第6話 有馬 唯の独白(後輩視点)

私は最低だ.


中学時代,私は失恋した.

始まってすらいなかった.先輩が幼馴染で終わったよりも酷いかもしれない.

多分,私はモブC程度だった.

先輩は私のことを覚えていないだろうが,私は,先輩に実質的にフラれた.

中学時代のある日に先輩が教室で先輩の幼馴染の天宮先輩が好きだって,話しているところをたまたま聞いた.何処かで分かっていたが,実際に聞くと……0.1あった希望が消えた.この状況で何をしても,先輩に告白しても無駄な事など分かっていた.

私の好きな先輩は一途で,私が何をしたって無駄だということは明白だった.


だから,諦めるために,天宮先輩を真似して延ばしていた髪を切り,自分が好きな事にのめり込んで逃げた.


高校が同じだったときはびっくりした.

調べて違うところにすれば良かったと後悔していた.

もう,二人は付き合っていると思っていたが,付き合っていなくて少し安堵した自分が少し恥ずかしかった.


それから,先輩がフラれたのか教室から走り出している姿を見た.

それで思わず,私は追いかけた.失恋しているかもしれない今ならと思ったのかも知れない.本当に最低だ.


それで,先輩が歩道橋の上で遠くを眺めている姿を見つけた.

先輩が自殺しようとしているなんて思ってないことなんて知っていた.

先輩がそんな弱い人間じゃないことは知っていた.


でも,話しかけるキッカケが欲しかった.変な人でも何でも良いからモブから,物語のメインキャストになりたいと思ってしまった.だから,声をかけることにした.


そこから,私がするべきは,多分,もっと押すことだ,最低な私がするべきは,ここから押し切って先輩の好意を得ることだったかも知れない.いや,先輩がそのぐらいでなびくとは思わないけど.


でも,そもそも,そんなこと出来なかった.一歩目の勇気は出たが,二歩目を踏み出すことが出来なかった.それで,私は中途半端に良い人をしようとしてしまった.本気で実は,先輩が失恋してないかも知れないとか思ってしまった.私は,結局何がしたいのだろうか?ああああああ,はぁ.それで,恩返しって言って,先輩と長く話そうとしている,本当に何がしたいのだろうか?


天宮先輩が,性格悪ければ,あの人が性格が悪ければ私も,もっとヘイトを向けて,自由にいろんなことを出来たのかな?


ああああ,こう言う他人のせいにするのは良くないな.最低だ.

結局,先輩に幸せになって欲しいのか,自分が幸せになりたいのか,自分が傷つきたくないのか,何がしたんだよ,本当に,はぁあ,結局先輩の前で私は.天宮先輩の性格を意識した優しい人間を演じるのだろうな.はぁあああ.


ゲットした先輩の連絡先を眺めながら,部屋で一人でジタバタしていた.

泣いているのか,笑っているのか,自身に失望しているのか.それさえも分からなかった.


何してるんだろうか?本当に.部屋で一人呟いた.

本当に,ただの最低な人間だ.


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自殺を助けたと勘違いしている後輩に恩返しを要求されるけど、それはちょっと恩着せがましいのでは 岡 あこ @dennki

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