第77話 身体を投げ出す裕樹
「そう、あなたが私の自殺を手伝ってくれるのね」
空さんのこんな冷たい声は初めて聞いた。この声は
「このままだったら、ひろ君の言う通り私悪化して凍えて死ぬ…… もっとも願ったり叶ったりなんだけど……」
「なんだって? どういうことだ空」
「やめて下さい! もう死ぬなんて言わないでください!」
「
濡れ縁から意外な声が聞こえ僕たち三人はそちらを見て硬直した。それは派手なポンチョを被った
「……」
「つまらぬプライドで空を死に至らしめるか」
「なに……」
「まあ、それもよし。もちろん責任はきちんととれよ」
その言葉は僕にも空さんにも突き刺さる。思わず顔を伏せる僕たち。
「ここは
「なにい……」
その時突然激しい風が
「なんだこれは」
「なに?」
「分かりません」
「気をつけろ、来るぞ」
「ひろ君!」
「大丈夫! 大丈夫ですから!」
どおおおおんっと、さっきよりさらに重たい音が響き渡ると、一瞬で材木が折れ、枠組みが外れ、破れ、割れながら落下する音が一斉に聞こえる。
その時
「ひろ君っ、ひろ君!」
ひどく動揺した表情の空さん。僕の上に降り注いだ材木を取り除こうと手を差し伸べる。
「やめてください空さん。崩れて共倒れになります。僕が今ここでこうしている意味がなくなっちゃうじゃないですか……」
無理して笑顔を浮かべる僕の後頭部に生暖かいものを感じる。それは僕の顎まで流れてきて空さんの顔に
【次回】
第78話 空の約束
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます