第22話 おばけ

テレビが全盛期だった時代から続いている、

それこそ何百年も続いている、

おばけ番組というものが、今でもある。

番組という呼び方も古い、番組はいくつも淘汰されてきた。

ダウンロードチャンネルが普及するようになって、

見られたものじゃなくなった番組も出た。

でも、おばけ番組は確実にあるし、

信じられない記録を作り出してもいる。


おばけ番組は、過去の再放送じゃないかという声も出た。

それもそうだ、

司会者が変わらず、

何百年も続いているなんて、

司会者がサイボーグになったのならわかるが、

それだけで続くものではない。


それでも、電脳などで検証する暇人が出て、

おばけ番組は再放送でないことが証明された。

おばけ、あるいは妖怪というものに近いかもしれない。

伝説の番組。

視聴率というのは、

もう、時代が変わって、ばかばかしい数字の羅列だけれど、

視聴率がすごく取れるわけではない。

みんながすごく注目しているチャンネルではない。

お昼にだらっと見るチャンネルだ。


時代とともに出演者は変わる。

ゲストだって、その時代の人が出てくる。

でも、司会者は変わらない。

番組もおばけなら、司会者もおばけだ。

何百年も変わらず、

画面の向こうで笑っている。


テレビ局というものも、大きく変わったはず。

それでも消えることはなかった。

百物語や都市伝説が必要だった時代があったように、

おばけ番組は、

電脳で大体が終わってしまう世の中において、

それでも生きているもの、

それでも存在しているもの、

説明がつかないものを示している。


ギネスに載っているとか、どうとか。

サイボーグが出始めた時点で、

おばけのように生きつづける人間が出ることは予測できていたはずだった。

でも、おばけ番組が出ることは、誰にも予測できなかった。

何百年もお昼に同じ司会者が出るということ。

本当に生きているのだろうか。

サイボーグは、あるいは司会者のロボットは、

記録として残すべきなのだろうか。


変わらぬスタジオで、

いつもの収録。

変わるゲスト、変わる時代。

そして、変わるパンダ。

パンダは凶暴に、凶悪になっていく。

そのことを織り交ぜながら、

司会者は軽快に話す。


おばけ番組。

徹子の部屋、司会は黒柳徹子。

日本パンダ保護協会名誉会長。


彼女は今日も、

優しいパンダと人をつなげる橋渡しとして、

いつもと同じように軽快に話す。

サイボーグなのか、本当におばけなのか、

あるいは普通のタレントなのか。

あるいは、テレビという古い時代の遺物の思いが、

昇華させたチャンネルなのか。

それは誰にもわからない。


説明のつかないもの。

それがおばけ。

お昼のだらっとした時間に、

今日も徹子のトークが冴え渡る。

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