第98話 大馬主海崎氏
まだくすぶっている火事現場を無言で見つめるムネさんの隣にいた原沢は、一目散に僕に駆け寄り、怖い目で何も言わずに空さんとは逆隣について肩を貸す。
「
「はい、3歳のころから中3まで。その後も大学まで定期的に道場に通っていました」
「どれもいい技だった。精進しろ」
「身体が作れなかったこともあって遠のいていましたが、これからはもっと練習するようにします」
守りたい人を守れるように。
「いい心がけだ」
「さっき
「最悪の事態は免れたものの、これだけの騒ぎになったんだ。隠し通すわけにもいくまい。証拠も出そろったし問題もなかろう」
「ああ……」
ムネさんは気が重そうだった。
それと同時に暗がりから人影が現れる。初めて見る顔だ。
「どうだムネ、うまくいったか…… まあ、小屋が燃えたようだな……」
「海崎さん!」
びっくり仰天と言った体のムネさん。
「まあちょいと色々あってよ。直接顔を出させてもらった。しかしここの飼料が燃えて無くならなくて良かったな」
「ええ、全くです。ありがとうございました」
「なあにいいってことよ。前に色々世話になったしな。これで貸し借りなしだ」
僕を含め大多数がぽかんとして見つめていると小坂部さんがそっと僕に耳打ちをする。
「海崎さん。
「おいムネ。こいつらに説明しねえといけねえんじゃねえか? どいつもこいつもハトが豆鉄砲食らった
【次回】
第99話 真相
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