第76話 大城の我執
「こっちです。こっちに空さんがいます」
派手なオレンジ色をしたツエルトの脇に立って
「空はこの中か」
不機嫌そうな顔で、命令口調だ。
「はい、復温措置をして安静にしています」
「そうか」
「
「ちょっ、
「空! 空大丈夫か!」
「……え、ええ、まあ」
ツエルトの向こうから聞こえる空さんの声は弱々しい。
「具合悪いところは無いか?」
「大丈夫。ひろ君のおかげでだいぶ温かくなってきた、から……」
「よし! 今からシェアトに帰ろう! 行くぞ」
僕は驚いて思わず大声を出した。
「無理です! 空さんはまだ充分に体温が戻ってきていません!」
「やめてっ」
「何やってるんですか
空さんの姿を見た
「
「はい」
「全部か」
こんな時にこの人は何を言っているんだ。僕は怒りと呆れの眼で
「そうです。非常事態、緊急避難措置ですから。空さんの了承も得てます」
「貴様っ」
「何をするつもりですか!」
「このままシェアトに帰る」
「無理です! ようやく復温措置がされたばかりなのにこれじゃ元の
「俺のライナーに空を乗せれば数十分もあれば付く。それからその復温措置とやらをすればいいだろう」
「それじゃ手遅れだ!」
「経験者だか何だか知らないが俺に命令するな。空のことは俺に任せろ。口出しは一切するな。いいな」
僕は歯噛みをした。
だがその時。
「私をこれからどうするの……」
寝袋に入っていた時よりも青ざめた顔で身体をも顔も唇も振るわせ歯の根が合わない空さんが
「今からお前をライナーに乗せる。そうすればシェアトまでもうすぐだ。心配はいらない」
すると空さんは僕らがぎょっとする行動に出る。抱き上げられたまま
【次回】
第77話 身体を投げ出す裕樹
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