第23話 ウイルス

外科医と電脳技術者。

どちらの資格も取っていていないといけない職業。

それがいわゆる義体医師だ。

この時代においては、

金がある者は全身サイボーグも珍しくない。

そこに求められる技術を持った医者。

素材も技術も高度なものが当然要求されるが、

それだけに、報酬は高い。


義体はメンテナンスが面倒ではある。

義体医師に定期的にメンテナンスをしてもらわないと、

生活が維持できないほどだ。

それを補って余りある能力。

サイボーグは万能に近づいているかと思われた。


そこに登場するのが、

ウイルスだ。

パンダから人へと感染する、謎のウイルス。

数百年前まで、

ウイルスは生身のみに感染するものと思われていた。

それは違った。

この時代のウイルスは、

電脳もしくは、義体に感染する。


コンピューターウイルスを疑われたこともあったが、

パンダウイルスは、プログラムではないという結論が出た。

なら何なのか。

症状的には、

インフルエンザによく似た症状が出る。

基本的にサイボーグに。

これは、パンダインフルエンザP&A型と、呼ばれている。

パンダもかかり、サイボーグもかかる。

プロの義体医師がそろって、義体のメンテナンスをおこなっても、

インフルエンザが防げない。

病気なんて未来永劫かからないといわれていた、

サイボーグがかかっている。

パンダとサイボーグにどんな共通点があるのか。

この時代の義体医師ではわからない。


パンダインフルエンザは、

増殖する。

まるで生きているかのようでもあるし、

まるでプログラムのようでもある。

原始の生物によく似ていて、

電脳を介して広がる。

医師たちもプログラマーも、絶望した。

このままサイボーグから滅びてしまうのではないかと。


光明は意外なところから現れた。

それこそパンダだ。

白黒の敵が、三毛パンダを射殺した。

至近距離だったので、返り血をもろに浴びた。

彼は義体に三毛パンダの生暖かい血を浴びた。

そこに、変化。

なんと、義体不調のもとが消えたのである。

研究者が当然研究にかかった。

そして、結論付ける。

三毛パンダには、パンダインフルエンザのワクチンができている。


ラブパンダは神の救いだという。

白黒の敵は、これ幸いとワクチン狩りをする。

対立関係がかわることはないが、

こうして人類はパンダインフルエンザから救われることとなった。


なぜ義体にかかるのか、

なぜパンダからインフルエンザが始まったのか。

そして、なぜパンダがそれを終わりにしたのか。

プロの研究者でもわからない。


でも、ある義体医者が見つけた、

義体の信号に隠された、P&Aの信号。

これは人類がパンダ化している暗号なのではないか。

パンダワクチンによって、みんなパンダになってしまうのではないか。


警鐘を鳴らしたが、誰も聞くものはいなかった。

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