第31話 湧き上がる微かな妬心
翌日の午後、ちょうど空さんが練習場へ行くのに僕も同行した。空さんはちょっと元気がなさそうにも見えた。それでもシエロの話を振るとかすかな笑みを浮かべ少しうれしそうに話をする。こうして声にも表情にもほんの少しとは言え明るさが戻って来たのは良いことだと思い、僕も気持ちが安らいだ。その時はそれ以外の理由でも気持ちが安らいでいたことに僕は気付いてなかった。
練習の途中、少し離れたところで空さんと
「午後の練習も任せてもらって助かったよ」
僕は昨日空さんから聞いた「間違い」の一言が引っ掛かっていて、少し嫌な顔をしていたかも知れない。それでもそつのない返事はできたと思う。
「ええ、まあ……」
「空は筋がいい。教え甲斐がある」
「空」? 僕は耳を疑った。たった四日で少し馴れ馴れし過ぎるのではないか。自信に満ちたその態度に突然僕の中で黒雲のようなもやもやが立ち上った。
「午後の練習も俺がみることで空の上達速度はもっと上がるぞ。楽しみにしていてくれ」
自信満々の陽に焼けた笑顔を見せる大城さん。僕に向けるその表情は勝利を確信しているものの顔だった。
「……はい」
「それに、俺としても嬉しいしな。こうしてあいつといる時間が少しでも増えるんだから」
今度はあいつか。そういう性格の人なんだから気にしないようにしようと頭で考えても胸のもやもやはどうやっても消え去らない。それに「空さんといる時間が増えて嬉しい」というのもなんだか気になる。
「あいつが上達したら三人で遠出してもいいな。いや、原沢も連れていくか。その時はよろしくな、
「
「ええそうですね」
陽に焼けて
【次回】
第32話 心中を見透かされからかわれる裕樹
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