしょうがない…
前に進むしかないの…
アイツは頼りないけど、私達の事を
大切に思ってくれている…
…引くことは出来ない。
ただ…前進するしかない。
…あの時からそうだ。
私はずっと、大切な何もかもを失ってきた。
ーー
紫央「ねぇお姉ちゃん…」
紫央姉「どうしたの、紫央…」
紫央「今日 が川で変なトカゲを
拾ってきたの…」
紫央姉「え、えぇ…」
紫央「私は逃してきてって言ったんだけど
そしたらね…」
紫央「あいつ、トカゲを食おうとしたのよ…」
紫央姉「…すごいね…逆に…」
紫央姉「私、そんな度胸ないよ…」
紫央「その後あいつ腹下してたから
その感覚が正しいよ…」
紫央姉「あはは…だよね…」
ーー
紫央「どう…して…」
祐伸「…紫央ちゃん…」
楓花「…いい?紫央ちゃん…辛いと思うけど
お姉ちゃんはもう…」
紫央「っ…ぐすっ…」
楓花「…私も辛いよ、お姉ちゃんを
助けられなくて、ごめんなさい…」
紫央「…っ…」
祐伸「楓花ちゃんは悪くないよ…
悪いのは、全部…」
楓花「…雪乃財閥…。」
紫央「…ねぇ…」
紫央「何でお姉ちゃんが死ななきゃ
いけなかったの…?」
楓花「っ…」
紫央「…私が演舞をやっていたら、
お姉ちゃんは死ぬことはなかったんだよね…」
楓花「…」
紫央「私、もう無理…」
紫央「大切な人が、もうみんな居ない…」
紫央「私、これからどうすればいいの…?」
紫央「もう、こんなの耐えられないよ…」
ーー
…あの時の感覚は今でも忘れられない。
お姉ちゃんを死なせた罪悪感と何も出来なかった
自分への軽蔑、自分が助かったことの虚しさ…
辛かったよ…本当に。
私はあれ以来生きる理由を見失ってた…
けど…
アイツが帰ってきて、私はようやく
生きる理由を取り戻した…
…。
主人公「…どうした、紫央?」
紫央「…あぁごめん、ちょっと考え事してた…」
主人公「…そうか。」
主人公「…にしても、最近桜散ってきたな…」
紫央「…そうね。」
舞「この島の桜ってこの島の気候も相まって
散るのが遅いんだっけ?」
主人公「あぁ、そうだ…。」
紫央「あと、高台の桜は原理は分からないけど
一年中咲き続けてるのよね…」
舞「え、そうなんだ…!」
主人公「それが当たり前すぎて、俺達に
とってはもうそれが普通だよな…」
紫央「そうよね…」
舞「そっか、それで慣れちゃうんだ…」
主人公「そう、だから島の人間にとっては
桜は年中見てるから見慣れてんだよな…」
主人公「あの桜っていつからあんだっけ?」
紫央「けっこう最近じゃない?15年前とか…」
主人公「そうなのか?そんな急に
生えてくるものなのか…?」
紫央「不思議よね…」
舞「年代的に、鵜伏が生やしたとか…?」
主人公「いや、ないでしょ…」
舞「だよね…そんな訳…」
紫央「そもそも、あいつにそんなことする
必要性が無いものね…」
主人公「そうなんだよ…何なんだろうな。」
紫央「ほんとにこの島
不思議なことばっかりよね…」
舞「うん、本当に…」
紫央「…そういえば、明日からはもっと
スケジュールを詰めて練習しようと
思ってるの…」
主人公「え、大丈夫なのか…?」
紫央「大丈夫よ、死ぬほどにはしないわ。」
主人公「気をつけてくれよ…」
舞「そうだよ、無理しすぎると体
壊しちゃうかもだし。」
紫央「そうね…気をつけさせてもらうわ。」
ーー
そして、紫央による演舞の練習を始めてから
一週間が経過した…
練習は思った以上に過酷な物で、紫央も
大粒の汗を流しながら演舞に取り組んでいた…
その甲斐もあって、練習は順調に進み、
演舞の内容を既に半分ほど終わらせていた…
そんな中だった…。
鈴「…」
主人公「鈴、ここ最気分が
優れないようだが大丈夫か…?」
鈴「…うん。」
主人公「…無理はするな…」
鈴「ねぇ、 …」
主人公「…何だ?」
鈴「私に隠し事とか…してないよね?」
主人公「…まさか。」
鈴「…そう…。」
主人公「…」
ここ最近、鈴さんに元気がないように見える…
一週間前からずっとだ、
あの鈴さんがここまで暗くなるなんておかしい…
主人公「…なぁ、結衣…?」
結衣「何だ?」
主人公「最近、鈴さんの辺りで
変わった事とかないか…?」
結衣「変わったことか…特にないな。」
主人公「…そう、か…」
結衣「…。」
葉桜「…よう、ちょっといいか…?」
主人公「…何だ、父さん…」
葉桜「ちょっと、来てくれ…」
主人公「分かった…」
結衣「何の話をするんだ?」
葉桜「ちょっと…な?」
結衣「…。」
ーー
主人公「…」
葉桜「んで?結局どうするか決まったか?」
主人公「…あぁ、決まったよ…」
葉桜「そうか、じゃあ…聞かせてもらおうか。」
葉桜「お前の回答を…」
主人公「…父さん、決めたよ…俺は…」
主人公「紫央の祭が終わった後、
自ら命を絶つ…!」
葉桜「…それが、お前の回答か…」
主人公「…あぁ。」
葉桜「悔いは無いんだな…?」
主人公「あぁ…!」
主人公「分かったんだよ、俺の望みが…」
主人公「俺の望みは既に潰えてたんだよ。」
葉桜「…?」
主人公「俺は、あいつらと一緒にこの島で
穏やかに暮らすことを望んでた…。」
主人公「でも、それが叶わないなら、
この世界にもう用はない…」
主人公「俺はこの世界から去らせてもらう。」
葉桜「…」
葉桜「お前ならそう言うと思ってたよ。」
葉桜「 、お前は俺の息子だからな…」
葉桜「俺と似てるよ…」
主人公「…え?」
葉桜「俺はかつて、大切な人を守るために
自らの命を顧みず戦った…」
葉桜「お前らと同じさ。」
葉桜「でも…俺には仲間が居なかった。」
葉桜「…それに、一番大切だった人に…
俺の恋人に殺されたんだ。」
主人公「…!」
葉桜「でも、抵抗すれば助かった…」
葉桜「でも俺が抵抗したら恋人は命が危ない…」
葉桜「雪乃財閥の奴らはきっと
俺の恋人を始末するだろう…」
葉桜「俺には抵抗出来なかった。」
葉桜「俺も、結局お前と似た道を選んだのさ…」
葉桜「…ほんと、俺達ってつくづく
似てるんだな。」
主人公「…父さん…。」
葉桜「あぁ、そういや、本来の目的を
伝え忘れたな…」
主人公「…本来の目的って?」
葉桜「伝え忘れてたんだが…」
葉桜「お前の本土の父さんと母さんが
島に帰ってくるんだ…」
主人公「…!?」
葉桜「きっと会うのはこれが
最後になるだろう…」
葉桜「最後の家族の時間を、楽しんでこい…」
主人公「…あぁ。」
ーー
ガチャ
主人公「…居るか?」
父親「 …!」
主人公「父さん、母さん…」
母親「久しぶり…!」
主人公「久しぶり、だな…」
父親「元気してたか…?」
主人公「あぁ、まずまず…」
まさか、1ヶ月もしないうちに死ぬなんて
口が裂けても言えないしな…
母親「まさか、こんな短期間で雪乃財閥を
摘発できるなんて、すごいじゃない…!」
主人公「…俺じゃなくて、みんなが
上手くやってくれたんだよ…」
主人公「…あと、1つ聞きたいことが
あるんだが、いいか…?」
父親「あぁ、何だ…?」
主人公「この島の高台の桜って、何で
年中枯れないんだ…?」
父親「…」
母親「…」
父親「あの高台の下でな?」
父親「お前の父さんが、葉桜さんが
死んだんだよ…」
主人公「…は?」
父親「そこには多くの大野家の人間がいた…
だが助かったのは俺達だけだったんだ。」
主人公「…。」
母親「あそこで大野家の人間が死んで、そこに
埋めて証拠を隠滅するために高台に桜を
作ったの…。」
主人公「まさか、鵜伏が…!?」
父親「…そうだ。」
主人公「…まさか、そんなことだったなんて…」
主人公「…すまなかった。」
父親「…いいんだ、もう過ぎたことだ…。」
その後は、普通に会話した…
最近島であったこととか、色々と…
話してると、何だか時間を
忘れてしまいそうになる…。
父親「っ、そろそろ時間だ…」
母親「実は、明日父さんのお友達の
お葬式の準備をしなきゃだから早めに
帰らないと行けなくて…」
主人公「…そう、だったか…」
父親「…また、来るよ…。」
主人公「…最期に、1つだけいいか?」
母親「…何?」
主人公「島での親が居なくなって身寄りが
なくなった俺を本土で最後まで
育ててくれてありがとう、感謝してるよ…」
主人公「この恩は忘れない…」
主人公「…じゃあな…」
父親「ちょ、ちょっと!?」
主人公「…。」
…もう、二人と過ごした日々は帰ってこない。
今日、改めて話してみて父さんや母さんと
過ごした日々は楽しかったんだなと実感する…
…それだけに…
主人公「…」
ポロッ
涙が、溢れてくる…
いつか、終わりは必ず来る…
なのに…
どうしようもなく、深い悲しみに
包まれてる…
親だったから悲しいわけじゃない…
大切な人ともう会えないから、
悲しいんだ…
今なら分かる、大切な人を失う気持ちが…
あいつらともいつか別れる時が来る、
その時には…
どうか、あいつらが笑顔でいてくれることを
切に願う…。
ーー
紫央「ふぅ、大体これで大丈夫かな…」
楓花「うん、これで祭に出ても
大丈夫だと思う…!」
紫央「っふぅ…完成ね。」
舞「祭への残り日数は?」
鈴「…4日!」
結衣「4日…4日かぁ…」
紫央「…もう、4日しかないのね。」
主人公「…まさかこんなに余裕を持って
完成させられるなんてな。」
楓花「とりあえず、みんな疲れただろうし
休みましょ…」
主人公「そうですね…俺もそろそろバテそう。」
舞「そう言えばさ、葉桜さんが言ってた
花畑ってまだ行ってなかったよね。」
結衣「そういや、そうだったな…」
紫央「じゃ、疲れが取れ次第直行する…?」
主人公「え、今日…?」
葉桜「今日行って大丈夫なのか…?
それに、場所も分からないし…」
結衣「いや、実は私そこの場所
知ってるんだよね…」
主人公「え、マジか…!」
楓花「じゃあ、すぐにでも行けるかな…」
主人公「でも、今は疲れを
取ることが最善だ…。」
葉桜「それに、早めに終わったから時間も
たっぷりある、休憩してからでも
遅くはない…。」
鈴「じゃ、ひとまず休憩しよ…」
舞「はーい…」
ーー
紫央「ふぅ、完全復活!」
楓花「私も、もう大丈夫!」
主人公「うっそだろあいつらまだ
休憩してから30分も経ってねぇぞ…」
結衣「さぁて、楽しみだな…」
舞「そういや、花畑にはどんな
花が咲いてるの…?」
葉桜「エーデルワイスと、スターチスだ…」
楓花「え、聞いたことない…」
紫央「エーデルワイスってどっかの
曲で聞いたことある…何だっけ?」
葉桜「たしか花言葉に大きな意味が
込められてるらしいんだけど、
忘れちまったな…」
主人公「忘れたって、俺かよ…」
結衣「どんなのだろ、花言葉って…」
葉桜「行ってみれば思い出すさ…」
ーー
結衣「よし、ここだな…」
紫央「こんな森の奥に花畑なんてあるの…?」
結衣「あるんだよ…!」
結衣「よっし、ここだ…!」
そこには、辺り一面に広がる
大きな花畑があった…
主人公「う、うぉぉ…」
葉桜「こ、これは…これが…」
楓花「綺麗…」
紫央「これ、合成とかじゃないのよね、
全部本物なのよね…」
結衣「あぁ…」
結衣「懐かしいなぁ、親から逃げる時に
偶然見つけた時の衝撃は忘れられないよ…」
舞「こんなのが、この世にあるなんて…」
主人公「すごいよな…俺って花とかあんま
興味ないんだけどそれでも十分に
目を引かれるよ…。」
葉桜「…思い出した。」
葉桜「花言葉は…」
葉桜「エーデルワイスが大切な思い出、
スターチスが変わらぬ心…。」
主人公「…。」
葉桜「…なぁ。」
主人公「…何だ?」
葉桜「綺麗だな…」
主人公「本当、そうだな…」
葉桜「この先まで、永遠に続いてそうな
気すらするよ…」
主人公「俺も、同じことを考えてたよ…。」
結衣「ここに皆を連れて行きたかったんだ、
ここ、すごく綺麗だから…。」
主人公「あぁ、すごいよここは…」
紫央「…」
紫央「ねぇ、 …」
主人公「何だ?」
紫央「私、実は、アンタのことが…」
紫央「えっと、その…」
紫央「すっ、す…」
舞「ねぇー!みんなー!」
紫央「わっ!何よもう…」
主人公「ど、どうした、」
舞「花冠作ってみたよ、被ってみて…!」
主人公「あ、ありがとう…」
紫央「私も…」
主人公「…紫央…」
紫央「何…?」
主人公「それ、似合ってる、綺麗だよ…」
紫央「えっ、ええっ!?」
紫央「え、あ、ぁ…」
舞「…むー。」
主人公「…?」
楓花「ここ、いいわね…」
楓花「…ねぇ。」
主人公「…何ですか?」
楓花「私… と出会えてよかったよ。」
主人公「…」
楓花「遠く離れていたとしても、やっぱり
私の弟だよ…」
主人公「…」
主人公「俺も、同じ気持ちだよ、姉さん…」
楓花「っ…!」
楓花「…」
楓花「ねぇ… 。」
主人公「…どうしました?」
楓花「…フフフ、」
楓花「大好き、だよ…」
主人公「…!」
結衣「あー!そっちだけずるい!」
楓花「ゆっ、結衣…!?」
結衣「何してんのー!」
紫央「あれよ、夫婦の営みってやつ。」
楓花「ええっ、ちょっ、そんなんじゃ…」
舞「ね〜ぇ〜、二人とも〜?」
主人公「っ、はいぃっ!?」
舞「夫婦の営みってな〜に〜?」
主人公「あ、あぁぁ、やばい…」
主人公「助けて、姉さん…」
楓花「…健闘を祈るわ…」
主人公「どうしてだよぉぉぉぉ!?」
ーー
主人公「ふぅ…もう朝か…」
主人公「あの後舞にとっちめられたから
全然寝れてねぇよ…」
主人公「あぁ…」
主人公「二度寝しよ。」
そう、思った…
次の瞬間だった。
う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!
主人公「ぎゃぁぁ!?」
主人公「うるっせえよ、こんな朝っぱらから…」
ガチャ
鈴「 、ごめん、匿って!!」
主人公「え、な、何で…」
鈴「舞ちゃん、まだ昨日のこと
根に持ってるみたいで…」
主人公「えぇ!?何でだよ!?」
鈴「っ、来た!」
主人公「えぇ!!」
ガチャ
主人公「てか、何で鈴、俺の家に
入れてんの…」
鈴「乙女の秘密、って奴だよ。」
主人公「何じゃそりゃ…」
舞「ね〜ぇ〜二人とも〜?
ここに居るんでしょ〜?」
主人公「こっわ…」
舞「出てきなよ〜、怒ってないから〜。」
鈴「絶対怒ってるよね!?
あれ絶対怒ってるよね!!?」
主人公「そのようだ…」
舞「見つけたら…【検閲済み】…」
主人公「【検閲済み】はもういいよぉ!?」
舞「…あ!」
主人公「…え?」
舞「…」
主人公「…」
舞「…」
主人公「あの…」
舞「な〜に?」
主人公「見逃してもらえませんでしょうか…」
舞「や〜だ♡」
主人公「holy shit.」
舞「処す。」
主人公「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
舞「待てやあぁぁぁぁ!!」
鈴「…」
鈴「健闘を祈るわ、ご武運を。」
ーー
主人公「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
舞「待てえええぇぇぇぇ!!」
舞「私に【検閲済み】して【検閲済み】
する【検閲済み】になれぇぇぇぇ!!」
主人公「いやぁぁぁぁ!?」
こいつ、何回【検閲済み】って言えば
気が済むんだよ…味しめてんのか…
結衣「あ、二人とも…」
舞「おらぁぁぁぁぁぁ!!」
主人公「助けてぇぇぇぇぇ!?」
結衣「…。」
結衣「ハァ…」
結衣「どうしたもんかな。」
葉桜「…なぁ、ありゃ何だ」
結衣「私に聞かれましても…」
葉桜「…そうか。」
主人公「うわぁぁぁぁぁ!!」
舞「待てぇぇぇぇぇぇぇ!!」
主人公「ダメだ…もう、体力が…」
舞「アハハ、もうバテてるの?
私はまだまだ元気だよ…!」
主人公「お前の体力、どうやってんだよ…!!」
舞「待て待てー!」
紫央「…ん、何してんの?」
主人公「し、紫央…」
紫央「…え、何、どうしたの…」
主人公「パス。」
紫央「え…?」
舞「あは…あははは…」
紫央「え、な、何…?」
舞「待ってぇぇぇぇぇ!?」
紫央「えぇぇぇぇぇぇ!?何で私ぃぃぃぃ!?」
紫央「いやぁぁぁぁ!?」
主人公「…助かった。」
舞「って、なるか!」ベチ
主人公「いって、何すんだ…あ?」
舞「…。」
舞「えへへ。」
舞「つっかまーえ…」
主人公「させるかぁ!?」
舞「あ、待てぇ!?」
楓花「ん?あれは…」
主人公「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
舞「待ちなさぁぁぁぁぁぁぁい!!」
楓花「…」
楓花「楽しそうね。」
ーー
主人公「ふぅ、なんとか撒いたけど…」
主人公「死ぬかと思った…」
主人公「…」
主人公「こんなこと、出来るのも
あと3日だけなんだよな…」
主人公「あぁ…辛いや…。」
主人公「…移動すっかな。」
結衣「…やぁ。」
主人公「うぉっ、結衣…?」
結衣「どうした、そんな驚いて…」
主人公「いや、突然現れたもんだから…」
結衣「ま、いいじゃないか…」
結衣「それより、昔話でも
しようじゃないか…。」
主人公「昔話…?」
結衣「それは、まだ が島に居た頃…」
ーー
結衣「…」
紫央「…何してんの?」
結衣「いや、靴ずれが痛くて…」
紫央「だからって、傷を剥がすのは
どうかと思うけど…」
結衣「…癖なんだ。」
主人公「おーい、お前らどうした?」
結衣「靴ずれが痛くてさ…」
主人公「んなもんつばつけときゃ
治るでしょ…」
結衣「いや…でも…」
主人公「なんだったら俺の唾でも
つけとくか?」
結衣「え、えぇ…」
主人公「…」
結衣「あれ、ねぇ待って、本当に
やろうとしてる?ちょっと、待って、ねぇ、
落ち着こう?一旦落ち着いて、ね?」
主人公「…」
そう言って、唾を傷につけた…
結衣「ひゃっ!」
主人公「…?」
結衣「ん、んんっ…」
主人公「ん?あれ…赤くなってる?」
紫央「ハァ…アンタねぇ…」
主人公「な、何…?」
紫央「そりゃ、そんなことすれば
ああもなるわよ…」
主人公「えぇ、ダメなの…!?」
紫央「そりゃそうよ…」
主人公「えぇ、ダメなのか…」
ーー
主人公「…確かにあったな、そんなこと…」
結衣「私、あれで絶対性癖歪んだよ…。」
主人公「そ、そんなに…?」
結衣「この責任は、取ってもらうから…」
主人公「ヒ、ヒエェ…」
主人公「…そういや、俺も1ついいか?」
結衣「ん、何だい?」
主人公「俺が覚えてる数少ないことなんだが…」
ーー
結衣「あーつーいー…」
紫央「今年の夏どーしてこんな暑いのよ…」
主人公「こりゃ冷房付きの部屋に篭って
ゲームするに限るわ…。」
結衣「何でこんな状況下で10時間ぶっ続けで
勉強させてこようとすんだよ、あの親は…」
紫央「えぇ…酷…」
主人公「結衣は大変なんだなぁ…」
結衣「当たり前だよ…休み無しだよ?」
主人公「俺だったら途中で熱中症になって
やられるな…」
紫央「私も…」
結衣「うーん…私も耐えられるか分からない…」
主人公「世の中ってのは理不尽なんだな…」
結衣「ねー…。」
ーー
結衣「懐かしいね…そんなこと喋ったね。」
主人公「あの後紫央が何でか知らんけど
鼻血出してぶっ倒れてたよな…」
結衣「え、あれって が紫央に引っ付いて
頭を撫で回したからじゃなかったっけ…」
主人公「昔の俺何やってんの!?」
結衣「あの後血相変えた紫央の親に
怒られてたよね…。」
主人公「あれはマジで怖かった…。」
結衣「ま、私は巻き込まれなかったけどね!」
主人公「ひでぇよ…」
紫央「楽しそうな話してんじゃない、
私も混ぜてよ…」
主人公「うわっ、紫央、どっから出てきた!?」
結衣「おはよう、紫央…。」
紫央「私もちょっといいかしら…」
結衣「それは、一体何だい…?」
紫央「…確か、結衣と出会ったばっかの時…」
ーー
主人公「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
紫央「フフフ…甘いわね!」
結衣「…何してんの?」
紫央「格ゲーよ、格ゲー…」
結衣「か、かくげ…?」
主人公「あぁ、結衣ってずっと縛り付け
られてたからゲームの存在を知らないんだ、」
紫央「あー…なるほど。」
紫央「いい?ゲームってのは…」
結衣「…へー…。」
結衣「私もやってみていい?」
主人公「あぁ、いいぞ…」
ーー
主人公「うわぁぁぁぁぁ!!」
紫央「ぎぁぁぁぁぁぁ!?」
結衣「ま、また勝った…」
主人公「じょ、上達早すぎだろ…」
紫央「中々、センスあるわね…」
結衣「あ、ありがと…」
主人公「もう、俺らなんか足元にも
及ばないよ…。」
結衣「…」
紫央「…にしてもさ。」
紫央「 …さっきからキャラの
胸ばっか見てない…?」
主人公「…はえ?」
紫央「これは…「お仕置き」が必要みたいね…」
主人公「え、ちょ、待っ…」
ちょ、待って、本当に、本当にやめて、
ちょ、ちょっとそれだけは、ま、ちょ、
ギャァァァァァァァァァ!?
結衣「…えぇ。」
ーー
主人公「う…思い出しなくない記憶が…!!」
結衣「…心を抉るね…」
紫央「また、「お仕置き」して
あげましょうか…?」
主人公「い、嫌だ…【検閲済み】は嫌だ…!」
結衣「えぇ!?いや、あれの内容って
【検閲済み】だったのかよ!?」
紫央「えぇ、そうよ…」
結衣「ちょっと、知りたくないことを
知ってしまった…」
結衣「てか、何でその年で【検閲済み】なんて
してんだよ、おかしいって!」
主人公「あぁ、本当に…」
結衣「【検閲済み】の先駆けは、舞ではなく
紫央だったんだ…」
結衣「…」
結衣「いや、なんだよ【検閲済み】の
先駆けって!?」
舞「呼んだ?」
主人公「いや呼んでな…」
主人公「…」
ダッ
舞「こらぁ!無言で逃げるなぁ!!」
ダッ!
紫央「…本当、元気よね…」
結衣「いいじゃないか…」
紫央「【検閲済み】…」
結衣「そうか、君もそっち側の
人間だったんだな…」
紫央「結衣、あなたもこっち側の…
【検閲済み】の勢力に…」
結衣「死んでもやだ!!!」
紫央「そ、そう…?」
結衣「本ッ当に…舞より紫央の方が怖いよ…」
紫央「流石にあの子の方が怖いでしょ…」
結衣「いや、紫央のが怖い…」
紫央「え、えぇ…そんな…」
ーー
舞「まさか、 が【検閲済み】の経験者
だったなんてね、びっくりだよ!」
主人公「んなんしたくてしてる訳じゃねぇよ!」
舞「これは…口は強情でも、体は
素直ってやつ…?」
主人公「んな訳あってたまるかよ!?」
舞「ま、とにかく捕まえれば分かることだから!」
主人公「尚更捕まりたくねぇぇぇぇ!?」
主人公「あ、あんな所に俺が!」
舞「え!どこ!?」
主人公「今だぁぁぁぁぁ!!?」
舞「え、ちょ、待って!!」
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ーー
そして、俺は無事に帰宅した…
その後何故か俺の代わりに捕まった鈴は
舞にボコボコにされたらしい…
…え?その後逃げ切ったって…?
…。
あの人スゲえな…
ーー
主人公「…。」
鈴「…」
主人公「なんで朝起きたら鈴が
俺にのしかかってんだよ…」
鈴「…昨日の仕返し…」
主人公「あ、それは本当にごめんなさい…」
鈴「フフフ、分かればよろしい…!」
主人公「…ちょっろ…」ボソッ
鈴「私はちょろくないやい!」
主人公「わぁ!?地獄耳!?」
鈴「…そう言えばさ…」
鈴「1つ、思ったことがあるんだけどいい?」
主人公「…何?」
鈴「葉桜さんって、普段何してんだろうね…」
主人公「…あー、確かに…」
主人公「父さん、警察の人とも面識あるし、
人間兵器なのに遊園地とか行けてるし…」
鈴「葉桜さんは、果たして何者なのだろうか…」
主人公「本当に、謎だな…」
鈴「葉桜さんと一番一緒に居ても、
分からないこともあるんだね…」
主人公「父さんは、そう言うことをあまり
晒さない人だからなぁ…。」
鈴「…調べてみる?」
主人公「一回、やってみるか…」
鈴「でも、どこに居るんだろう…」
葉桜「ここに居るぞ。」
鈴「きゃぁぁぁ!?」
主人公「いつから居た?」
葉桜「最初っから。」
主人公「まじかい…」
葉桜「俺は貯金無駄に多いから
自由の身なだけだぞ…」
主人公「…そう言うことなのね…。」
鈴「思ったより単純だった…」
葉桜「じゃ、俺はこれで。」
主人公「…。」
鈴「やっぱあの人の生体謎だね。」
主人公「うん…本当に。」
ーー
ピンポーン
主人公「客か…?珍しい。」
主人公「はーい、今出ます!」
ガチャ
楓花「…おはよう。」
主人公「姉さん、どうしたんだ…?」
楓花「いや、顔でも除きに来ようと
思っただけだよ…。」
主人公「左様ですか…」
楓花「…にしても、前から思ってたんだけど
部屋、綺麗だね…」
主人公「そうですか…?」
楓花「私、部屋けっこう散らかしちゃうから…」
主人公「…そう言う所は
受け継いでないんですね、俺は…。」
楓花「葉桜さんがきっと片付け上手いんだよ…」
主人公「…あり得るな、俺父さんからの方が
遺伝してる要素多そうだし…。」
楓花「あー、私も片付け上手くなりたいなー。」
主人公「練習、しなきゃですね…」
楓花「はーい…」
主人公「…。」
ーー
舞「おっじゃまし…」
主人公「さぁ、どうします?
どちらを引きますか…?」
楓花「く…何で、追い込まれてるのにそんな
余裕なの…?」
主人公「分かるんですよ、楓花さんなら
絶対にババを引くって…。」
楓花「…どっち…?」
舞「なにこの茶番…」
主人公「さぁ、引きましょうよ…?」
楓花「っ…」
楓花「こっち!」
主人公「あ、ちょそっちは…」
楓花「やったぁ!」
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
主人公「だから!だから言ったじゃん、
そっちダメだって…」
舞「分かるんですよ、楓花さんなら絶対
ババを引くって…って言ってた人の
セリフじゃないよね。」
主人公「うるせぇ、そんなに言うなら
舞もババ抜きやれよ!」
舞「しょーがないなぁ…」
舞「サクッと、やってあげるよ。」
ーー
ガチャ
結衣「失礼するよ…」
主人公「ハァ、ハァ…」
舞「がんばえ〜」
楓花「ウフフフ…」
主人公「何でまたこの戦いなんだ…」
結衣「…何これ?」
舞「暇人の遊び。」
楓花「てりゃ!」
主人公「うわぁァァァァァァァァ!?」
楓花「いぇーい!」
主人公「そんな…あんまりだ…」
結衣「…無様だね。」
主人公「るっせぇ!そんなに言うなら
結衣も…」
結衣「仕方ない、私の力とくとお見せしよう…」
ーー
ガチャ
紫央「おはよ…」
主人公「はぁ、はぁ、勝てる…」
主人公「今回は俺が引く側だ…!」
楓花「…まずいね…」
紫央「何なのこれは。」
結衣「敗者決定戦。」
紫央「…えぇ。」
舞「おらー!根性見せろー!」
主人公「あぁ…」
主人公「ご所望通りに!」
ペラッ
J O K E R
主人公「…はえ?」
楓花「そこっ!」
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
舞「あははははwもうここまで来ると
笑えてくるわねw」
主人公「勝てない…何で勝てないんだ…」
紫央「アンタ…アホ?」
主人公「うるせぇ、そんなに言うなら…」
紫央「わかってるわ、私もやるんでしょ…」
ーー
ガチャ
鈴「また来たよー!」
主人公「はぁ…はぁ…」
楓花「…」
主人公「何で毎回こうなんだよ…!?」
鈴「トランプ?」
紫央「今、ずっと5回くらい最後この
対面らしいわよ…」
鈴「そんなに偏ることあるんだ…」
舞「ちなみに全部 が負けてる!」
鈴「な、なんて負け運…」
楓花「こっちを引くよ!」
主人公「よっし!そっちはJOKERだ!
次のターンで俺がJOKERじゃない方を
引ければ俺の勝ち…」
結衣「あれ?これジジ抜きじゃね…?」
主人公「…え?」
楓花「よし、上がり!」
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
紫央「…もう、ここまで来るとお約束ね。」
舞「もうあれ、負ける事を狙ってんじゃないの?」
主人公「だ、誰がぁ、悲しくてそんなこと、
しなくちゃいけないんだよぉぉぉぉ!?」
鈴「悲しい、運命だね…」
主人公「う、うる」
鈴「あ、私もやるねー!」
主人公「…。」
ーー
葉桜「お前ら、元気してっか…?」
主人公「はぁ、はぁ…最初っから
3枚だったのに何でまだ上がれてないんだよ…」
楓花「もう、私しか残ってないね。」
舞「もう、楓花さんこの状況になんの
焦りも感じてないよ…。」
結衣「慣れてしまったんだよ…」
紫央「そんな慣れ、嫌ね…」
鈴「頑張れー!」
主人公「こっちだぁぁぁぁぁぁ!!」
ペラッ
J O K E R
楓花「よいしょ。」
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
舞「…ってのを40分くらい前からずっと
ぶっ続けでやってます!」
葉桜「よくもまぁ飽きねぇよな…」
主人公「ち、畜生…」
葉桜「…お前も大変みたいだな…」
主人公「う、」
葉桜「俺もやるよ。」
主人公「まだうとしか言ってねぇよ!?」
ーー
その後も、俺は負け続け…そしてついに。
主人公「うわぁぁぁぁ!!」
鈴「えぇ…また負けたの?」
紫央「うっそでしょ、これで30連敗よ…」
舞「えぇ!?そんなに負けてんの…」
主人公「心が、折れそう…」
楓花「…なんか、ごめん…」
主人公「そうだ、俺でも勝てるやつやろう、
そうだ、7並べだよ!あれ俺得意だしさ!」
紫央「おっけ、じゃ、7並べやりましょ。」
舞「うーん、嫌な予感がする…」
結衣「実は、私も…」
ーー
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鈴「いや、何で…!?」
舞「や、やっぱり…」
主人公「なんだよ1二枚にk三枚qに
2四枚って! 」
紫央「えぇ、引き運悪すぎでしょ…」
楓花「まさか、こんな序盤に終わるなんて…」
舞「いや、でもこれは切った人が悪いよ…」
結衣「確かにそうだ、で、切ったの誰だ?」
主人公「俺だ…」
紫央「自業自得じゃねぇか!!」
主人公「なんでぇ!?」
葉桜(悪いな…俺、お前が持ってた奴の
8とか6とか全部止めてたんだ…)
葉桜(でも、どっちにしろ は
死んでたろうからいいか…)
ーー
主人公「…んで?」
主人公「…俺は何をやらされてんだ…」
結衣「決まってんじゃん、
「お仕置き」だよ!」
主人公「っ…!?結衣、まさか、お前も
あっち側の人間に…!!」
結衣「誰がなるか!!」
主人公「にしても…これは何だ?
拘束されて…」
結衣「決まってるだろう、 は今から
私と【検閲済み】をするんだよ!」
主人公「いや、お前も対して変わんねえよ!!」
結衣「えぇ?あんなのの100倍マシでしょ。」
主人公「いや、むしろ悪化してるわ!」
結衣「えぇ…ダメ?」
主人公「ダメです…」
結衣「むうぅ、いじわるぅ…♡」
結衣「…チラッ?」
主人公「…。」
結衣「チラッ?」
主人公「…。」ベチッ
結衣「いでっ!?」
結衣「何すんだよこのアホタレ!!」
主人公「本性を出したな、この
【検閲済み】女め…」
結衣「いいだろ、【検閲済み】は最高だ!」
主人公「お前…どこでそんなに性癖を
歪ませてきてしまったんだ…!?」
結衣「さぁ…?どこでしょうねぇ…」
結衣「ウフフフフ…」
主人公「…お前…」
主人公「…」
結衣「…?」
結衣「?何…?」
主人公「…。」
結衣「ねぇ、何?何?」
主人公「じゃあな。」
結衣「…え?」
ダッ…
結衣「…。」
結衣「はぁっ!?」
結衣「あの野郎…!」
結衣「待てやぁぁぁぁ!!?」
ーー
主人公「…」
紫央「あ、逃げられたのね…」
主人公「あぁ、何とかな…。」
主人公「…」
主人公「そう言えばさ…」
紫央「ん?どうしたの…?」
主人公「…もし、あと2日で人生が
終わるってなったらどうする…?」
紫央「…。」
紫央「出来ることは、全部するわ…」
紫央「全ては…」
紫央「…何でもない。」
主人公「…?どうした?」
紫央「いいの、何でもないから…」
主人公「そうか…」
紫央「…ねぇ、私からも質問いい?」
主人公「…何だ?」
紫央「…もし、この世から自分の一番
大切な人が居なくなるとしたら、どうする…?」
主人公「…俺は…」
主人公「生きてけないかもな…」
紫央「…私も。」
紫央「生きていける自信なんてないわ…」
主人公「…だよな。」
紫央「…今日はもう帰るわ…」
主人公「俺も、じゃあな…。」
ーー
主人公「…。」
俺が生きてられる期間は、今日と明日だけか…
主人公「よし、今日、やり残したこと
全部やってしまおう…!」
主人公「実質、やりたいことが出来るのは
今日で最後だしな…。」
主人公「…とりあえずテレビでも見るか。」
主人公「…え、この島にラーメン屋
出店すんの…?しかも有名な店…」
主人公「あぁ…行きたかったなぁ…!」
主人公「いいなぁ…俺も行きてぇよ…」
主人公「でも、無理だよ…」
主人公「そうだ、ゲーム最近やってなかったし
やってみるか…」
ーー
主人公「よっしゃぁ…!倒した…!」
主人公「…って、もう午後の7時かよ…!」
主人公「今日は誰も来なかったし、
のんびりしてたなぁ…」
主人公「…たまには、こう言うのもいいな!」
主人公「…って、これで最後なんだけどな…」
主人公「楽しみだなぁ…明日の祭。」
主人公「寝付けるかなぁ…」
主人公「ま、なんとかなるだろ…」
そして、俺は人生最後の眠りにつく…
ーー
主人公「…おはよう。」
主人公「…さて、人生最後の朝飯でも食うか…」
主人公「人生最後の朝飯は…目玉焼きでいっか。」
ーー
主人公「祭りは11時からだよな、とりあえず、
開催地へ行こう…!」
そして、祭が開催される神社へと向かう…
紫央「あ、おはよう!」
主人公「紫央、おはよう…!」
紫央「まだみんな来てないわね…」
主人公「だな、まだ来ないか…。」
紫央「…ねぇ。」
紫央「二人っきりだしさ。」
紫央「…手、繋いでもいい…?」
主人公「どうした、突然…。」
紫央「い、いいじゃない、突然でも…」
主人公「…分かったよ。」
紫央「…//」
主人公「何照れてんだよ、自分から
言っておいて」
紫央「しっ!仕方ないじゃない…
だって…だって!」
紫央「あぁもう…皆にはこんな姿
見せらんないわね…」
主人公「…だな。」
結衣「…フフッ。」
舞「邪魔しないであげよ、今は…」
鈴「だね…」
楓花「あの子の演舞、楽しみね…」
葉桜「…あぁ。」
ーー
紫央「よっし、これで全員揃ったわね…。」
葉桜「おうよ。」
紫央「じゃ、私は演舞の準備に行くから
みんなは祭を楽しんで!」
主人公「あぁ!」
舞「行ってらっしゃい!」
結衣「頑張ってな!」
主人公「…さて、と…。」
舞「私、焼きそば食べたい!」
結衣「私はたこ焼き!」
楓花「わたあめ食べたい!」
鈴「お肉食べよ!」
主人公「はいはい、順番ですからね…」
葉桜「じゃ、手っ取り早く行くぞ!」
ーー
楓花「んー♡おいしー!」
鈴「はむはむ…」
舞「おいし…。」
結衣「あっつ!?」
葉桜「…食い意地だけはあるんだな。」
主人公「…って言ってる俺ら食ってんのは…」
葉桜「…りんご飴。」
主人公「俺らも大概だろ。」
葉桜「だな…。」
葉桜「機械になっても、りんご飴はおいしい…」
主人公「ほんと、人間兵器って都合いい体の
形状してるよな…」
葉桜「本当、そうだよ…。」
主人公「結局、人間は食欲なんだな…」
葉桜「あぁ、本当そうだよ。」
舞「あー!次あれ食べたい!」
結衣「あれとかいいんじゃない!」
主人公「…忙しくなりそうだな。」
葉桜「あぁ…。」
主人公「…どうせ最後なんだ、目一杯楽しむぞ!」
葉桜「あぁ!」
主人公「じゃ、行こうぜ…!」
舞「うん!」
ーー
主人公「ふぅー、食った食った…」
楓花「美味しかった…。」
舞「あとは、紫央の演舞を見るだけね…!」
鈴「紫央ちゃん…大丈夫だよね…」
主人公「あいつなら、絶対成功させられる、
だから…信じよう。」
結衣「そうだ、あいつは強い、だから
成し遂げられるさ…」
鈴「…うん!」
楓花「じゃあ、行きましょう…!」
ーー
紫央「…」
衣装には着替えた、準備は終わった、
練習も問題ない、あとは…
葉桜「…不安か?」
紫央「葉桜さん…居たの?」
葉桜「あぁ…」
葉桜「それより、不安そうだな、大丈夫か…?」
紫央「…。」
葉桜「覚悟が決まってないのか…?」
葉桜「…この際、はっきり言わせてもらう。」
葉桜「お前は何のためにここに立っている…?」
紫央「…!」
葉桜「過去の姉に報いるためか?
過去の過ちを正すためか?それとも、
このまま心に恥を抱え続けないためか…!?」
葉桜「あんなに汗を流して苦しみ続けた
日々は何だったんだ…」
葉桜「答えろ、今お前は何の為ここに
立ってる、何が目的だ…!」
紫央「…それは…」
紫央「お姉ちゃんの…無念を晴らすため…」
紫央「お姉ちゃんに、弱い私じゃなくて、
強くなった私を見せたいから…!」
葉桜「…そう、なんだな…」
紫央「間違いないわ…!」
葉桜「…それでいい。」
紫央「これが最後だから、どうせなら
絶対に成し遂げたいの…!」
葉桜「…。」
紫央「…ありがとう、葉桜さんの
おかげで肩の荷が降りたわ…」
葉桜「例には及ばないさ。」
紫央「それじゃ、行ってくるよ…見てて。」
葉桜「あぁ、楽しみにしてる。」
紫央「私…もう、負けないから…!」
葉桜「…」
葉桜「あいつ…いや、あいつら、
何するつもりだ…?」
ーー
楓花「…っ、来た…!」
主人公「紫央…ッ!」
紫央「…」
あぁ…やっぱ熱いわね…!
練習でやったより熱い、焼け死にそう…
でも、私は…
紫央「負け…ない!!」
ドンッ!
主人公「よしっ!」
舞「第一段階は成功だね…」
鈴「頑張って…紫央ちゃん!」
ハァ…ハァ…覚悟は、とうに、決めた、
はずなのに…!
紫央「やばい…かも…!」
紫央「っ、でも…」
紫央「ここで諦めたら…」
紫央「あっちに行った時に…」
紫央「お姉ちゃんに…」
紫央「顔向け、出来ないっ!!」
ドォン!
主人公「よぉっし!」
楓花「第二段階も行ったわね…」
舞「あとは、最後の第三段階だけ…!」
もう…限界…
体に…力が…入らないよ…
こんな…所で…
鈴「っ、紫央ちゃん、まずいかも…」
結衣「はっ…紫央!」
主人公「っ…」
主人公「紫央ーッ!」
紫央「っ…」
あいつ…
主人公「負けるな、最後まで、絶対に…!」
主人公「お前の、すべてを、今、
俺達に見せてくれ…!」
紫央「…」
紫央「ふふっ。」
本当に…あいつ…!
…あれ?体に…力が戻っていく…
…ありがとう…
私がここまでこれたのも…結衣、 …
舞…鈴さん…楓花さん…葉桜さん…
祐伸さん…みんな…
紫央「本当に、ありがとう…」
みんなの、おかげだから…!
ドスンッ!!
主人公「っ…!!」
結衣「は…っ!?」
鈴「成功…した!」
楓花「やった…のね!」
主人公「よっしゃぁっ!!」
紫央「はぁ…はぁ…終わった?」
…やったのね、私…
紫央「…やった…!」
紫央「お姉ちゃん…見ててくれたかな…」
…見てたよ!
紫央「…え?」
紫央、すっごくかっこよかった…!
紫央「お姉…ちゃん…?」
…ありがとう、紫央…。
紫央が妹で、本当によかった!
紫央「っ…!待って、お姉ちゃん!」
紫央「私も、お姉ちゃんがお姉ちゃんで…
本当に…本当に…!」
紫央「幸せだった!ありがとう…!!」
ーー
紫央「…みんな!」
主人公「紫央…っ!!!」
鈴「紫央ちゃん!おめでとう!」
楓花「すごいよ!紫央ちゃん!」
結衣「まさか、本当に祭を
完遂させられるなんて…!」
舞「頑張った甲斐があったね…!」
紫央「みんな…ありがとう…!」
主人公「紫央…お前…本当に…頑張ったよ!」
葉桜「俺からも、おめでとう…」
紫央「…はぁ、疲れた…」
紫央「もう、今日は暗いし
解散にしましょっか!」
舞「うん…!」
鈴「じゃあ、またね…」
主人公「改めて、おめでとう…」
紫央「…うん!」
そうして、祭りは終わり…俺は…
いよいよ、終わりの刻を迎えることになった…
ーー
葉桜「…これで、全部…終わりだな。」
主人公「あぁ…」
葉桜「…短い間だったけど、楽しかったよ。」
主人公「俺も…ありがとう…!」
葉桜「俺の…長きに渡った研修者人生の中で
お前が一番の最高傑作だ、本当に、
本当にありがとう…!」
主人公「…父…さん…!」
葉桜「俺も、思い残すことはない…」
ウィィィィィィン…
主人公「父さん、何を…」
葉桜「俺は、ここで機能を停止する、
長かったけど俺もここで終わりだ…」
主人公「父さん…!」
葉桜「俺は…お前たちと居れて…お前の…
父親になれて…本当に…」
葉桜「本当に…」
葉桜「よか…っ…」
プシュゥゥゥゥゥゥ
主人公「…父…さん…」
主人公「…」
葉桜「…」
主人公「安らかに、眠ってる…」
主人公「…大丈夫だ、またすぐに会えるさ。」
こうして、俺は…島の、一番高い
高台へと場を移す…。
…そう言えば、ここの桜は一年中
花びらが散らないんだっけ…
死に場所には、最適だな。
そうして、俺は事前に用意してあった
密封性の高いテントを展開して、
練炭を使い、自殺をすることにした…
主人公「…色々あったけど…」
主人公「俺はこの島に生まれて、
みんなと出会えた…。」
主人公「本当に、心から幸せだった…」
主人公「みんな…今まで…」
主人公「ありが…」
ちょっと待ったぁー!
バシャー!
主人公「…は?」
主人公「なん…で…」
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