Ⅲ 一問目の答え
「まあ、これは有名ですからノーヒントでいきたいと思います。それではお書きください」
画面がスタジオに戻り、マッチョな司会者が解答者に答えを書くよう促す。
それに三人は電子ペンを台上に走らすと、各々、大国主のような恰好の〝ふひとくん人形〟を自身の前に置いてベットした。
「全員書き上がったようですね……では、まこも君からいってみましょう。聞こえたのはお経ですか?」
最初に司会者の当てたのは、冒頭でも発言をしていた白い束帯姿の
彼の電子フリップには「お経」とデカデカと書かれていた。
「はい。こうした怪談の定番といえば、やっぱりお経ですからね。真っ暗な中でお経が聞こえてきたら怖いんじゃないかと」
「なるほど……では、次に黒羊さん、いってみましょう」
野々宮の説明を聞いた司会者は淡々とそれを受け流し、拷問器具〝
「ええ。あたくし思いますに鈴の音に合わせるとしたら太鼓なんじゃないかと思いますの。笛と太鼓ならもっとピッタリなんじゃないかと思いますけどね」
振られたタマネギヘアーの女性──
彼女の電子フリップにはその言葉通り「太鼓」と達筆で書かれている。
「そうですか……同じく太鼓と書かれた方がいます。墓田さんもやはり太鼓?」
最後に司会者が話を聞いたのはやはり「太鼓」とフリップに書いたグレイのスーツのお笑い芸人、
「いやあ、鈴ともう一つですから最初、ジングルベルかと思ったんですがねえ……誰が赤鼻のトナカイやねん? 開店ガシャガシャ、ワオ!」
司会者の質問に、墓田はお笑い芸人らしくボケてギャグを披露するが、そのあまりのくだらなさにスタジオはシーン…と静まり返り、なんとも居た堪れない空気感だ。
「では、正解はなんなのかご覧いただきましょう」
「……あれ? 何か遠くで聞こえていますねえ……」
司会者も墓田を完全にスルーし、カメラ目線でそう合図を送ると、再び画面は線路上へと戻り、竹内が手を当てて闇の中で耳をすます……と、徐々にシャンシャンと鳴る鈴の音に混じって、トントン…トントン…と何かを叩く小気味よい音もどこからか微かに聞こえてきた。
「もうおわかりですね? 正解は太鼓でしたあ」
正解を発表する竹内に続き、チャチャチャーン…と効果音が流れ、またも画面は明るいスタジオへと戻った。
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