第66話 たとえ裏切られたとしても
空さんがいつか描いてみたいと言っていた南の竹林は竹がたわむほどの暴風雨にさらされるばかりで誰もいなかった。僕はメイから降りて辺りを捜索するがなにも見当たらない。ここは外れだ。
「メイ、あとちょっとだけ力を貸してくれ」
僕が声をかけ
僕はメイに
僕は泉の件で空さんに酷く裏切られた気がしていた。あそこでの思い出は僕にとって特別なものだったし、空さんにとっても特別なものだったと思っていた。それを、
どうやらもう僕は本格的に要らない人間にされちゃったみたいだな。そう思うと僕は自分を
でも。と僕は思い直す。そんな時の気づかわしげな眼は嘘じゃない。本当に僕の苦しみを案じているものだ。
一体空さんは僕から離れたいのかそばにいたいのか。全くわからなくなってきた。
そして僕も、どうしてこんなにも空さんのことが気になって仕方がないのだろう。目が合えばそばにいたい、そばにいたらそれがいつまでも続くようにしたい、つかず離れずそばにいてその一挙手一投足をその眼に収めたい、僕にしてあげられることがあれば何でもしてあげたい。シエロに乗る空さんと走りたい、スケッチする姿をいつまでも眺めてその横顔を目に焼き付けたい。
なんだ、これじゃまるで恋してるみたいじゃないか。僕は苦々しく思った。恋? 僕みたいなやつが? 僕には恋をする資格なんてない。ある訳がない。
それに。
再び声を出して自分を
あんな裏切りに遭ったのに。
だけど例え裏切られたんだとしても僕は空さんを救いたい。いや、必ず救う。僕は嘘にまみれた罪深い男なのかも知れないけれど、この思いだけは嘘じゃない。
【次回】
第67話 シエロ発見、そして空は……
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