第20話 動物園

動物園。

昔あった、動物を見せる公園だ。

大半の大型動物は、

パンダの増殖で滅びた。

パンダを守ろうとした政策が裏目に出た。

政府は責任を取らなかった。

動物愛護団体は、もみ消された。

パンダ愛護団体ができて、

パンダのための地球を過激に歌っている。


動物園はなくなった。

牧場というものはかろうじてあって、

それでも野良三毛パンダの襲撃に、

戦々恐々としている状態だ。


肉や毛皮は高騰した。

パンダ毛皮をつけていると、

それだけでアンチパンダととられ、

政府側の人間にひどい目に合わされる。

パンダの毛皮は、白と黒と分けられ、

一目でパンダとわからないように売り出された。

市場には、白い毛皮と黒い毛皮が流通した。


パンダのため。

動物園はなくなり、

パンダのため、

生活は変わった。


かつてのパンダのメッカと呼ばれた、

動物園の廃墟が、取り壊されるらしい。

それを聞きつけた若い二人が、

昔ながらの移動手段、

電車を乗り継いでやってきた。

エコカーという手段もあったが、

昔のことを感じたかった、それだけだ。


動物園の廃墟。

よく残しておいたと思うほど、

ぼろぼろになっていて、当時の面影はない。

ここに何万人の人が訪れ、

パンダがやってきたときは大行列だったという。

何百年も前の話だ。

パンダのメッカ。

だからこの廃墟は、半ば遺跡として残っていた。

けれど、相次ぐアンチパンダの声に、

政府も残しておけなくなったのかもしれない。


立ち入り禁止のセンサーをかいくぐる。

二人は、廃墟を散策する。

当時、たくさんの動物がここにいた。

客を寄せるパンダと別にいた。

のんびり餌を食んでいたんだろうか。

そして、ものめずらしそうに見ている人間を、

観察していたんだろうか。


その当時のパンダはとてもおとなしかったと聞く。

二人はパンダ舎を見る。

当時のパンダの、ボードがはられている。

色あせてもパンダだ。

ここにたくさんの人が訪れた。

今は、廃墟散策の二人しかいない。

動物すらいない。

生きているものが失われたんじゃないかというような静寂。


昔の人は何を感じて、

何を求めて動物園があったのだろう。

何を求めてパンダを見ていたのだろう。

そしてパンダは、

並ぶ人間に何を見ていたのだろう。


二人は動物園の廃墟に立ち尽くす。

「案外さ」

片方が話し出す。

「何もなくなったこの世界に、進化したパンダが文明築くかも」

もう片方がうなずく。

人が滅びるのを考えるのは好きでないが、

案外パンダがうまくやるかもしれない。


パンダ文明。

それは白黒はっきりしているのかもしれない。

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