第2話 三段式空母はやはりダメだったか。
赤城と加賀の彩色絵を眺める石原莞爾と東條英機。
陸軍側では熱心にディベート(対海軍向けの議論)が行われており、元々は嫌いあっていた2人だが、今ではお互いの力量を認めあっており、息もぴったりと
会っていた。
石原が発言する。
『これが赤城と加賀ですか。
大型だと着艦もやり易いでしょうな。』
『試作空母の鳳翔は艦橋が無く煙突も配慮されていましたが、なんせ基準排水量が7470t。
全長は168.25mですからな。』
と東條英機が発言する。
メモ魔なだけに、妙に数字に詳しい。
イギリスの全部の戦艦のスペックを丸暗記しているのではと噂されている。
『赤城は基準排水量は36000tを超えるのですかな?』
『加賀は38000tを超えるのですっけ?』
『全長は260mと250mになりそうと聞いていますが、格納庫には多くの航空機を搭載できるのでしょうなぁ。
陸軍としても大型空母の建造は歓迎致しますよ。
制空園を確保して艦隊や輸送艦を守ってくれる空母の存在は心強いですからな。』
なんか歓迎すると言いながらも、
言葉にトゲを感じるのは私だけであろうか?
それにしても、メモ魔の東條ならともかく、石原ですら、海軍の赤城や加賀の基準排水量や全長を記憶しているとはやり難い。
海軍の将官の背中は冷や汗で濡れていた。
『ところで、赤城と加賀のこの艦首の大砲はなんなのですかな?
ガソリンや爆弾や魚雷や可燃物の搭載機を満載している虎の子の正規空母で、突撃しながら大砲を撃つつもりでも、あるのですかな?』
東条も『20cm砲をこんなに搭載するとは重巡以上ですなぁ。だが格納庫が圧迫されてしまいますなぁ。
せっかくの正規空母がもったいない。』
と合いの手を入れる。
やはり赤城と加賀の問題点を突いてきたか、、、と我々は思った。
海軍側でも陸軍に欠陥を追求されぬように議論に議論を重ねてきたのだが、
高角砲の豆大砲で撃っても巡洋艦は
痛くも痒くもないだろう。
自衛のための砲塔は必要だと言う
大砲屋達の声を無視する事はできなかった。
今ここにいる海軍関係者が赤城と加賀の20cm砲塔搭載反対派ばかりというのがあまりにも皮肉過ぎる。
いや、理不尽と言うべきか。
航空派の山本さんの頬が痙攣している。
発艦させやすいように一段式空母にして飛行甲板の全長はなるべく長くすべきと熱心に言い続けてきた山本さんが
ネチネチと責められるのはあまりにも皮肉だ。
『航空母艦なのですから、何よりも航空機の着艦と発艦がやり易い空母として完成させるべきでは?
せっかくの大型空母の1番上の甲板が
短いのでは発艦がし難いでしょう。』
と東条。
『海軍の中でもそう言い続けて説得し続けてきた山本さんに言う必要はありませんがな。』
と石原。
コイツらの耳はどこまで入り込んで来ているのか!
海軍省内部の情報がダダ漏れではないか!
まるで長距離走を走った後のように
海軍側は疲労困憊だった。
あの後、加賀の煙突の配置には問題があるのでは?と言われ、これでは居住している海軍の人間は熱くて眠れないのでは?と言われ、一方的に押され続けて会議は終わったのだった。
黄金仮面と言われる宇垣さんの顔も油汗に塗れている。
これから大忙しで設計を変更して
赤城と加賀の改装をしなければならないのだから当然だ。
邪魔な20cm砲塔は配置されず、
三段式では無く、一段式の普通の空母として完成する事になりそうな赤城と加賀。
建造されるのはこれからなので予算は浪費はされてはいないが、頭が痛い。
山本さんは密かに改装案を計画しているという情報もある。
山本案が良ければ建造計画が遅れないで
済むかもしれないのだが、、、
『まさか陸軍から空母を増やすべきと
言われるとはな、、、』
前には長門級の三番艦の建造に賛成すると言った陸軍。
副砲は全廃し高角砲を増やし、機銃も
舷側に並べるべきとも言われたが、
軍縮条約で認められなかったのは
本当に残念だ。
今の海軍の規模はイタリア海軍と同じくらい。
世界で第三位の大海軍国になるのが
海軍の夢だったのだが、、、
あの日清戦争の賠償金を
海軍予算に注ぎ込めていれば、、、
と思わずにはいられない。
その後の事だが、
一段式空母設計案を提出した海軍側だが、陸軍側から一蹴された。
格納庫面積を増やすために艦首まで格納庫を伸ばすべきだと言われたのだ。
確かにそうすれば戦闘機なら8機くらい
搭載機を増やす事ができそうだ。
一理ある。
だが、そうしたのも艦首側の重量を軽減し艦首の沈み込みを減らしたいと
思っての設計なのだが。
陸軍案が通りそうだ。
これから帰って説明せねばなるまい。
戦艦屋からは条約に縛られない戦艦の建造を望む声が高い。
陸軍からは航空戦力を増やし、航空機を、増やすべきだと言われている。もちろんパイロットの育成も増やす事に
なり、陸軍はパイロットの育成人数を
すでに増やしているらしいが。
東條さんのお父さんは海軍とのディベートで大活躍して大将に昇進していたりします。(史実では中将)
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