ゴミ捨て場の料理人
水町 啾魅
第1話「新しい仕事」
今日、私のリストラが知らされた。いきなりのことで、私はパニックになり、いろんな人に相談し、やっと状況を把握することができた。
ただ、どうしても、私がリストラされた理由が理解できなかった。私は、絶対に残る側だ。会社が人員削減の方針に向かった時も、私はそう思っていた。みんな、慰めてくれたが、慰められたところで、何も変わらない。私は、雇用保険に入っているため、しばらくは何とかなるが、この先のことが心配だ。
私の頭の中は、そんな気持ちで溢れていた。そして私は、自分の住んでいるアパートに帰り、硬いベッドに横たわり、スマホで何となく求人サイトを眺めていた。近くにいい職場はないだろうか・・・。私は、給料の高い順に仕事を並べ替え、上から下へとスクロールしていった。
すると、その中に、気になるものがあった。「エコエコ食堂」だ。この食堂は、食品ロス軽減と、生活保護受給者への支援を両立させているらしい。具体的には、余っていて、通常なら捨てるはずの食品を、「エコエコ食堂」が引き取り、”寄付金”をもとに、それらの食材を調理し、生活保護受給者に無償で提供するといった感じだ。
これなら、食品ロスも減り、生活保護受給者の生活も楽になる。とてもいい仕事だ。しかも、良く調べてみると、これは国が支援している活動で、給料もまあまあ高い。あと、この食堂は、何と家から徒歩8分のところにあった。
これらの条件に、不満はなかった。
”初心者大歓迎”
「エコエコ食堂」の紹介ページに書いてあったその言葉が、私の背中を押した。自慢じゃないが、私は料理がとても得意だ。家では両親が仕事で忙しかったため、毎日私がご飯を作っていた。また、私はレストランに勤めていたこともあった。私はこの仕事に向いている、そう確信したのは、その時だった。
私は次の日の朝、午前10時に起きて、少しこの食堂について調べた後、一時的にだが、ここでバイトすることを決めた。そして、そこの面接を申し込み、2日後、面接に行くことになった。電話に出てくれた人は、優しそうなおばさんで、話していると、なんだか心が和んだ。そのおばさんによると、ここの面接は、そこまで大したものではなく、バイトであれば大体の人は入れるそうだ。それを聞き、私は安心した。
もしかしたらこの食堂は、生活保護受給者はもちろん、私のような人を支援する為に作られたのかもしれない。
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