第3話 気を使われている感じがあるとなんか居心地が悪い

教室は,地獄だった.

むしろクラスメイトは優しいし,別にクラスでボッチというわけではない.

でも,今日は居心地が最悪だった.


普段は,休み時間,次の準備をして,バレないように適当にスマホを弄っているか.

もしくは,近くの席の人と談笑しているかの二択だが,今日は周りに人が集まってきていた.男女問わず僕の周りに人が集まり,恐らく壁の役割を果たしていた.幸運な事に,僕と幼馴染の席は距離があり,確かに,間に壁があれば幼馴染と接触することはないと思う.

でも,痛いよ.その優しさ.その優しさが,幼馴染が昨日了承したことに説得力を追加しているのだ.僕は失恋したことが確定に近づいた.


昼休みでもその気づかいは続いていた.

「あのさ,良いよ.そう言うの.ありがとうですけどね.」


「「…………なナンノコト.」」

周りのクラスメイトの動揺が凄かった.良いクラスだと思うけど,そう言うのは良いよ.逆にダメージ増えるのよ.


「嘘向いてないと思うよ.ありがとう,まあ普通に教室の外行くから,気にしないでください.」

流石に教室にはいるのがつらいので,弁当を持って部屋を出ることにした.


「あの……」

教室を出るときに,幼馴染の声が聞こえた気がして,一瞬立ち止まり振り返ったが,教室には,幼馴染の姿は無かった.ああ,本当にはぁあ,ついに幻聴か.

自分が想像以上にダメージを追っていることに気が付きながら,教室を後にした.


と言っても,思い付きで教室を出たので,行き先など全く決まっておらず.

昼休みに徘徊することが確定した.いや,徘徊はまずいから,とりあえず屋上で食べるか.あれ?屋上って入れるっけ.まあとりあえず向かってみることにした.


屋上に向かうための階段を真下を,自分の足を見ながら,登っていると声が聞こえた.


「ダメですよ.早まらないでください.」

顔を上げると人が立っていた,屋上に向かう途中に人がいた.お人よしなのか.責任感が強いのか.思い込みが激しいのか.暇なのか.友達がいないのか.まあ,何なのかは分からないが,ハーブティー後輩は,仁王立ちで屋上への道を遮っていた.


「……いや,違うんですけど.」

まあ,屋上に向かっているので強くは否定できなかったが,違うのだ.そういうつもりじゃない.


「違わないですよ.私はですよ.念のために一応,ここで先輩が来ないか見張ってたんです.来ないことを信じてですよ.でも,どうですか?先輩は」

後輩は,こちらを少し上の段から見下ろしながら早口でまくし立てるようにそう言っていた.


「……いや,ただの散歩です.」


「そんな嘘は通じませんよ.先輩.ただの散歩で屋上目指されてたまるものですか.」

後輩は,地団駄を軽く踏んでいた.どうやら,いや,分かっていたけど.この後輩は,かなり親切で,かなり愉快な人らしい.


「いや,まあ屋上は目指してたけど.ただ一人に成りたかっただけで.」


「あっ,いや.そう言うのは大丈夫です.先輩は,恩をどれだけ増やすつもりなんですか?」

ああ……全然信じてない感じですか?なるほど,そう言う感じですか.理解しました.いや,本当に恩を増やすつもりとかないんだけどな.


「いや,特にそんなつもりは.」


「まあ,良いです.とりあえず,教室に,ああ,でも戻りずらいかもですね.じゃあ,部室に行きましょう.先輩.」


「部室?」

こう言う気遣いが出来るのに……いや気が回りすぎて勘違いしてるのかも知れない.


「ええ,部室です.」


「それは,分かってる.耳が僕にもついてるから.」


「感じ悪い言い方ですね,先輩.私の部活の部室です.」


「帰宅部とかですか?」

運動部には見えない.


「帰宅部の部室は家なので違います.普通に私は,天文部ですよ.まあ,人が少ないので同好会ですかね.でも,私,部長ですよ.」


「……ボッチ.」

思わず,言葉が漏れていた.


「はぁあ,違いますよ.まあ,同好会はボッチですけど.友達はいますからね」

地団駄を踏んでいた.


「それで,その部室は何処に?」


「興味なしですか,先輩.ああ,場所は,屋上です.」


「………まあ,いろいろ話しましたけど.迷惑をかけるわけにはいかないので,遠慮しておきますよ.」

まあ,そもそも部室があって人がいる屋上って言うのが目的地としては不適当だったのだ.何処か一人になれる場所を探そう.それに今ついていったら,恩が本当にあるみたいになってしまうし.


「遠慮してることを遠慮してください。先輩.」


「はい?」


「恩返し,恩返しとして部室を使ってください.使わないと怒りますよ.先輩.ハーブティーも出しますよ.先輩が失恋して昼休み徘徊してるって噂が流れたら,なんかこっちまで胸が痛くなります.」

後輩は,必死にそう言っていた.本当に,変な人だが良い人なのだと思った.流石に,はぁあ,まあこれで恩返しとかいう意味不明なことがなくなるなら仕方ない.


「……ハーブティーを飲みに行くなら.」


「では,行きましょう.先輩.」

とりあえず,今日の昼休みは,ついていく事にした.


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