第95話 老闘士
狂気と言ってもいい表情を浮かべている川東に対し僕は空さんの上に覆い被さって
だが僕たちと川東の間にゆっくりと歩いて立ちはだかった一つの影があった。暗がりでよくわからないが年老いて小柄なそれは
「止まりなさい、若いの」
「どけやじじい」
川東がすごんでも相変わらず人好きのする笑顔を崩さぬ
「ふ、どかぬと言えばどうする」
心配顔の
「じゃ死ねやあっ! この老いぼれがあっ!」
川東が特殊警棒を振りかぶろうとすると、
「琉球空手上地流。けちなごろつきごときが、いくらいきがったところで手も足も出ぬよ」
「またやってしまったか…… 許せ……」
僕は唖然とした。ここにはいったい何人の優れた格闘家がいるというのか。
僕は立ち上がろうとする。
「だめ、まだ寝ていなくちゃだめよ」
「いえ、もう大丈夫です。来ます……」
よろよろと立ち上がった僕を空さんがしっかりと支える。僕も腕を空さんの肩に回し体重を預ける。
川東はもうすぐ立ち上がるだろう。そしてあの物騒な警棒を振り回してなめられたくない存在、つまり僕や空さんに殴りかかってくる。
「空さん、どいていて下さい」
おずおずと空さんが僕から離れる。案の定川東が起き上がった。僕が川東に向かって歩いていくと比嘉さんはすっと後ろに下がる。
「なめんじゃねえぞこんガキゃぁッ!」
川東はさっき比嘉さんから痛打を受けたとは思えない戦意で僕に特殊警棒を大きく振りかぶる。隙しかないその体勢にまずは
「てめえ、なめたマネしやがってクソがぁ」
「
【次回】
第96話
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