第13話 強制入院
原沢が用意した車の後部座席に空さんを乗せ僕がその隣に座る。原沢が車を運転している間にムネさんと西巻クリニックに連絡をした。クリニックではすぐに受け入れ態勢を整えるという。
これは全くもって本当のことではないが、空さんにはこのような行為は決してうまくいかないものなのだ、とはっきり釘をさしておく必要があった。
「不思議なもので、人間死にたいと思うとかえって死ねないものなんですよ。人間は本来生きるために生まれてきたものなんですから。それは人の義務の様なものです」
もちろん空さんはそれに対して何か答えることはなかった。光を失った
西巻クリニックではすぐに西巻先生が空さんを診てくれることになった。短い待ち時間の間、相変わらず青ざめた幽霊の様に黙ってベンチに腰掛けているので原沢は気味悪がっている。空さんの次に僕が先生に呼ばれる。気が重いながらも僕は診察室に入った。
「あの状態、詳しい
「はい、相当悪い状態です。この間の診察時より悪い」
「うん。言ったよね。入院って」
「はい」
「では入院させます。どのような治療をするかは向こうの判断で」
「はい」
「それと、警察」
「警察には反対です」
「どうして?」
「こうして逃げてきたのには何がしかの理由があると思うので」
「……ふむ、殺人を犯して、その罪を背負い償うために自殺しようとここまで逃げてきたとか」
「あの人は人殺しなんかしないっ! 眼を見れば判る! 先生だってそれくらい判るでしょう!」
「いや、医学は科学なんでね。眼つきや顔つきだけで人格を決めつけるのは占いの
「どうして」
「職業上の勘って奴」
「勘は科学なんですか?」
「科学ではないけど同じくらい重要なものだ」
「はあ」
「ただ僕は
「買う? 僕を、ですか?」
「そう。
「いえ、僕はただもう……」
「『二度とあのようなことがないように』だろ?」
「………………」
「うん、僕はその熱意に賭けたいと思う。君は彼女に死んで欲しくないんだろう」
「もちろんです!」
「じゃあ決まりだ。
彼女の持つ闇。そう聞いて僕はぞっとした。そうだ、あの眼は闇を
「はい」
西巻先生はふと微笑んだ。
「まあその決意に満ちた目を見れば
「はいっ」
僕は勢いよく答えた。
結局空さんは手首の治療もできる附属病院へ入院となった。入院期間は一ヶ月。身元保証人は僕。
⚠️
拙作は自死自傷を推奨・
自死自傷の念に苛まれたり生き辛さを感じた時はためらうことなく精神神経科・心療内科を受診なさるかカウンセラーにかかるなど、速やかにご自身の心を守る行動を取って下さい。また、下記の団体などでもこうした悩みや苦しみを持つ方のご相談を受け付けております。苦悩は一人で抱え込まず誰かに吐き出すだけでも解決の糸口になり得ます。小さなことでも人に頼ることをどうか恐れないで下さい。
●厚生労働省「まもろうよこころ」
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
●電話の相談窓口
・「こころの健康相談統一ダイヤル」
(18:30~22:30[22:00まで受付])
0570-064-556
・「#いのちSOS」
(日月火金土00:00~24:00、水木6:00~24:00
※木6:00~火24:00までは連続対応)
0120-061-338
・「全国いのちの電話連盟ナビダイヤル」
(10:00~22:00)
0570-783-556
・「全国いのちの電話連盟フリーダイヤル」
(16:00~21:00/毎月10日08:00~翌08:00)
0120-783-556
・「よりそいホットライン」
(24h)
0120-783-556
岩手県・宮城県・福島県からかける場合
0120-279-226
●LINE
・「こころのほっとチャット」友だち追加(Facebookでも受け付け)
・「生きづらびっと」友だち追加
●インターネット
・「いのちの電話連盟インターネット相談」
https://netsoudan.inochinodenwa.org/
●18歳以下
・「チャイルドライン」0120-99-7777
【次回】
第14話 予想外な突然の退院
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